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医療広告と宣伝
奥平 啓彦 日本医師会参与・弁護士  舟邉・奥平事務所
医の倫理ーミニ事典 日本医師会雑誌 h18・3号付録

我が国では、明治39年規定の医師法以来、医業に関する広告は、虚偽、誇大な広告から患者を保護するためという観点から、法律により広範に規制されてきた。
 つい最近までは、医療法69条に列挙された医療機関の名称,住所,電話番号,診療科名や医師の氏名などのごく限られた事項以外の広告は、罰則付で禁止されてきた。
 医師の職業倫理においても、広告・宣伝して顧客を誘引することは、医師の品位を害するものと考えられ、医業の広告・宣伝は慎むべきであるとされてきた。
 日本医師会が昭和26年9月に制定した「医師の論理」では、医師が広告・宣伝することは、医師の品位を傷つけ、医風を紊す行為であるから、自粛すべきであるとして、「優秀な医学的技能と誠実なる診療とを以て、患者の信頼を得ることが、最も価値ある広告であることを銘記してほしい」と規定していた。
 諸外国でも、広告・宣伝について同様な論理基準を規定しているところが多く、第3回世界医師会総会で採択された医の国際的倫理基準でも、医師による自己宣伝、広告になるような行為は、自国の医の倫理で認められていない限り、反倫理的行為と見なされるとしている(1949年10月採択後、この部分は改正されていない)。
 しかし、最近になって、医療機関の情報提供に対する社会の要求が強まってきた。患者の自己決定権が尊重されるようになり、自らが受ける医療を選択することになれば、医師、医療機関に関する情報は必要だからである。
 日本医師会第W次生命倫理懇談会の「医師に関する情報の提供は、医師自身に対する技量の評価の機会を増やすことになろう。それは、医師が互いに切磋琢磨することにより医療水準を引き上げることにも通じる」と、この動きを積極的に支持している。
 医療に関する情報開示を進め、患者の選択を通じて、一層質の高い効率的な医療としていく観点から、広告についても規制を緩和することになり、平成14年4月、医療法69条が改正され、広告することが出来る事項が、専門医資格、治療方法、平均在院日数、手術件数、分娩件数など医療の内容に関する事項まで大幅に拡大された。
 また、インターネットの普及により医療機関がホームページを開いて、医療機関の紹介をすることも行われるようになったが、厚生労働省は、このようなインターネットを介しての情報提供は、医療機関の広報と位置付け、医療法の広告規制には該当しないとして、規制する動きを示していない。
 今後一層、医療に関する情報提供の要求が強まり、これに伴い広告に対する規制もさらに緩和されることが予想される。その場合、法律で広告できる事項を列挙する現在の規制方法を見直し、広告・宣伝を原則自由とし、虚偽・誇大な広告だけを罰則付で禁止する方法に変更することも考慮されよう。
 しかし、我が国では、欧米の先進国に比べ、街頭などでの広告、しかも過大とも思われる内容や顧客誘引型の広告が目立っているといわれている。
 医師・医療機関は適切な情報提供の拡大を心がけることは必要であるが、広告・宣伝する場合は、「過大な自己宣伝に陥ることなく、適切な情報提供媒体を選んで節度ある広告・宣伝を行うことが大切である」(日本医師会「医師の職業倫理指針平成16年2月)。