特集・医療福祉建築(2) ■わが社の病院プロジェクト

2019.05.22

特集・医療福祉建築(2)
 2019.05.17 建設通信新聞


■わが社の病院プロジェクト

 ことしも本特集発行に合わせ、各設計事務所に進行中のプロジェクトについて寄稿してもらった。少子高齢化やIoT、AIによる医療技術の高度化など医療福祉施設を取り巻く状況は、めまぐるしく変化している。設計者は、このような状況に柔軟に対応しながら、運営の効率化や医療関係者の執務環境の整備にも取り組むことが求められている。各プロジェクトは、地域に開かれた医療拠点として、急性期医療をはじめ高度医療の提供や介護、リハビリテーションまで幅広いサービスを提供することが期待される。今後、ますます多様化する医療福祉建築について、14社の取り組みを紹介する。   

【東京女子医科大学東医療センター/梓設計】

 東京女子医科大学東医療センターは、85年におよぶ歴史の中で、「至誠と愛」の理念に基づき、区東北部保健医療圏の基幹病院として区民及び周辺の方々の生命と健康を守るために、良質で安全な患者中心の医療を提供してきた。移転先となる新病院の建設地は、足立区の日暮里・舎人ライナー江北駅を中心とした「江北エリアデザイン」の地域内に位置している。江北エリアが目指す「健康」をテーマとしたまちづくりを実現する中核施設として、地域医療と大学病院としての高度医療に加え、地域に開かれ、まちと繋がる「開かれた大学病院」の実現を目指した。

 建物は病院・看護専門学校・寮の機能を有しており、病院機能を主とした「病院棟」と、看護専門学校・研修医寮・看護師寮を主とした「学校・寮棟」で構成している。両建物は渡り廊下で接続し、一部機能を統合することで施設共有を可能とし、スペースの効率化を図っている。また、浸水被害が想定される地域であり、1階レベルのマウンドアップや防水区画の形成、重要機能を上部階に配置する等の水害対応を実施し、地域災害拠点中核病院として不断の医療提供できる環境を整備した。(1)学校法人東京女子医科大学(2)東京都足立区(3)SRC一部S造(免震)地下1階地上10階建て延べ6万0391〓(4)450床(5)大林組(6)2021年7月 

【村上総合病院/石本建築事務所】

 村上総合病院は、新潟県厚生農業協同組合連合会が運営する新潟県北部の基幹病院として高度医療を提供する病院である。

 新病院でさらに充実される機能として、ヘリポートの設置、患者さんの入退院を一連にサポートする地域連携支援部、健診センターの充実、災害拠点病院としての機能充実がある。

 また、患者さんの高齢化に対応するため、病棟では見守りのしやすさと看護動線の短縮を目指し、連続したスタッフカウンターから病室が見渡せるつくりとしている。食堂・デイルームは、分散配置して院内デイ、面会スペース、認知症の患者さんの見守りスペースなど多様な活用ができることを意図している。

 新病院は現在の場所から、駅の反対側へと移転する。村上市の「村上駅周辺まちづくりプラン」により、まちづくりの大きな役割を担うことから、村上駅前の新たなランドマークとなるべく村上市の特色ある町屋の雰囲気を取り入れたデザインとしている。(1)新潟県厚生農業協同組合連合会(2)新潟県村上市(3)RC一部S造5階建て延べ2万2708〓(4)263床(5)福田組(6)2020年10月 

【仙台徳洲会病院/伊藤喜三郎建築研究所】

 仙台徳洲会病院は30年以上にわたり地域に根差した医療を提供してきたが、建物の老朽化対応と医療機能高度化の実現を目指した移転新築計画である。

 「生命だけは平等だ」の理念のもと、質が高く安全・安心で迅速に急性期医療が実現できるように、高度な医療機能を充実させるとともに、明るく快適な空間、分かりやすい動線計画や効率的な部門配置に配慮した。

 1階には「杜の木漏れ日」を意識した3層吹き抜けのウェルカムホールとホスピタルストリートなどを配置し、ウェイファインディングを利用した分かりやすい外来を計画した。

 4階-7階の病棟にはセル看護やパートナーシップナーシングなど、さまざまな看護体制にフレキシブルに対応できるチームステーションを計画した。ベッドサイドには患者のそばで仕事のできるナースカートスペースを設置することにより、安全・安心な病室を可能とした。

 今後も末永く、患者や家族だけでなくスタッフにも愛される病院づくりを目指した。(1)医療法人徳洲会(2)仙台市(3)RC一部S造9階建て延べ約3万4000〓(4)315床(5)熊谷組(6)2021年10月 

