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税制度から見た医療法人の非営利問題
公認会計士 空本 光弘
『非営利』とされる医療を行う開設主体は、国立病院機構、社会福祉法人、地方独立行政法人、日本赤十字社、地方自治体等30種以上も存在する。全国の病床数(病院だけ)163万床のうち、国立病院機構や市町村(いわゆる公的病院)が有する病床が38万床に対して医療法人や個人が有している病床数は90万床もある(2005年1月末現在)。病床の半数以上は、医療法人や個人が経営する施設である。
現在の税制では開設主体に応じて法人税法上の取り扱いは異なる。通常の医療法人であれば、利益の35%程度の税負担があり、特定医療法人や公益法人は低率課税が採用されても25%の税負担となる。結果的には、『非営利』とされる医療提供する半数以上の組織が、法人税を支払っていることになる(表)。
<開設主体別 法人税の取り扱い>
医療法人
公益法人
(民法34条)
医師会
日本赤十字社
学校法人
社会福祉
法人
課税 or 非課税
課税
(特定医療法人は低率課税)
課税
(低率課税)
or非課税
非課税
非課税
非課税
非課税
05年2月7日、日本精神科病院協会からの質問について厚生労働省医政局指導課長は、医療法人は「営利法人たることを否定した法人」であることを認めた。そして、「医療法人の剰余金は、医療法人に帰属する」との見解を示した後、相続税に対する問題には管轄外として回答を行わなかった(相続税問題は次回号にて解説する)。ここに「非営利」に対する見解が、厚労省、課税庁、医療法人で大きく異なっていることが分かる。
医療法人サイドからすれば、法人税が課税される以上「医療は非営利」という言葉は美辞麗句にすぎないと感じている。実際は法人税を納める義務がある以上、営利法人と同一という感覚がそこに存在する。同じ医療を提供しながら、開設主体の違いだけで法人税という余計なコストが必要になる。いまや公的医療機関でさえ、「適正な利益を確保する」ことを目標に掲げ、良質な医療を提供するには資金的な裏付けの必要性も認知されている。社員への配当ができないことだけをもって、「非営利」と定義することは厚労省内だけの見解であるといえよう。
一方、課税庁サイドからすれば、開設主体に応じて法人税の取り扱いの違いは税法で明確に定められているため、立法趣旨を検討し直し税法を変えない限り変更されることはない。どのような過程で医療法人が『法人税法上の営利法人』として位置付けられたのかは不明であるが、税収入不足が叫ばれている今日、現状の医療法人制度が変わらなければ、医療法人の非課税(非営利)が課税庁に認められることは厳しいのではないかと思われる。
06年の医療制度改革で成立を目指す『認定医療法人制度』は、赤字の自治体病院の救世主になるものとして大きな期待が寄せられている。現在、全国の約6割の自治体病院が赤字といわれており、地方財政を圧迫している。その証拠に市町村合併が頻繁に行われたここ2〜3年、赤字の自治体病院を民間移譲するケースや指定管理者制度を採用するケースが全国で見受けられる。多くの自治体では、問題を先送りして合併作業を優先しており、今後も同様な改革が行われると考えられる。
そのような自治体病院の受け皿として、厚労省は公益性の高い医療法人を想定し、『認定医療法人制度』の確立を目指している。現状では、特定医療法人や特別医療法人が制度としては存在するが、給与制限があることや親族経営を認めていないこと、原則40床以上とされていることから医療法人数の1%程度しか普及されていない(04年3月31日現在)。
『認定医療法人制度』は、民間の医療法人でありながら一定の公益性を持たせること(外部監査の導入、地域住民の経営参加等)で、公的施設の受け皿となるに相応しい組織を基本としている。この制度は、『公益性』が基本となるが、制度を普及させるのであれば、当然そのためのインセンティブが必要になる。その有効策は法人税負担をなくすことである。
課税庁は現在、非営利組織を原則課税とする仕組みを検討しており、非課税措置はその運営内容の審査を外部の有識者に依頼し限定的に解釈しようとしている。課税庁が非営利組織に対する法人税の取り扱いを見直すことが予想される時期に、医療法人の非営利性を整理し、『医療法人は非営利』が名実(医療法上も法人税法も)相伴うことを期待する。