医事新報

「医療の寡占化」には懸念も



医療法人による効率的なグループ経営を進めるため、厚生労働省が規制緩和に踏み切る。これまでは医療法人が別の医療法人をグループ化するには合併するか、個人やMS法人を通じて出資するといった、手続きに手間や時間がかかる手法に限られていた。厚労省は2006年の医療法人制度改革で創設する「認定医療法人」については、別の医療法人にそのまま出資できるようにする方針で、地域の枠組みを超えたグループ化に道を開く。 

日本最大の民間病院グループ徳州会(徳田虎雄理事長)。1973年に徳田理事長が大阪府松原市に設立した徳田病院を出発点に、2年後の法人化を経て全国に病院や老人保健施設、診療所などを急速に展開している。グループ内の病院は57病院に達し、最近は海外にまで手を伸ばすなど拡大のスピードが衰える気配はない。
 中核は徳州会と沖縄徳州会だが、グループ内にはこの2つの医療法人が「直営」しているケースのほか、もともと別の医療法人が運営していたものも多く含まれている。
例えば横浜市の日野病院は、2002年に医療法人正和会から運営を引き継いでいるが、運営母体は今も正和会のままだ。
 徳州会グループ東京本部によると、弘生会病院を含む13病院はいわゆる「外様」に当たる。徳州会と沖縄徳州会が新規に開設したのではなく、運営が立ち行かなくなった病院を救済する形でグループに取り込んだ。病院名に「徳州会」の冠をかかげていない病院の多くは、別の医療法人のままで運営している。

「合併」はできるが・・・・・

現行の医療法人制度では現在、医療法人が医療法人に出資することができない。厚労省の運営管理要綱で、現金は銀行などへの預け入れやリスクの低い国公債など有価証券に換えて保管するよう定められているためだ。
しかし、医療法では総社員の同意や都道府県(複数の都道府県にまたがる場合は厚労省)の許可を受けることを条件に、医療法人が別の医療法人と合併することができると定めている。  
 では、なぜ徳州会は他の医療法人を九州合併しないのか。徳州会は1981年に出資持分がない特定医療法人に移行している。一般の医療法人より優遇されている法人税率の恩恵をフルに受けるには、グループ内の医療法人をすべて徳州会に一本化したほうがよさそうなものだ。
 「できるものならそうしたい」と徳州会東京本部の中川和喜事務局長は漏らす。実は徳州会の前にたちはだかったのは自己資本比率の壁だった。現行制度では医療法人には自己資本比率20%(特別医療法人は30%)が求められているが、全国各地で新規開設などを急いだ結果として、時に満たなくなる事態が起こった。つまり、厚労省から合併が認可されなかったのである。
 そこで徳州会が選んだのは、グループ内にMS法人として設けている複数の株式会社が土地や建物を取得して徳州会などの医療法人に賃貸したり、相手の医療法人に出資したりする手段だった。現行の規制では、株式会社は医療法人の社員になったり、議決権を持ったりすることはできないが、見返りを求めない形の出資はできる。MS法人が資金を出し、徳州会が役員を送り込むという形で経営を実質的に支配しているのである。


厚労省はグループ経営には賛同 
 
昨年末に政府の規制改革・民間開放推進会議(議長・宮内義彦オリックス会長)が小泉首相に手渡した第1次答申(次ページ参照)
にはこれまで禁じられている医療法人間の出資を可能にすることが盛り込まれた。同会議は当初、出資した株式会社に出資額に応じた議決権をもたせるよう要求していたが厚労省が反発。とりあえず医療法人間の出資は容認することで折り合いをつけた。
 厚労省は「配当行為」が前提となる株式会社病院を経営することを認める考えは毛頭ないがスケールメリットを生かした効率的なグループ経営自体には賛成の立場をとる。今回の規制緩和を機にさらに進めてもらいたい考えだ。。ただし、すべての医療法人に望んでいるわけではない。実は、2006年の医療法人制度改正で設立する出資持分のない「認定医療法人」
(次ページ参照)だけに限定する考えでいる。
 医療法人をめぐってはこのところ、ただでさえ「事実上の配当」と指摘されている社員の出資持分問題やMS法人による取引の拡大などに対して「非営利性」が疑問視されている。そのうえ、大手を振るって病院のチェーン展開までされてはたまらないというわけで、あくまで出資持分を放棄して私利私欲がないことを対外的に示した認定医療法人だけに”奨励”しようという算段だ。