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医療法人制度改革


持分あり医療法人の「非営利化」に関心



「出資額限度」法制化の議論も”復活”

2006年の医療法人制度改革をめぐる論点に、医療法人社団の扱いが浮上している。厚生労働省は出資持分もない「認定医療法人」の創設するのに合わせ、従来の持分ありの医療法人社団にも剰余金の使途の明確化や同族経営の排除など「非営利」を徹底してもらう考えだが、実効性の面で関係者から厳しい視線が注がれている。いったんは見送られたかに見えた出資額限度法人の法制化に向けた議論も復活するなど、なお曲折がありそうだ。

「規制改革・民間開放推進会議の言い分は言いがかり。 配当しないということが非営利の定義。こういったもの(剰余金の使途)を決めるのはどうか」
(三上裕司委員・日本医師会常任理事)
 厚労省は8日の(医業経営の非営利性等に関する検討会」で、医療法人の利益に当たる剰余金の使途を医療法に書き込む提案をした。医療法人は非営利を掲げているにもかかわらず、実際には利益を社員の退社に伴う払い戻しや医療に直接関係のなMS法人の運営費などに充てているのではないか、とする形骸化の指摘が政府の規制改革・民間開放推進会議などで起こっているためだ。
 医療法は、医療法人に対して剰余金の配当を禁じている。あくまで剰余金の使途として@医療の質の向上に向けた資源の充実A安全的な財政基盤の確保B医療法人の経営の確立ーの3点を新たに医療法に書き込むことを提案した。併せて役員や社員に対する高額な報酬や、医療法人の運営とは無縁な費用の支出などには望ましくないとの考えを盛り込む方針も示した。
厚労省は医療法に明記する使途はあくまで外部からの批判を踏まえた理念にとどまり、決して箸の上げ下ろしまで指導するものではないと説明したが、三上委員はのっけから反発。品川芳宣委員(筑波大大学院教授)も「剰余金の使途を抽象的に書くのはいいが、退社時の社員の分配をどうするのか明確にしておかないと解決できない」といったん問題を整理するよう求めた。
同日の検討会では、国内の医療法人の約80%を占める1人医師医療法人の扱いに関心が注がれた。実際のところ1人医師法人による同族経営の排除は物理的に困難で、山崎学委員(日本精神科病院協会副会長)は「1人医師法人や他の医療法人をすべてひとくくりにするのは可能なのか」と疑問を投げかけ、田中滋座長(慶応大大学院教授)が「1人医師法人の存在を議論しないといけない」と引き取った。
 ただ、決して厚労省案に否定的な意見ばかりではない。山崎委員は医療法に剰余金の使途を明記する方針については「あまりグレーゾーンを残しておいてはいけない」と賛同する意向を示している。西沢寛俊委員(全日本病院協会会長)は「厚労省案と)現実とのギャップは大きいが、否定するだけでなく落としどころをみつけないといけない」と時代の流れを踏まえた対応を求めている

 1人医療法人の扱いは

 医療法人制度改革で厚労省が当初書いていたのは、既存の医療法人を大きく認定医療法人と、従来の持分のある医療法人の2つの整理する青写真だ。認定医療法人には出資持分の放棄をはじめ役員に対する報酬支給基準の開示など厳しい要件を課す見返りに、公募債の発行や税制上の優遇のメリットを設ける。認定医療法人に移行しない通常の医療法人社団にも非営利性を確保するための規制を設ける。公益性、非営利性を兼ね備えた認定医療法人の趣旨については大きな異論がない一方で、このところ論点になりつつあるのが通常の医療法人に対する規制。認定医療法人に準じ、残余財産の帰属先を他の医療法人や国、地方公共団体に限定させるほか、全理事に占める同族関係者を3分の1以内にとどめるなど同族支配の排除を促すことも検討している。


 「出資額」法制化は可能?
 また、この日の会合では厚労省から「出資額限度法人」の法制化に向けた提案もされた。出資限度法人は、社員が任意退社するのに伴って請求できる払い戻しや、医療法人解散時に社員が残余財産の分配を求めることができる金額をいずれも出資額内に限定する仕組み。昨年、通常の医療法人からの移行に伴う課税関係が明確になり、通知レベルで制度化された。
 制度化によって移行に伴う法人税や所得税、贈与税などの課税は、医療法人や出資者のいずれにも生じず、退社した社員にも原則として生じない。その代わり、出資者の退社などに伴って財損出資者の持分が増額することで発生する「みなし贈与」の課税については、全出資額に占める同族関係者らお出資額の割合が50%以下など4つの条件を満たす場合に非課税とすることになった。
 特定医療法人などと違い、持分のある社団医療法人であることに変わりなく後戻りも出来るなどあいまいさが指摘されていたが、厚労省は課税関係が複雑になるため出資持分を超える部分を医療法人に移転する法制化を渋っていた。しかし医療協が実施したアンケートでは出資持分の放棄に加え、出資額限度法人への移行も同族出資の50%規制が満たせず困難とする医療法人が目立ったため、検討に乗り出さざるを得なくなった格好だ。
 ただ、法制化した場合の課税関係について厚労省が示した資料では、現行制度にない医療法人や社員に対する法人税や所得税が生じる可能性があることが示された。特定医療法人のように、税務当局との交渉で非課税とする覚書がとれるかが焦点となりそうだが、ある税務専門化は「法制化するとかえって混乱することにもなりかねない」と懸念する。このため、厚労省は法制化に向けた議論を促しておいて「結局は不可能」という形に収束させたいのではないかとの憶測もでている。

 議論活発化を歓迎
  
 いずれにせよ、厚労省は議論の活発化は歓迎している。認定医療法人や出資額限度法人の移行を促す最大のカギとなる税制面で国税庁側に提案をもちかけようにも、まずは医療界サイドで一定のコンセンサスが得られていなければ足下を見られて突き返されるだけだ。「われわれが示しているのは机上で組み立てた極端な例。これからさまざまな意見を踏まえて具体化する」(医政局指導課)と議論の成熟を待つ考えだ。


認定医療法人(持分なし)【公益性+非営利性
・残余財産の帰属先は他の認定医療法人か国、地方自治体
・役員に対する報酬などの支給基準を開示
・医療計画上・自治体病院などの公的機関と同列扱い
・医療計画上.自治体病院などの公的機関と同列扱い
・事業計画や事業報告を住民に公開
・理事長要件のさらなる緩和
・地域住民や有識者を交えた評議員会の設置
・自己資本比率の緩和
・公募債の発行(外部監査が必要)
・税制上の優遇措置
・地域の住民や企業からの寄付受入れに伴う税制上の措置
・特別養護老人ホームなどの運営解除
医療法人(持分あり)【非営利性】
・財世財産は医療法人か国、地方自治体に帰属
・剰余金の使途を医療法に明記
・株式会社などから資金援助を受けた場合は名称などを開示
・社員の役員に対する代表訴訟制度の制度化
・理事に占める同族関係者の割合は3分の1以下
・財務状況は医療法人フループ全体で開示
・格付け情報などの広告を解禁