東日本税理士法人
経営規模は大きくなっても、相変わらずの個人経営体質から、脱却できない多くの医療法人が、医療法人制度改革の大波を果して乗り切っていけるでしょうか?
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年間医療収入30億円の某医療法人は、平成17年8月、K国税局の税務調査を受けた。
社会保険収入の再請求の計上漏れ約4,000万円!!を医業未収金として計上する様指摘され、修正申告に応じた。
3月決算で、平成17年4月及び5月の再請求分のうち、1年前の平成16年3月以前の返戻に係るものに限定して約4,000万円を追加して未収計上すべきものとされたのである。
1年間も、再請求せずに、放置している内部管理のレベルの低さを笑える経営者は何人いるでしょうか。

「うちの管理部門はしっかりしているから問題ない。」と言い切れる医療法人の理事長はどのくらいいるだろうか。実際客観的に見たとき、内部管理機能がしっかりしていて管理上問題がないといえる医療法人は、決して多くはないであろう。医療法人の理事長は圧倒的に医師が多い。医師としての専門分野である医療現場の管理は厳密に行っていても、経営者として、管理部門の管理は必ずしも適正に行えていないことが少なくない。
確かに、高度な知識経験等を必要とする人命に関わる医療部門においては、ちょっとした油断が大事故につながりかねないし、医療法人にとっては収益を生むいわば本業部門であるから、医療部門についてはそれ相応の人的・物的資源が投入され様々な管理が行われている。しかし、管理部門はいわゆる後方支援部門であって基本的に収益を生まないためか、ないがしろにされがちである。また、医師である理事長等にとっては専門外であり、興味が薄いのか、事務長にまかせっきりになっていることが少なくない。とはいえ事務長が適正に管理しているかといえば必ずしもそうではないのが現状である。病院の場合、医療事務、経理、総務(人事、庶務)、購買といった事務部門があるが、往々にして人が少なく、また、設備投資も医療機器等に比べるとかなり乏しい。

しかしながら、医療部門の事故のように新聞になどで取り上げられることもなく、よほどのことでもない限り漏れ聞こえてこないが、管理部門での管理の”甘さ”が問題となることがある。
例えば、社会保険診療を中心に行っている病院の収入は、2〜3割程度は現金収入であろう。毎日相当額の現金が病院の窓口にもたらされるのである。相当数の患者をさばかなければならないので、つり銭間違いはやむを得ないとしても、故意の”抜き取り”は当然あってはならない。しかし、数十万から数百万円という毎日の現金収入の内から、数千円づつ抜き取られたら気づくことが出来るだろうか。もちろん、医療法人の経営上は、数千円程度であればほとんど影響はない。しかし、抜き取る側から見ると毎日数千円であれば、年間数十万円にもなり、結構な額である。
このような話しをするとほとんどの経営者は、「うちの職員を疑えと言うのか」などと不快感を表す。ある意味当然の反応といえよう。職員を採用した責任者であるし、”身内”を疑いながら経営は行えないであろう。
ここで重要なのは、職員を疑うのではなく、このようなことが起きる危険を排除することである。多くの職員がいれば、様々な事情の人がいる。中には魔が指すということもありえる。職業柄、実際に耳にしたこともあるが、お互いに不幸なことになる。組織という性格上”なあなあ”では済まない。職員を疑うのではなく、経営者の責任として未然に防止する対策を講じることが重要なのである。ある程度の期間業務を行えば、感覚的に管理の程度が分かるものである。もし、”これはバレない”と思えば魔が指すということもあろう。”すぐにバレる”と思えば抑止力になるのである。

現金の管理の問題ではないが、以前このような記事を目にしたことがある。
『会社の廃棄物を担当者が売却して利益を得ていた。会社は長年処理をこの担当者に任せており廃棄物であったので売却しているとは知らずにいた。』というものである。これだけ見ると会社は被害者である。しかし、これが問題になったのは税務調査であり、当局は会社の売上除外として会社に課税してきたのである。一瞬耳を疑うような話しであるが、よくよく考えてみれば理解できないこともない。そもそも売却したのは廃棄物といっても会社の所有物であるし、会社の社員が行っている。外形的には会社の取引になる。その売上金を担当者が着服していたという判断である。つまり、売却までは会社の計算において行われていたということになる。したがって、その売上を計上していないのだから”売上除外”となるのだ。会社にとっては厳しいが、全く理解できないというような内容ではない。問題なのは長年担当者に一任していたということである。なんらかの方法で管理するなり、定期的に担当者を代えるなりしていれば、ある程度妨げたものと考えられる。なんら対策を講じなかった会社の過失が問われたということだろうか。
また、似た事例で医療法人特有のものがある。学生の実習を受け入れた際、慣例として行われている実習担当者である職員への謝礼がそれである。金額的にも大したものではなく、慣例的に学校側から担当職員に渡されているようであるが、これについて医療法人の売上除外とされたという話しを聞いた。職員個人の所得漏れ漏れならまだしも、医療法人の売上除外とは少々信じがたいが、その理由はこうである。実習が医療法人の施設内(すなわち病院等)で行われ、担当職員も職員としての職務の一環として実習を行っており、それに起因して謝礼が支払われているため、本来は医療法人が受けるべき所得と判断されたということだ。これは極端な事例とは思われるが、医療法人が職員や学校側に対してなんらの管理もしていなければ、その責任を問われても止むを得ないであろう。
売上除外は重加算税が課され、税務上重い罰を受けることになる。金額は僅かでも、特定医療法人などにとっては取り消し原因になってしまうほど重要な問題である。慣例だからと”なあなあ”にせず適切な管理を行っていかないと重大な問題を引き起こしかねないのである。

これまで述べたように、細かい話しではあるが、組織としての医療法人には管理の充実が求められる。定期的な配置転換や複数の人員によるチャック体制の構築など内部の浄化機能を充実させることが考えられる。しかし、もともと医療法人の管理部門は人員が多くなく、複数の施設を経営する医療法人ならまだしも、一施設のみの医療法人では、配置転換は困難であろうし、複数の人員によるチェック体制の構築には人員増を伴う可能性があり、コスト的にみて難しいかもしれない。
コスト的にはもう少し安上がりの方法として、外部監査の導入が挙げられる。公認会計士や監査法人による会計監査のことであるが、これは医療法人の内部管理組織の状況に併せて行うので、管理組織の問題箇所を中心に監査を行うことになり、内部管理組織の構築にも資することになろう。少なくとも、第三者が業務を監査することで、職員に対する良い意味での緊張感を与え牽制効果が期待できる。
もちろん、監事による監査を活用することも可能である。名目的の監事である場合が多く、その場合には余り期待できない。また、監事監査を活用すれば、その場合にもそれなりのコスト(監事の報酬等)がかかることになろう。
他にも最近流行のISOや格付け、第三者評価なども、有効に活用することで内部管理体制の構築に資することになる。 |
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