国公立病院「求むネット寄付」 細る資金、不採算の小児医療苦心

2019.05.07


国公立病院「求むネット寄付」 細る資金、不採算の小児医療苦心
2019.04.30 



 税金で支援されているはずの「国公立」病院が、インターネット上で寄付を募る「クラウドファンディング」(CF)に資金を頼る例が増え始めている。背景には、国や自治体の財政難に加え、採算が取りにくい分野にも取り組まざるをえない「公」の病院としての役割がある。


 ■無菌室やドクターカーに

 「無菌室の不足は深刻な問題だった」。国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)で主に小児がんの治療に携わる松本公一医師は言う。

 2018年8月、同センターに無菌室が二つ増え、状況が改善された。

 無菌室は白血病などを発症した子どもたちに、治療を行う際などに使われている。感染症を防ぐためで、同センターでは年間30~40人が対象となる。これまで無菌室は二つだけで、「全然足りない状態」(松本さん)だった。

 無菌室の新設にはCFで集まった3100万円を使った。松本さんは「国や自治体から手厚い支援を受けていると思われがちだが、そうではない」と打ち明ける。

 同センターは「国立研究開発法人」という独立行政法人。大きくは研究部門と病院部門に分かれている。研究部門の設備整備には国などから補助金などが出る一方、病院部門は他の民間病院と同様、主に診療収入で賄われる。「診療による収益で施設整備できればいいが、利益が十分ではなかった」(松本さん)という。

 こうした現状からCFを試みることにした。「無菌室が欲しい」と訴える子どもの動画を募集画面に載せるなどし、4日間で1500万円が、最終的に約2カ月で約1900人から3100万円ほどが集まった。

 長野県立こども病院(同県安曇野市)もCFを使って、症状が重い患者を搬送する「ドクターカー」を買い替えた。先代のドクターカーは2006年に使い始めたが、走行距離は40万キロに。原田順和・名誉院長によると「車体を粘着テープで補修する有り様だった」という。

 同病院も10年に地方独立行政法人に。職員定員の弾力化などメリットがあった一方、独立採算が求められ、独法化前に多いときで年約30億円あった県からの支援(負担金)が17億~18億円程度に減った。原田さんは「地元の病院の役割を知ってもらえる機会にもなる」としてCFに踏み切った。約2カ月で目標の1500万円を大きく上回る2500万円超が集まった。

 名古屋大医学部付属病院(名古屋市昭和区)も3月、ドクターカーや小児用医療器具の購入費などをCFで募り始めた。医療機関のCFなどを企画する「READYFOR」(東京都)の米良はるかCEOは「現場の医師が必要だと思いながら、資金などの都合で十分に設置されていない設備などもある。CFを通して現場が抱える課題への共感が広がればいい」と期待する。


 ■赤字でも閉鎖できず

 CFに頼る背景には、公の病院ならではの特性もある。厚生労働省によると、2016年度の病院の診療による利益率は国立病院でマイナス1・9%、公立病院はマイナス13・7%という赤字。民間病院などは0・1%の黒字だった。

 診療報酬を議論する中央社会保険医療協議会の元委員は「民間は採算が取れないとその診療科を閉鎖する方法があるが、公の病院では難しい。特に小児医療は不採算になりがちだ」と指摘する。厚労省の調査では、主に子どもを対象にした病院に限るとマイナス12・8%という赤字だ。


 ■<視点>役割に見合う態勢か

 「不採算部門の診療」や「へき地での医療の提供」など、「国公立」を掲げる医療機関は国や自治体から公的な役割を与えられている。その役割を果たすために必要な施設や設備の整備を医療関係者が社会に訴え、短い期間で多額の寄付が集まる――。国や自治体の財源に限りがある中で、医療機関の役割に広く住民の理解を得つつ、一定の期間で迅速に資金を集めるには有効な手段だ。

 ただ、寄付だと一時的なものになりがちで、安定した資金の確保は難しい。また、特定の診療科に寄付が偏る可能性もある。

 民間の医療機関が二の足を踏む医療の提供を国や自治体から求められているのに、役割を果たすための費用を自分たちで集めろというのは「あるべき姿」なのか。役割に見合った医療を提供できる態勢になっているのか、考える機会にしたい。(有近隆史)