[論説] 公的病院の再編 実態即し丁寧な議論を

2019.10.28


[論説] 公的病院の再編 実態即し丁寧な議論を
2019.10.25 日本農業新聞社 



 地域医療の中核的存在である公立・公的病院は、命や健康を支える最重要のインフラだ。
住民が置き去りの拙速で乱暴な再編統合論議は許されない。  


厚生労働省は、全国の公立病院と赤十字や済生会といった公的病院のうち、再編統合の議論が必要と位置付けた424医療機関の実名を公表。

全国に105あるJA厚生連病院も3割に当たる31病院が対象となった。  

同省が、救急やがん、脳卒中などで診療実績が少なく、近隣に当該病院の機能を代替できる病院があることなどを勘案して公表した。

424医療機関の内訳は公立が257、公的が167。見直しの権限は自治体側にあり、強制力はない。

再編の手法も統廃合に限定しない。
病床数の削減や機能の集約化なども含め、地域の実情を踏まえて検討することになる。

 だが、来年9月までに具体的な結論を出すこととなっており、残された時間は少ない。

このため、農村部からは「身近な病院がなくなる」「地域の事情を考えていない」など不安や不満を訴える声が上がっている。

 北海道帯広市で開かれた日本農村医学会学術総会でも、厚生連病院関係者から今回の公表や議論の在り方に疑問を投げ掛ける意見が出された。

ある関係者は、調査が2017年6月の診療実績に基づき行われたことについて「6月は農繁期で農村部なら患者が減る時期。

恣意(しい)的と感じる」と指摘する。 その上で、各病院は医師不足に悩んでいるとして、「病院名の公表でさらに医師確保が困難になるのでは」と懸念する。  

全国知事会でも「リスト返上」を求める意見が出た。
全国市長会からも批判が相次いでいる。JA全厚連は、

「議論は必要」としながら「一部データを基準に再編・統合ありきにしてはいけない」とくぎを刺し、地域住民の意見に耳を傾けた丁寧な議論を求める。  


今回の公表の背景には、医療費を抑制したい国の考えがあるとみられる。
17年度の国民医療費は43兆710億円だったが、団塊世代が75歳以上となる25年には56兆円にまで増えるとの見込みもあるためだ。  


とはいえ、17年6月という一時期の単純なデータで機械的に評価し、再編を促す議論の進め方は乱暴過ぎる。

公立・公的病院は地方で医療を提供する重要な役割を担ってきた。
特に民間病院が少ない離島などで、病院がなくなったり、機能が一部失われたりした場合、そこに住み続けられなくなる恐れもある。

 国はこれまでも、医療費が膨らむ要因として病床数の削減を促してきた。
だが、病床数が議論の根底なのか。医師不足の問題はどう考えるのか。命と健康に関わる問題だけに効率化だけで議論すべきではない。  

公立・公的病院なくして地方創生は成り立たない。地域医療を担っている現実をもっと認識し、住民本位の医療供給体制について議論すべきだ