TOP

JaPAN Medicine
2005/10/12
有床診へ移行も医師増員
地域医療充実へ再生
北海道穂別町の国保診療所
厚生労働省など関係3省が「医師確保総合対象」を打ち出すなど、喫緊の課題となっている医師不足・偏在問題。特に北海道では深刻だが、札幌市の南東にある穂別町は、町内唯一の病院だった63床の町立病院を19床の有床診療所にしながらも、医師を増員し、診療態勢の充実に乗り出した。また有床診化により、一般会計からの繰り入れは、6割減の8000万円に圧縮され、町財政への負担も大幅に軽減した。地域医療の確保は、規模でないことを示すモデルといえそうだ。
穂別町(人口3800人)が運営するのは穂別町国民健康保険診療所。5月1日から診療所として再スタートを切った。病院時代は常勤医師2人だったが、うち1人が有床診になると同時に辞めるという事態に陥った。しかし今では、地域医療に関心を持つ若手医師2人を迎えた3人体制となり、逆に増えた。
 有床診化に先駆けて2月に整形外科を新設し、診療科目は内科、外科、小児科、リハビリテーション科を合わせて5科。一般13床、療養6床と一般病床を多めにした。東京都23区の9割弱に相当する広大な同町での巡回診療エリアも拡大した。

●市町村合併も追い風に

 
同町が有床診へのダウンサイジングという大胆な決断を下した理由は何だったのだろうか。
「2000年ごろから63床の病床を持つことに疑問を持ち始めた」と話すのは一木崇宏所長。ちょうど建て替えの話が浮上した頃のことだという。また普通交付税は減少傾向にあり、三位一体改革への危機感もあったという。
一木所長が旧町立病院に赴任した
1998年当時、常勤医は4人いた。1日の外来患者は約140人、入院患者は35〜40人で病床稼働率は6割前後。平均在院日数は35〜40人と長く、患者状態を踏まえて短縮を図った結果、02年は約21日になった。ただ病床稼働率は3割強に落ち込み、経営状況は悪化した。
 また一木所長が「北海道と都会とでは距離間が全く違う」と指摘するように、医療連携は地理的状況から難しい。
83床の病院がある隣の鵡川町までは約30km、市立病院を含め2つの400床規模病院がある苫小牧市までは約70km。これを都心に当てはめると30kmは直線距離で横浜市、70kmは埼玉県秩父市に相当する。
 一般会計から年間約2億円を繰り入れても赤字続きの病院の再建に向けて、町議会や住民と話し合い、いくつかの選択肢の中から、有床診が選ばれた。06年3月に控えた自治体病院のない鵡川町(人口7000人)との合併に向けて、03年度末で2億2700万円の不良債務を放置できないという危機感も、抜本的改革を急がせた。
 病床削減により、同診療所は総務省が05年度から始めた自治体病院の削減に対する地方財政措置の対象になる。5年間程度は削減前の病床数で普通交付税が交付され、同町には63床分の年間約3000万円が入る見込みだ。

●依然厳しい経営 
 国保会計のバランス重視で

 
 有床診となっても、外来患者数は変わらないが、病床稼働率は9割に上昇した。一木所長は「平均在院日数は20日を切っているのではないか」と話す。ただ、有床診の入院基本科は病院よりかなり低く設定されているため、一日に病院時代とほぼ同数の入院患者を診ていても、入院収入は約4割の大幅減だ。また、病床種別ごとに病棟を分ける必要があるため、運営上、非効率な面もある。
 全体収支は年間約1億2000万円の赤字見通しで、経営は依然厳しい。
後発医薬品への移行などで、支出抑制に努めている。
 19床に対して看護職11人という手厚い体制から、次期診療報酬改定での有床診入院基本料のアップに期待は大きい。しかし国保加入の国民が多いことから、診療所の収支だけにこだわらず健康作りの積極支援などにより、国保会計全体のバランスを重視する考えだ。