経営悪化続く公立病院 支援に公金、自治体財政を圧迫

2019.08.19

経営悪化続く公立病院 支援に公金、自治体財政を圧迫 /東北・共通
2019.08.17 東京地方版/宮城 


 ◆みちのくワイド


 地域医療を担う公立病院の経営が年々、悪化している。医師不足が深刻な東北では、事業運営に必要な資金を確保できない「資金不足」に追い込まれた公立病院が、この5年間で倍増。経営支援のために公金を投入せざるを得ない自治体の財政を圧迫し、大きな重荷となっている。


 ■18億円債務超過

 「18億4600万円の債務超過がある。独立行政法人化の前提として、最低限、これを解消する必要がある」

 今年6月、宮城県登米市議会教育民生委員会で、市の病院事業担当者が答弁した。

 登米市は、赤字続きの病院事業の経営改善策の一つとして、独立行政法人化を検討している。しかし、その実現には、債務超過を穴埋めする巨額資金の調達という高いハードルがある。

 登米市の病院事業は2017年度決算で約7億5200万円の資金不足に陥り、事業収益に対する割合である資金不足比率は12・7%となった。18年度決算では、さらに悪化する見通しだ。

 病院事業は一般会計とは別の公営企業会計で運営されている。資金不足とは、保有する現金などの資産を、借り入れなどの負債が上回る状態。民間企業で言えば、運転資金が回らない危機的な状況だ。資金不足比率が10%以上になると、地方債の発行は国、知事の許可が必要となる。

 登米市に限らず、全国の公立病院の約6割が赤字、約1割が資金不足だ。このため、一般会計などから総額約6900億円の支援を受けている。登米市も病院事業に一般会計から約20億7500万円を繰り入れている。

 赤字経営の主な要因は医師不足だ。医師1人で1億円から2億円程度の収入をもたらすとされるが、都市部への偏在が進み、地方の公立病院は医師確保に苦労している。登米市も、この5年間に常勤医師が5人減った。


 ■医師集めに奔走

 経営破綻(はたん)状態だった公立病院の再生事例が九州にある。福岡県田川市立病院は、03年度からの6年間で常勤医師が15人減員。08、09年度と資金不足に陥り、資金不足比率は4%を超えた。

 10年度から9年間、病院事業管理者を務めたNPO法人「高齢者健康コミュニティ」会長の斎藤貴生氏(81)は、就任後、福岡県や隣県の大学を延べ683回訪れて医師派遣を要請。常勤医師47人、非常勤医師74人を招聘(しょうへい)した。就任の翌年度で資金不足を脱し、14年度以降4年続けて経常収支黒字を達成した。

 佐賀、大分県の病院でも再生に取り組んだ斎藤氏は、「医師招聘には、医師が必要な地域医療の実情を大学教授に訴えて理解してもらうことが大切。何度も足を運ぶ熱意も必要だ」と話す。

 各地の下水道や病院事業の経営改善支援にあたり、総務省地方公営企業等経営アドバイザーを務める遠藤誠作氏(69)は「病院事務局には、診療報酬など専門的知識を備えた人材が欠かせないが、役所の数年おきの異動で替わってしまう」と人事の問題点を指摘する。

 福島県三春町の行財政改革室長として、病院再建に携わった経験がある。「公務員には『公共サービスは赤字が出ても仕方がない。税金で穴埋めするのが当然』という思い込みがある。民間の企業経営の感覚が必要だ」と話す。(角津栄一)