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 『朝日新聞(全国版)2面大半を使って報道されました 日本地図で事例紹介されていますがほとんど東日本税理士法人が関与させていただきました』〜政府の支援が後手に回っていると言う指摘に国会と政府が真剣に対応してくれることを強く期待します〜(長 隆)



(時時刻刻)自治体病院、窮余の民営化 財政難・合併で広がる動き

2007.03.06
 東京朝刊 
 
自治体病院が運営の主体を民間医療法人に移す「民営化」の動きが広がりつつある。財政難や市町村合併で赤字病院を支えきれなくなる自治体が増えているためだ。再建計画が決まった北海道夕張市の市立総合病院を含め、少なくとも5病院が4月から民間として再スタートを切ろうとしている。地域医療のため有志の医師や住民らが運営を引き受けるケースもあるが、再建への取り組みはまだ手探り。民営化を想定した政府の対応も後手に回っている。(野沢哲也)

 待合室にお年寄りの姿が少しずつ戻ってきた。夕張市立総合病院では、減る一方だった内科の外来患者数が昨年末の村上智彦医師(45)の赴任後、1日平均66人から73人に増えた。家計を理由に高血圧の治療を半年間やめていた女性(76)も、通院を再開した。「先生は余分な薬を出さないし、信頼できる。ずっと夕張にいてほしい」
 病院は、規模を縮小して4月から診療所になる。施設は引き続き市が所有するが、運営は、村上医師が理事長となる医療法人「夕張希望の杜(もり)」に委託される。

 病院は昨夏、経営診断にあたった公認会計士の長隆氏から「完全な破綻(はたん)状態」と宣告された。
 05年度の赤字は3億円余。累積債務は40億円に膨らんでいた。赤字体質の要因は人件費の高さ。准看護師の年収水準は610万円(経験30年)で民間も含めた全国平均より約100万円高く、事務職も845万円(同)で平均より80万円高かった。勤続年数が長いほど「高給」となる公務員給与体系のためだった。
 一方、医師も1723万円(経験15年)で全国平均より約300万円高かったが、北海道内で比べると逆に平均より300万円安くて他より見劣りし、医師不足が急速に進んだ。01年ごろまで10人ほどだった常勤医は昨年、一時2人に。患者数も5年間でほぼ半減する悪循環に陥った。


 予防・在宅に軸
 4月以降、累積債務は市が返済するものの、税金投入は一切なくなる。だが、再生に向けた村上氏の構想は明確だ。
 現在の171床を19床まで削減し、老人保健施設(40床)を併設する。医師数は3人程度。診療科も現在の11科(うち4科は休診)から3科程度とし、往診に多くの労力を振り向ける。道内の旧瀬棚町立診療所などに勤めた実績を生かし「予防と在宅に軸足を置いた地域医療のモデルケースをつくりたい」という。

 職員125人(1月時点)は今月末で全員退職。再雇用の可能性は残るが、人員減や給与引き下げは避けられず、資格に応じた能力給の導入も検討している。
 人件費削減に加え、病院関連施設に有料老人ホームを誘致するなどして施設管理費を圧縮できれば、新法人は年間1千万〜2千万円の黒字確保が可能、と村上氏はみる。
 人工透析治療など続けられないサービスもあるが、村上氏は「採算が取れなければ、夕張で医療を続けられなくなる。身の丈にあった診療所として受け入れてほしい」と理解を求めている。


  効率優先へ、ためらいも
 民営化を模索する動きは全国に広がる
 4月には福岡の2県立病院が施設ごと民間に経営移譲され、愛知県東栄町の東栄病院も、町から民間医療法人に運営が変わる。宮城県石巻市と東松島市が運営する公立深谷病院も、4月からの移譲先を公募中だ。
 横浜市のみなと赤十字病院のように、自治体が行政効率化のため既存の民間病院に地域医療を任せる「都会型」もある。だが大半は、財政悪化に苦しむ自治体が、廃院を避けるためやむなく踏み切るパターンだ。

 人件費や医薬品・材料購入費の高さなど「役人経営」に加え、地方交付税の削減、医師不足などが経営悪化に拍車をかける。日本政策投資銀行の調査だと、04年度に税金の穴埋めなしで黒字を確保した自治体病院は、全体の7%。06年度の診療報酬引き下げで、さらに減るとみられている。


 初年度で再建
 民営化で短期に病院を立て直した例がある。
 京都府・旧大江町営の国保大江病院は、福知山市との合併にあたり、市側に継承を拒まれた。町は病院を残すために民営化を決断。医師や町民ら地元有志が設立した法人に5億円を寄付する形で05年4月、「新大江病院」が再出発した。
 04年度まで毎年2億円近い税金で赤字を埋めていたが、05年度は職員給与の5〜20%カットなどで人件費を1億円削減。一時は50%台だった病床稼働率を87・6%まで上げ初年度から実質6500万円の黒字を出した。
 だが、二の足を踏む自治体も少なくない。
 石川県七尾市にある公立能登総合病院は昨年3月、有識者による経営改革委員会から「民営化すべきだ」との答申を受けた。しかし、病院職員の反発に加え、議会からも「民間に経営を任せたらもうけ主義に走り、地域住民が求める医療ができなくなる」との慎重論が噴出。公営のまま収支改善に取り組んでいる。
 全国自治体病院協議会の06年春時点の調べでは約1千ある自治体病院のうち、公設民営化は38、施設も含め完全民営化したのは16にとどまる。


 政府の支援、後手に
 自治体病院民営化の「受け皿」を意識し、政府は4月、改正医療法施行に伴って「社会医療法人制度」をスタートさせる。へき地医療、救急医療、産科・小児科医療など公共性の高い医療を担う民間法人を都道府県が「社会医療法人」に認定。優遇措置として、不動産賃貸業など医療以外の収益事業も認める。夕張市立総合病院を受け継ぐ「希望の杜」も、申請を予定している。
 ところが、制度の運用は事実上、半年以上先送りされそうだ。法人の「公共性」を判断する基準は、都道府県がこれから策定する医療計画の中で示されるためだ。計画の公示は秋以降とみられ、実際の法人認可は、来年以降になる可能性が高いという。
 優遇措置の効果も不透明だ。例えば、目玉の一つの「公募債」。社会医療法人に債券発行を認め、広く一般投資家から資金を調達できるようにするものだが、金融業界には「過疎地の自治体病院を引き継ぐ法人に、どれほど資金の出し手が出てくるのか」と冷ややかな見方もある。
 社会医療法人への法人税減免も検討されているが、財務省が難色を示しており、結論は今年末以降に先送りされている。


 自治体病院、主な民営化の動き
 ○…完全な民間譲渡
 ◎…公設民営化


 北海道
 夕張市立総合病院(07年4月)


 宮城県
 公立深谷病院(07年4月)


 新潟県
 旧・巻町国保病院(05年10月)


 神奈川県
 横浜市立みなと赤十字病院(05年4月)


 愛知県
 国保東栄病院(07年4月)


 京都府
 国保新大江病院(05年4月)


 福岡県
 福岡県立嘉穂病院(07年4月)
 朝倉病院(05年4月)
 福岡県立柳川病院(07年4月)
 福岡県立精神医療センター太宰府病院(05年4月)
 遠賀中間医師会病院(05年4月)


 大分県
 佐賀関病院(04年7月)
 <カッコ内は民営化の時期。病院名は現在のもの。巻町病院(現在閉鎖中)は08年に民営の新病院として再開業予定>