医師偏在地域に悲鳴 好条件は東京に集中 匝瑳市民病院「綱渡り状態」

2019.09.06

医師偏在地域に悲鳴 好条件は東京に集中 匝瑳市民病院「綱渡り状態」
2019.09.04 千葉日報


 政府が掲げる「人生100年時代」を見据え、増加する医療ニーズへの対応が課題となっている。全国どこにいても安心して医療が受けられる体制整備が不可欠だが、地方で医師が足りない偏在問題は深刻だ。首都圏に位置する本県でも看護師などを含めた医療従事者が不足している地域があり、医療現場からは「このままでは体制を維持できない」との訴えも出ている。


 厚生労働省によると、全国の医師の総数は2016年末時点で約31万9千人と、増え続けている。ただ人口や診療需要を反映させ、数値が低いほど医師が不足している状況を示す「医師偏在指標」では、最も医師が充足している東京都と、最も不足している岩手県の間に2倍近い差があり格差が浮き彫りになった。


 東京から70キロ圏の距離にある県北東部の匝瑳市。複数の市区町村をまとめた「2次医療圏」の医師偏在指標を見ると、匝瑳市を含む「香取海匝」は全国平均を大きく下回り、医師不足が顕著だ。


 「都心の方が最新の設備も使えるなど条件がいいから、医師は東京に近い場所に集まってしまう」。国保匝瑳市民病院の菊地紀夫院長が嘆く。00年に24人いた常勤医は減り続け、今年は9人に。宿直や訪問診療を含む全ての業務を常勤医だけでこなすのは難しく、大学病院から応援をもらい乗り切っている「綱渡り状態」(菊地院長)だという。医師だけでなく看護師など他の医療従事者も足りておらず、救急車の受け入れ要請があっても夜間はほとんど断っている。


 厚労省は、医師が少ない地域での勤務経験を一部病院の管理者になる際の評価項目としたり、地元勤務を義務付ける大学医学部の地域枠を増員したりするなどの対策を打ち出している。ただ菊地院長は「即効性はない。へき地医療を一定期間義務付ける制度をつくるしかない」と訴える。


 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、65年には65歳以上の割合が38・4%に。超高齢化社会を迎えるのは確実で、自民党は7月の参院選の公約に「人生100年時代にふさわしい社会保障制度の構築」を掲げ「医師偏在対策」を盛り込んだ。


 「公約に入ったのはよかったが、選挙戦で偏在問題はほとんど議論にならなかった」と菊地院長。「急激な高齢化が進む地方では関心の高い話。病院がないと地域社会は成り立たない。地域医療の実態を知り改善につなげてほしい」と訴えている。