地域密着の医療、独法で再出発

2019.05.14


(会いたい!)「大月市立中央病院」初代理事長・佐藤二郎さん 65歳 /山梨県
2019.05.12 東京地方版/山梨 



 ■地域密着の医療、独法で再出発


 大月市立中央病院が県内初の非公務員型の地方独立行政法人として再スタートを切って1カ月余り。初代理事長に就任した。「感じる責任感の重さが全然違う」と気を引き締めている。

 東京女子医大付属八千代医療センター(千葉県)で麻酔科教授を務め、中央診療部長などを歴任。2017年1月に副院長として大月市立中央病院に移り、その年の9月に院長に就いた。外部識者らによる病院運営委員会が「経営形態の見直し」に関して提言したのはちょうどその頃だ。

 15診療科、197床を有し、へき地医療や救急医療、災害拠点病院の役割を担う地域の中核病院。だが、地方の医師不足が深刻化する中で常勤医不足が常態化し、患者数の減少や病床稼働率の低下など赤字要因が重なって、厳しい経営状態が長年続いていた。

 赤字の穴埋めのために市が16年度までの10年間に一般会計から支出したのは約34億円。17年度も3億7千万円に上っていた。


 ■非公務員へ移行

 提言は、指定管理者の導入などによる経営改善や経営形態の見直しを求めていた。これを受けて市は経営健全化を図るためとして、公設公営の経営形態を保ちつつ改革が断行できるとして非公務員型の地方独立行政法人への移行を決めた。

 「市立病院が無くなる」といった市民の不安。公務員の身分を失うことへの職員のとまどい。市内10地区で開かれる市長と市民との対話集会にも17年度は9回、18年度は8回同行して、「今まで通り地域に密着した医療を続ける」と伝えた。

 地方独立行政法人への移行の一番の利点を「経営の自由度が増すこと」と説明する。医師や職員らを雇用する場合、従来は定数条例などに縛られて柔軟な採用が難しかった。

 「明日、人が欲しいとなれば、明日からでも雇うことができる。働く条件、特に給料を自由に決められることで、一番足りない医師の確保がしやすい」


 ■職員の意識変化

 業務の委託や契約も役所の単年度会計に縛られず、複数年度で購入と保守管理をセットにした契約を交渉するといったことが可能になった。

 職員の意識にも少しずつ変化が出てきた。使っていない場所の照明をこまめに消そうといった節約の提言。市内の事業所に自主的に出向き、脳ドックなどの検診をPRする医師。「小さいことからですが、前向きな取り組みが生まれている」

 その流れをさらに大きくするため、「高齢者が多くて人口減少も進む大月で求められる基本的な医療と介護の需要に応え、福祉全体の見守りを展開できる病院をめざしたい」。

 茨城県生まれ。代々続く医者の家系で4代目。学生だった千葉大学医学部時代は山岳部に所属するなど山に親しみ、ヒマラヤに挑戦したこともある。

 「医者として何かできるのじゃないか、と感じるとじっとしてられない性格」と言う。

 東日本大震災後は宮城県気仙沼市の病院などへ休日、ボランティアに通った。ネパールなどで活動する国際的なボランティア医療チームにも参加してきた。回復する患者の姿を見ていると、ただうれしいと思うだけでなく、自分が患者に癒やされるように感じるという。

 「もう一回生まれ変われたら、また医者になりたい」(小渕明洋)






朝日新聞社