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病院倒産 そのときどうする
医療タイムス 2005年10月24日
東日本税理士法人の法律顧問でお世話になっております、堀克巳弁護士が多くの経験を踏まえ、「放漫経営」の病院医療法人への警告を述べています。

医療法人の再建は「民事再生法」のみ

 現在医療機関が倒産した場合、法的な手続きは「民事再生法」と「破産法」によるものがある。株式会社であれば「会社更生法」も選択肢の一つになるが、医療法人は対象にならない。法に基づかない私的な精算手続きも選択肢の一つになる。法的な手続きを行うと広く「あそこはつぶれた」などと噂が立つため、可能な限り私的な手続きで進められることが多いが、負債額が多額だったり債権者が多数に及ぶようになる場合には法的な手続きに基づいて進められることが多い。
 医療機関の再建を含めた倒産手続きを多く手がける東京都豊島区の深沢総合法律事務所の堀克巳弁護士は最近の倒産の形態として、@過重な設備投資による金融負債を抱え今の診療報酬で賄いきれなくなったケースA院長に経営能力がなく労使問題などに発展したケースB医療機関のバックに株式会社が付いているが、バックの会社が医療経営に不慣れであったり有能な医師その他のスタッフが集まらず頓挫するケースなど、大きく3つに分類する。
 堀弁護士らが関わった事例では、バブル期に企業健診が活発だったため、これに対応できるよう医療機器その他の設備投資を行ったものの、バブルがはじけ、企業健診などが低調になるに従って医療機関の運営も下向きになったという。銀行には金利の引き下げ要求や元金返済を遅らせるなどの対応を求めたが、それでも経営を維持できなく、事業譲渡にともなって債権カットを受けて再生を図った病院がある。
 堀弁護士はこうした倒産した医療機関が最大のポイントを「従前のメーンバンクがいかに支援してくれるかだ。もし、抵当権が実行され、病院の土地建物が競売にかかれば再生の余地はない。医療機関が診療を続けられるところまで債務を圧縮できれば、再生の道も残される。負債を圧縮する方策について
メーンバンクと協調協議ができるかどうか、関係者の腕の見せ所だ」と指摘する。
 堀弁護士によると、倒産した医療機関を精算するか、民事再生法などを活用して再生を図るかの視点は2つあるという。
 1つは、メーンバンクの協力が得られ、他の債権者にも将来的な信頼が得られること。もう1つは現経営陣が退陣しても経営能力のある後継者がいるかどうかだという。これらをクリアできれば再生の方向に行く。逆にクリアできなければ清算手続きとなる。

 清算手続きの中で、さらに失敗するケースもある。病院の場合「1ベッド1億円」などとの相場を信じ、病院を売却して負債を帳消しにしようと思ったところ、買い手が付かない間に競売にかけられ、一般的な不動産としての価値だけになってしまうことにも注意が必要だ。清算手続きと言っても病院という事業を譲渡できなければ、譲渡価値は激変する。
 

医療機関の倒産は民事再生法によるものが75%に

 東京商工リサーチの倒産形態別の集計によると倒産後、再生を図る「和議法」「民事再生法」の適用が38件。一方、医療機関を清算する「破産」が92件と、清算するケースが圧倒的に多い。「内整理」も14件ある。事業は続けられるが倒産と見なされる「銀行取引停止」が最も多く197件となっている。
 しかし、年々民事再生法や破産といった法的手続きをとるケースが増加しており、2001年は全倒産の半分にも満たなかったものの、2004年には75%が法的な対応をとるようになっている。

民事再生法の適用には医療法人が有利

 民事再生法は、2000年4月に施行された。従来、倒産の場合、再建する場合は「和議法」「会社更生法」によって手続きが進められ、医療機関の場合は「和議法」による再建が行われていた。この「和議法」を「会社更生法」として再編し、債権者の同意割合や裁判所の許可期間、早い段階での申請ーなど、より使いやすい制度になった。
 メーンバンクの協力が得られれば、倒産しても再建の道は残されているが、法人化されていない医療機関の場合は困難が伴う。個人立の医療機関も少なくはなっているものの、残っている。個人立の場合、病院長が債権者から信頼を得られなければ病院自体の存続に協力が得られず、破産手続きしか選択の余地がなくなってしまう。個人立の病院の場合、事業資産と事業外倒産の分離が法的にできないため、資産はすべて売却の対象になってしまう。医療法人の場合は、理事長(=病院長)に退陣してもらって、メーンバンクの協力の下で新たな体性で病院を運営することで、病院を存続させる方法が執りやすい。このため、堀弁護士は債務超過に陥り再スタートをきることだけのためではないが、日頃から安定した病院運営を目指す意味でも、経営状態が良好な時期での法人化をすすめる。
 また、実際の手続きには3ヶ月から半年の期間が必要になることから、日頃からの銀行の信頼を得ておくため、経営状況の開示が重要であると指摘する。
 そのうえで堀弁護士は医療機関に対し、日頃から顧問弁護士をもっと活用すべきであるとすすめる。たとえば、「融資を受ける」「土地を買う」といったこと1つとっても、契約内容のチェックを受け不利な条件での契約締結を回避すべきだ。通常、経営面は経営コンサルタントなどと連携をとりながらすすめるが、医療機関も契約によっれ成り立っていることをこれまで以上に自覚して、法律的な面は弁護士の活用が有効だという。倒産や医療事故以外でも活用できる場面は少なくない。
 医療機関を取り巻く環境は今後も厳しさを増していくことが予想される。実際の医療機関の倒産件数は長期的には増加傾向にある。全産業の中に占める割合も増えている。そんな中で本業がうまくいっていたとしても、社会環境の変化によって倒産という憂き目に遭わないという保証はない。
 仮に倒産したとしても、救われるのは大企業ばかりでなく、医療機関も再建、再生の道は残されている。診療報酬が大き上がらないとしても、医療機関は一般企業から見れば安定した収入が得られることは間違いない。日頃からの銀行とのつきあい方、さらにはさまざまな経営指標による、経営把握による、マネジメント能力を磨いたおくことが大切だ。