公益性高い法人への移行を希望
一日に開かれた厚生労働省の「医業経営の非営利性等に関する検討会」(座長=田中滋・慶応義塾大大学院管理研究科教授)で、日本医療法人協会の豊田堯会長は全会員に行った「医療法人の非営利性等に関する調査」の結果を公表し、病院持分を解消してより公益性の高い法人形態への移行を希望する法人が半数を上回ったことが分かった。非営利の具体的イメージには、社員の退社時に出資払込額を限度に払い戻すことや、社団医療法人の解散時に出資額払込額を限度に残余財産を分配することなどが上位項目に挙げられた。
同調査は、全会員1410法人を対象に、
@役員社員、出資及び同族割合の現状
A非営利・公益性に関する医療法人の意識
B特定・特別医療法人、出資額限度法人をどうとらえているか
C医療法人の業務範囲はいかにあるべきか
ーについて聞いた。昨年9月14日にアンケート用紙を送付し、11月初旬までに回答を回収。182法人から回答を得た。回収率は12.2%.内訳は、財団法人18、持分あり社団105、持分なし社団59
(特定52、特別6,<うち重複4>、その他5)
出資持分については、「病院経営上、出資持分を解消してより公益性の高い法人形態に移行したい」に賛同するほうじんが全体で57.1%と半数を上回った「出資持分があるからこそ病院の質を向上させる意欲が出てくる」については、賛同する(28.6%)、賛同しない(23.1%)がきっ抗し、どちらともいえない41.2%だった。また「持分を解消すると病院経営の権利が奪われるおそれがある」は、賛同する(23.6%)、賛同しない(30.2%)、どちらともいえない37.9%だった。出資持分を伴う問題解決策は、特定・特別医療法人の要件緩和が75.8%で、出資額限度法人58.8%を上回った。一方公益性については具体的イメージとして8項目を提示。上位には救命救急医療の実施(76.4%)−の項目が挙がった。すべての一般医療法人に積極的な公益性まで必要とされるかについては、必要
(36.8%),不要(32.4%)、とちらともいえない
(29.7%)で意見が分かれた。

自治体病院
民間に加えて連携し赤字減らせ
全国に1007箇所ある自治体病院の6割が経営赤字に陥っている。この30年間見ても、全体の4〜6割が常に赤字、累積欠損金は02年度で1兆5123億円にも上回っている。厳しい現実を改めて確認せざるを得ない。
自治体は巨額の税金を投入してなんとか運営を続けてているのが現状だが、税収の落ち込みで自治体財政も激しいだけに事態が深刻さを増すばかりだ。
総務省が設置した「地域医療の確保と自治体病院のあり方検討会」の報告書によると、赤字には複合的な理由がある。まず、02年度に診療報酬がマイナス改定となり、収入が落ち込んだ。構造的な背景としては、へき地医療や救急、小児、精神医療など、採算がとりにくく、民間病院が余りやらない分野を自治体の責任でカバーしているという面もある。へき地医療の医師確保には多額の人件費を自治体が用意する必要がある。
都市部以外では医師不足が深刻だ。大学病院から若い医師を送り出してもらうために自治体は苦労している。さらに医師の高額給与も負担になっている。自治体病院の医師の身分は公務員で、賃金は年功だが、序列になっており、民間病院に比べ賃金が高い。
民間医療法人との比較(01年)によると、医療収入に占める給与費の割合は民間では49.7%だが、自治体病院では54.2%だ。医師確保のために民間より高額になっているのだろうが、これが赤字の大きな原因となっている。
住民の医療ニーズは一層の高齢化が進む中、確実に増えていく
しかし、自治体病院がこのままの経営を続けていれば、赤字はさらに膨らみ、税による負担は限界を超えることは間違いない。
だとすれば、自治体病院改革を断行しなければならない。課題は2つある。1つ目は住民ニーズに応えるため地域における良質で効率的な医療提供体制の確保だ。2つ目は赤字体質を改善し税負担を減らすことだ。この2つは同時に行わばければ効果が上がらない。
これは相当に難しい課題だが、悠長に構えていては赤字がかさみ、取り返しがつかないことになる。
総務省の検討会報告は、自治体病院の再編・ネットワーク化を提言している。地域の中で中核機能をもつ基幹病院と日常医療を受け持つ病院・診療所に再編するという提案だ。基本的には賛成だ。中核病院に医師を集中配置することで、へき地医療を嫌う若い医師の確保もしやすくなる。
しかし、これだけでは不十分だ。やはり地域医療は自治体病院と民間医療機関の連携がなければ成り立たない。自治体病院だけの再編では限界がある。縦割り行政の弊害だが、総務省が旗を振れないのなら、厚生労働省の出番だ。両省が連携して富と民の医療機関の連携・ネットワーク化を同時進行で実現すべきだ。
官民の病院ネットワーク化では、診療報酬の配分など難しい問題もあるが、具体案づくりに早く挙手してもらいたい。それが究極の住民サービスとなる。
毎日新聞 社説 平成17年2月2日
毎日新聞 社説 平成17年1月31日