本文へジャンプ
消費税10%時代に備えて

          病医院の「損税対策」を考える!第2回


 現行での緩和方法は「簡易課税制度」のみ

                                抜本的な解決には法改正が必要!

東日本税理士法人・田村信勝
クリニックマガジン 2005年9月号

前回は、消費税の損税問題について消費税の基本的な仕組みを中心に解説した。今回は具体的に、消費税の損税を解決する方法について検討してみる。

(田村)


簡易課税制度を選択すれば納税額が少なくて済むが適用範囲は狭い

 根本的な解決には至らないが、損税を緩和する方法がある。それは簡易課税制度の選択である。消費税の計算方法には大きく分けて2つの方法がある。ひとつは「原則的な計算方法」であり、もうひとつは「簡易課税制度」と呼ばれる方法である。
 原則的な計算方法は、前回述べた計算方法であり、預った消費税から控除する支払い消費税には、課税売上割合(総収入のうちに占める消費税が課税となる収入の割合)を乗じてしまうため、全額が控除できない。
 これに対し、簡易課税制度とは、控除する消費税の一定割合を控除するという方法である。この割合のことを”みなし仕入率”というが、業種によって控除できる割合が定められている(図1参照)。
 医療は、サービス業の範囲に含まれるので、第5種事業として50%の割合が適用される。図2の具体例を参照していただくとわかるが、医療機関においては課税売上割合が著しく低いため、原則的な計算法方法よりも簡易課税制度を選択したほうが、納税額が少なくて済むことが多い。
 このように簡易課税制度は、損税を緩和する方法のひとつであるが、どの医療機関においても選択できるという制度ではない。
 簡易課税制度を選択できる医療機関は、消費税が課税となる収入が5,000万円以下でなければならない。簡易課税制度は、消費税の納税が少なくて済む納税者が多いことから、消費者から預った消費税を国に納税せず、納税者の手元に残ってしまう益税として問題視されてきた。そのため、適用上限が数回に渡り下げられており、消費税導入当初は5億円以下であれば適用可能だったが、平成16年4月1日以後は5,000万円以下でなければ適用できなくなってしまった。


事業区分 事業内容  みなし仕入率
第1種事業 卸売業  90%
第2種事業  小売業  80%
第3種事業  農業、林業、漁業、鉱業、建築業、製造業
電気業、ガス業、熱供給業、水道業
 70%
第4種事業 その他(飲食店業、金融業、保険業等) 60%
第5種事業 不動産業、運輸、通信業、
サービス業(飲食店業を除く)、医療業
50%


■図1 簡易課税制度のみなし仕入率区分



■図2 原則課税と簡易課税




 平成16年の改正により、簡易課税制度を選択できなくなった医療機関も多いことであろう。適用できる医療法人においては、簡易課税制度を選択した方が納税額が少なくて済む可能性が高いので、活用するべきである。
 現行の法令においては、簡易課税制度ぐらいしか損税を緩和する方法はない。適用上限の引き下げにより、活用できない医療機関も多く、課税問題の解決には至らない。
 やはり、損税問題の解決には消費税法の抜本的な改正が必要である。

損税解決方法@ 軽減税率の適用

 現在の日本の消費税は、ゼロ税率である輸出免税を除けば、5%(国税4%+地方消費税1%)で一律に課税がなされている。ヨーロッパ諸国の中には、一律の税率で課税するのではなく、課税の対象ごとに税率を変える方法が用いられている。
 たとえば、食料品のように日常消費するものについては、税率を低くすることにより消費税の負担の軽減を図っているのである。
 医療は、公益性の高いサービスであるから、通常の消費税よりも低い率を用いての消費税の負担が考えられる。この軽減率が現在、非課税とされている社会保険診療等に採用された場合を考えてみると、最終消費者である患者は、低い率による消費税を負担し、医療機関は患者から預った消費税を納税することとなる。
 消費税を計算する際、すべての収入が課税売上となるため、課税売上割合は限りなく100%に近くなり、医療機関はすべての課税仕入を控除することができる。よって軽減税率を導入することにより、医療機関における損税問題を解決することができるのである。
 しかし、最終消費者である患者の負担が増えることとなるため、国民の反発は避けられない。定率課税の縮小・撤廃、サラリーマンに対する課税の強化が議論されている現在、さらに増税色の強い税制改正を行うことは難しいであろう。
 国民としては、窓口での負担金も2割から3割へ上がり、軽減税率とはいえ消費税まで課税されてはたまらない。軽減税率を導入するのであれば、現在の「ゼロ税率」を採用した方が、国民の理解は得やすいと考えられる。
 なお、政府は軽減税率の導入は消費税率が10%台になってから議論されるべきであるとしており、当面は軽減税率の導入は望めそうもない。

損税解決方法A ゼロ税率の採用

 軽減税率は、患者の負担が増えるので国民の理解が得れれないのではないかとないのではないかと述べた。そこで考えられる方法が、ゼロ税率の採用である。
 ゼロ税率とは、消費税の税率を0%ととして計算する方法である。消費税がかからないという点では非課税と同じだが、収入が課税扱いになるため課税売上割合の計算上、分子にも含めることができる。(図3参照)
 このゼロ税率が採用されているのが、輸出事業者である。この輸出事業者と同じようにゼロ税率が医療機関において採用されれば、患者の負担が増えることなく医療機関における消費税の損税が解決されるのである。

☆ ☆ ☆ ☆

 今回は、損税解決方法について触れたが、次回も引き続き消費税の損税解決方法について他の方法がないか検討していく。

たむら・のぶかつ
 2002年東京国際大学商学部卒業。同年東日本税理士法人入社。04年税理士登録。現在、東日本税理士法人において医療法人を中心とした税務相談および特定医療法人の承認申請業務を担当。著者には『Q&A病院・診療所の消費税対策(中央経済社)。
《東日本税理士法人》
http://www/higashinihon.ne.jp/

NEW!! 
第2版、11月1日発行!!

Q&A
病院・診療所の消費税対策 <第2版>

東日本税理士法人編/田村 信勝著
A5判 259頁 本体価格3200円(税込価格 3360円)
(2005/11/1発行)

平成15年の税法改正により新たに課税事業者となる医療機関・既に課税事業者である医療機関の新消費税対策に。損税問題にも触れた、わかりやすいQ&A形式の解説。「簡易課税制度」の経過措置等も懇切丁寧に説明。必読!


出版社:中央経済社 http://www.chuokeizai.co.jp/