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ジャミックジャーナル 2005年8月26日
@【資料】2006年度予算概要要求の主要事項 厚生労働省
第1回
 平成17年4月に厚生労働省医政局指導課より「医療法人制度改革に関するご意見の寡集について」が公表された。
 同課では、将来の医療法人制度について、(A)非営利性を徹底した新しい医療法人制度と(B)さらに公益性を求めた新たな医療法人制度(認定医療法人制度)との二つの観点から考え方を整理している。「医療法人制度改革に関するご意見の募集について」は、より広く国民からも意見を求めるものであり、筆者も5月13日付で同課に意見を提出した。
 本稿は、提出した私共の意見のうち重要テーマを抽出し加筆修正を加えたものである。
新連載
医療法人制度改革

医療法人制度改革への提言

東日本税理士法人 会計士補  長 英一郎


監査の目的を明確にすべき
 厚生労働省の意見
 認定医療法人(仮称)については、地域で安定的な医業経営を実現するために公認会計士等の財務監査を受けなければ成らないものとする。

 ◆筆者の見解◆
 地域で安定的な医業経営を実現するために財務監査を受けなければいけないものとしているが、監査の目的が不明確である。監査の目的を明確にしなければ、ともすれば公認会計士等の職域拡大につながるのではないかとの批判を受け、認定医療法人の目指す目的が矮小化されかねない。主たる監査の目的として、以下のようなものを挙げてはいかがであろうか。

@内部管理のサポート
 医療法人の内部統制の有効性を確かめることにより独善的経営を拝し、医療法人等を保護する。国から税制上の優遇措置を受ける認定医療法人は当然安定的経営が求められる。経営者は、自らの権限と責任において健全な内部管理、内部統制組織の維持管理が必要とされる。外部監査は内部管理等をサポートし、私的経営を排除するために実施されるものである。

A継続企業の前提についての意見表明
 継続企業の提言に基づき財務諸表を作成することが適切であるか否かを検討することにより安定的な医業経営を実現し、債権者等を保護する。継続企業の前提とは、企業が将来にわたって事業活動を継続するとの前提をいう。監査人は、理事長が実施した合理的な期間のうち少なくとも貸借対照表(決算日)の翌日から一年間を対象期間として検討する(図1)。債務諸表監査により継統企業の前提について意見表明されれば、医療法人が一定期間存続することが期待され、債権者・地域住民が保護される。

B財務諸表の適正性確保
 財務諸表が一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して適正に表示されているか否かを意見表明することにより、公募債を購入する投資家の信頼性を確保する。財務諸表の適正性確保により、財務格付けが向上し、資金調達コストが節減される。

C公益性の向上
 特殊関係者に対する利益供与の有益等を確かめることにより私的経営が排除され、医療法人職員の士気が向上する。

D自治体病院の受け皿となることの前提
 認定医療法人は、地域住民に支持される存在が期待されている。不効率経営の自治体病院の受け皿に認定医療法人がなる場合には、公立病院と同等の運営と透明性が当然求められる。透明性確保のために監査は必須である。

E税理士法第33条の2書面の普及
 税理士法第33条の2において納税義務の適正な実現を図るため、書面添付制度が規定されているが、広く普及していない。書面添付制度では未監査の財務諸表を基に税理士が申告書に意見を表明することが一つの原因になっている。財務諸表に意見表明をすれば、税理士が書面添付制度を活用し、正確な申告書が作成されることが期待される。納税者側の医療法人にとっても、税務調査による予期せぬ課税を回避することが可能になる。

図1 継続企業の前提

        決算日の翌日より少なくとも
          一年間は存続するとの前提
                
   
      
