厚労省の病院再編 地域の実態踏まえ議論 4病院リスト

2019.11.20

《NEWS インサイド》厚労省の病院再編 地域の実態踏まえ議論 4病院リストで公表  
2019.11.17 上毛新聞 



 厚生労働省は9月、再編や統合の必要があるとした公立・公的病院のリストを公表した。地域医療の効率化を促すため、「診療実績が特に少ない」などの分析から評価したが、県内で対象となった4病院には専門医療に定評がある病院も含まれた。すでに病床の転換など効率化に動いている病院も該当しており、実態を反映していない側面も。県内では今後、4病院が属する医療圏単位で、実情や将来予測を踏まえた議論が進められる。


■存続を不安視■

 今月13日夜、県庁で行われた地域医療構想の研修会。リスト公表への異議に対し、厚労省職員は「申し訳ない気持ちもある」と述べた。出席した病院側の不満を受け止めつつ、地域の実情に応じた議論を求めた。

 研修会の一幕は、医療現場が混乱したことを物語る。4病院の一つ、県済生会前橋病院(前橋市)では、患者から存続を不安視する声が聞かれたという。同病院は「消化器がん患者数県内1位」「全国9位の白血病治療」などの実績と共に「診療を継続する」ことを伝えるパネルを院内に掲示し、患者の不安解消に努めている。

 がんによる死亡例の多くは消化器がんで、同病院は消化器系の治療を得意とする。高難度の肝胆膵手術では、安全性や実績に関して学会の認定も受ける。だが、リスト公表に当たって厚労省が周産期医療、小児医療なども含めた広い観点から分析したため、「実績が乏しい」との評価につながった可能性がある。さらに、近隣の病院と診療領域が似ていたこともリスト入りの要因となった。

 同病院関係者は「専門的な実績が考慮されない形でリストに入ったことは遺憾だ」とする。


■回復期へ転換■

 2025年には団塊の世代が75歳以上となり、医療需要の増大が見込まれる。公立・公的病院には手厚い医療で診療報酬が高い急性期病床が多く、厚労省は今後、より需要の高まるリハビリ向けの回復期病床などへの転換を促している。同年までに急性期病床の3割削減を目標とするが転換は進まず、リストの公表に踏み切った。

 ただ、25年の医療需要を見据えた病床数の議論は公表以前から続き、県済生会前橋病院を除く3病院は実際に病床を振り替えた。伊勢崎佐波医師会病院(伊勢崎市)は今年10月、急性期の52床を回復期に転換。「独立採算のため、公立・公的病院とは異なる」として公表対象となったことを疑問視しつつ、「病床転換は医療圏で議論、合意して実施した。厚労省の考えに沿った内容だ」との認識を示す。

 公立碓氷病院(安中市)も17年度に32床を切り替え、回復期を増やした。下仁田厚生病院(下仁田町)は今年10月に10床削減し、40床の介護医療院を新設。それぞれ地域の需要の変化を見据え、病床の転換に動いている。

 一方、前橋医療圏は他の医療圏から急性期患者の「流入」が最も顕著な状況だ。現在の議論は25年を見据えるが、40年ごろには高齢者人口が最多になると見込まれる。疾病構造の変化が予想され、継続的な検討も必要になりそうだ。

 4病院は来年9月の期限までに結論を出す。県医務課は「4病院だけの問題とせず、医療圏全体でしっかり検討することが必要」とし、丁寧な議論が重ねられる環境を整えていく構えだ。(山田祐二)


◎機能分化ですみ分け 奈良南部

 再編・統合について厚生労働省は、リストが「必ずしも医療機関の統廃合を決めるものではない」と説明。規模縮小による効率化や病院機能の連携・分化も、病院側が取り得る選択肢として提案する。

 奈良県南部の例では、2016年度に急性期の公立3病院(計572床)を再編した。急性・回復期の南奈良総合医療センター(232床)と回復・慢性期の2病院(90、96床)に機能を分担させ、一つの医療企業団が運営する。

 再編後は病床稼働率が2割余り上昇し、医師数も増加。救急搬送の受け入れ件数は倍増した。同センターの担当者は「機能の分化ですみ分けができた。地域医療の充実は図られている」としている。


【公表された県内4病院】

・県済生会前橋(前橋市)

・伊勢崎佐波医師会(伊勢崎市)

・公立碓氷(安中市)

・下仁田厚生(下仁田町)