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医療法人制度改革

医療法改正で出資持分はどうなるか

東日本税理士法人 吉田久子
 平成17年7月22日第9回医業経営の非営利性等に関する検討会が行われた。第5次医療法改正では、出資持分の考え方について大改正が行われそうである。
 現状は医療法54条違反

 
 医業法第54条で「医療法人は、剰余金の配当をしてはならない」とある。罰則規定としては、医療法76条において剰余金の配当をしたときは、医療法人の理事、監事又は清算人、これを20万円以下の過料に処するとしている。
 しかし、昭和32年にある精神病院である医療法人の社員の1人が退社することになり、その際出資した土地の返還を要求している事案に関して、当時の厚生省医務局総務課長は回答として、「退社社員に対する持分の払い戻しは、退社当時当該医療法人が有する財産の総額を基準として、当該社員の出資額に応ずる金額でなしでも差し支えないものと解する」と通知した。つまり、その時の時価での払戻しが相次ぎ、また、税務でもそれに沿った課税がされた。当初1000万円出資して医療法人を設立したとしても、十数年後に出資持分の時価が2億円・3億円の払戻しがされ、配当所得が課された。それが当たり前になったのである。この時価と当初出資額の差額が、毎期毎期の剰余金の配当ではないものの、まとめて支払う剰余金の配当になり、医療法54条に違反する行為が広まってしまったのである。

2 医療法改正で医療法54条を徹底させる

 上記のような行為が平然と行われていたことを真摯に受け止め、2度とこのような誤った行為がされないように、医療法改正後に新たに設立された医療法人については、出資額を限度としてしか払戻しが出来ないようにすることを強制適用することになりそうである。ただ、既存の医療法人(持分の定めのある社団)については、現状との均衡をふまえ、現状のままでいるか出資額限度法人に移行するかの選択制となる。
 また、既存のままでいても差し支えないとのことであるが、この場合の当分の間とは、実際には出資限度法人へ移行しなければ、永遠ということである。現場において、出資額限度法人への移行をしなければならないのかという不安が広まっているが、それは誤りである。

3 拠出金制度という考え方

 そのようになると、もはや株式の一種を連想させる出資金という呼び方は不適切である。実は第9回医業経営の非営利性等に関する検討会の中で、現在の出資持分について、拠出金制度を選択できるようにすべきという発言があった。この発言であるが、これは持分の定めのある社団医療法人について現在の出資金制度と新たな拠出金制度を選択を可能とするという意味である。
 現在の出資金制度では、出資持分を放棄した場合、持分の定めのない社団になり、拠出金制度では、拠出金は退社時または解散時に戻ってくるという意味である。また、拠出金は必ず当該拠出額が戻ってくるという保証はなく、債務には劣後するため、拠出額と時価とのいずれか低い額が戻るのである。

4 拠出金制度の具体例

 医療法人設立時に1000万円を拠出したのであれば、退社時に1000万円戻ってくるが、その間の期間についての利息は付かない。また、医療機器を拠出したのであれば、、医療機器がそのままの状態で戻ってくる。土地を拠出したのであれば、土地そのものが戻ってくるということらしい。この場合、金銭や値上がり益の期待できない資産はそれでもいいかもしれないが、土地など含み益が発生する可能性がある資産については、要注意である。所有権が移転するということは、含み益もおのずと付いてくるということになるので、例えば、拠出時の時価が2000万円の土地が、退社時、時価が3000万円になっていた場合、3000万円と2000万円との差額の1000万円は、役員賞与等により課税されるおそれがあると考える。
 拠出金制度は、事前に税法の整備を固めないと、上記のように課税が生じる場合が出てくる。実際には、拠出金制度になってからも含み益が生じる可能性がある資産については拠出せず、賃貸借で経営した方が無難であると考える。


5 税制との関係

 通常、医療法人の出資の持分について、有価証券と捉えた場合、払戻し時には、医療法人については、時価と払戻価額との差額が経済的利益による受贈益として法人税が課税され、個人出資者は時価の2分の1以下の払戻しの場合みなし譲渡課税がされる。
 しかし、医療法人の出資の持分について、拠出金と捉えた場合、個人出資者(拠出者)は、課税関係が生じないと考える。支出した金銭等が戻ってくるだけと考えるからである。その代わりといっては何だが、払戻しを行った医療法人側は、相続税法第66条4項により、みなし贈与課税がされると考える。
 上記のように、出資持分と捉えた場合と拠出金と捉えた場合では全く異なる課税関係が構築されることになるので、今後、厚生労働省が財務省へ医療法人の出資持分は有価証券ではなく、拠出金であると納得させられるかどうかにかかっているように思われる。