当事業年度   決算日     次事業年度



個人保証の免除が認定医療法人普及の最大の鍵

厚生労働省の意見

認定医療法人(仮称)が行う事業については、(中略)収益事業又は児童福祉事業、障害者福祉事業、障害者福祉事業若しくは介護福祉事業を行えるようにする。

◆筆者の見解◆
独立行政法人社会福祉機構では、社会福祉法人等が社会福祉事業施設の設置・整備に必要な資金を借り入れる場合、社会福祉振興試験センターに一定の保証料を支払うことを条件に代表者個人の連帯保証を不要としている(図2)。しかし、医療法人が社会福祉機構より融資を受ける場合、上記のような制度はなく、理事長及び施設管理者(院長、介護法人保健施設管理者)を含む役員2名以上の連帯保証人が義務付けられている。
 特定医療法人では、出資持分の相続人は出資持分の払戻請求権がない反面、保証債務を負うため、特定医療法人移行をためらう医療法人も少なくない。保証債務(経営責任)の対価としての給与の支給は、勤務とは無関係であるため税務上損金算入が認めてもらえない。非常勤で、医療法人の経営に参画し保証債務を負っている社員については社員総会の日当の支給しか認められていないのが実態である。そのため、保証債務が剰余金の配当禁止に抵触するような高額な役員報酬を支給する動機の一つになっている。
 認定医療法人が、介護福祉事業を実施することが可能になるのであれば社会福祉法人のように社会福祉事業施設の設置が可能になる。認定医療法人に財務監査が義務付けられるのであれば、社会福祉法人と同様に個人の連帯保証については不要とする制度の創設を望みたい。

図2 代表者個人保証不要の仕組み

       C−1 保証料領収書
                   社会福祉法人等利用者より B保証料振込み
 





















独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興センタ

保障期間
社会福祉振興センタ|保障期間
@−1 利用申込 @ー2 利用申込
A−2 保証料承諾 A−1 保証料承諾
通知・保証料請求書 通知・保証料請求書
C−2 保証書



名目社員には代表訴訟を制限すべき

厚生労働省の意見
医療法人の利益が役員の私益な行動によって害されることを防ぐため、社団医療法人の社員により役員に対する代表訴訟制度を、公益法人の改革を例にしながら検討するものとする。その際、濫訴防止の観点から、代表訴訟の制限に関する規定についても同様に検討するものとする。

◆筆者の見解◆

濫訴防止の観点から、少額出資社員、0円出資社員、継続保有期間の乏しい社員には代表訴訟の権限を認めるべきではない。
 代表訴訟制度とは、理事の任務違反により法人に損害を与え、法人が理事に対して責任追及する制度である。
 理事が法人に対し責任を負う場合には、法人が責任を追及するべきであるが、実際にはその責任が追及されない場合がある。そこで、法人が理事に対する責任追及を怠っている場合には、社員が法人に代わって責任追及することができるとしたものである。(図3)
 株式会社では、6ヶ月前より引き続き株式を有する株主は会社に対し書面により取締役の責任を追及する訴えの提起を請求することが出来る。(商法第267条1項)とされ、濫訴防止の観点から6ヶ月以前から株主であることが必要であるとされている。
 医療法人では、株式会社と異なり社員の定数を確保するため、形式的に0円出資の社員が入社することがある。医療法人設立の事前審査の際には、社員全員が出資するようにという指導を受ける場合があり、院長以外の社員が形式上の少額な出資をしてしまうことがある。名目的に入社した0円出資社員、少額出資社員には代表訴訟の権限を認めるべきではない。法人を代表して理事の責任を適切に追及することが期待できないからである。

 保有目的についても、医療法人は株式会社と異なり、通常長期支配のみを目的としている。保有期間については、6ヶ月という短期ではなく2〜3年の期間は必要であろう。
  また、医療法人のモデル定款によれば、理事は社員総会において社員の中から選任することを原則としており、通常、所有と経営の分離が図られていない。所有と経営の分離を明確にしなければ、社員から理事に対する代表訴訟制度も形骸化すると思われる。


図3 代表訴訟の仕組み




参考文献
長 英一郎:認定医療法人の と今後の課題、日本医事新報社、「日本医事新報」2005・3