【市立秋田総合病院/久米設計】

 秋田市の地域中核医療を担う市立秋田総合病院の現地建替計画である。秋田市は全国でも際立って高齢化が進んでおり、新病院においては高齢患者にも利用しやすく、安全で分かりやすい病院計画が求められた。建築は病棟や診療機能を中心とする医療棟と、エントランス共用部や職員部門を集約した医療支援棟の分棟構成とし、患者・職員の動線の合理化を図っている。

 病棟は1フロア1看護単位の計画であり、1看護単位が60床の規模となるが、東西で30床ずつの看護ユニットとしても運用可能なスタッフステーションを計画している。

 また、各フロアの4つのコーナーに看護拠点(ナースコーナー)を配置することにより、より病室の近くできめ細やかな看護対応が可能となる平面計画としている。

 診療フロア全体として、コンパクトな平面計画となっており、バリアフリーへの配慮が行き届いた、誰にでも使いやすい新病院の実現を目指している。(1)地方独立行政法人市立秋田総合病院(2)秋田市(3)RC・SRC造13階建て延べ3万0440〓(4)396床(5)(6)未定 

【国立循環器病研究センター/佐藤総合計画】

 循環器疾患の制圧を旗印に掲げるナショナルセンターのデザインビルド方式による移転整備計画である。鉄道操車場跡地に、約13万〓もの施設を病院と研究開発基盤センター、研究所などで一体的に整備し、臨床志向の研究・医療イノベーションを加速させることを念頭に設計を進めた。国際的な医療クラスターの整備、地域医療機関との連携も踏まえ、敷地周辺の緑化などの環境配慮も積極的に行った。

 施設全体は情報発信・アメニティー、病院、オープンイノベーションセンター、研究開発基盤センター、研究所の各ゾーンが連続的に配置される。エントランスホールや病院と研究所の接続部などに開放的な空間を挿入して分節化、施設の視覚的な長大さを軽減した。また関連部門は集約配置して上下動線も考慮、部門間の連携がスムーズに進行するようにしている。

 特に病院においては、各部門の外来をJR岸辺駅から直結する2階にブロックごとに集約、外来患者に分かりやすい、患者とスタッフの動線を完全分離した明快な配置計画を行った。(基本設計、実施設計監修、工事監理:佐藤総合計画、実施設計:竹中工務店、日本設計)(1)国立研究開発法人国立循環器病研究センター(2)大阪府吹田市(3)RC一部S造(免震構造)地下2階地上10階建て延べ12万9881.84〓(4)550床(5)竹中工務店(6)2019年3月 

【横浜鶴見リハビリテーション病院/大建設計】

 横浜市の旧鶴見工業高校の跡地に対し「福祉施設等の充実」「防災性の向上」「にぎわいの向上」という地域街づくりの観点からの活用を課題に行われた課題解決型公募により選定された事業で、同跡地に先に計画された看護学校や特別養護老人ホームとの連携も視野に入れ、同市で不足している回復期病床があるリハビリテーション病院として提案を行った。

 敷地南側の前面道路から10mセットバックした位置への配置、道路側の歩道状整備による歩行者の安全性の確保や豊かな緑地などによる周辺環境の向上を図っている。また、備蓄倉庫やマンホールトイレの設置による地域の防災対策を行っている。

 施設はバリアフリー法の容積緩和により法定容積率を超える床面積を確保し、1階は外来・医事課・検査部門・薬剤部門、2-4階は各階を回復期リハ病棟38床と療養病棟38床、5階はリハビリテーション室・厨房・会議室・管理諸室とした運用しやすい構成としている。法人の「愛し愛される病院」の理念の基、地域に根差し最適な医療を提供する病院を目指している。(1)医療法人社団協友会(2)横浜市鶴見区(3)RC造5階建て延べ8538.55〓(4)228床(5)増岡組(6)2019年3月 

【門真介護医療院/東畑建築事務所】

 本施設は介護医療院の新築計画である。介護医療院とは「住まいと生活を医療が支える新たなモデル」として2018年4月に創設された介護保険施設である。

 療養階をL型配置とすることで南西方向に開けた眺望を生かした建物形状が外観上の特徴である。

 階構成は、1階は診察室、検査室などの診療機能及びデイケアと事務室、厨房等の管理部門をまとめ2階はショートステイ、3-7階はユニット型の療養階とし1フロア当たり2ユニットの構成としている。

 各ユニットは療養室10室と共同生活室を一体的に構成することで少人数の家庭的な雰囲気の中できめ細やかなケアを目指している。

 サービスステーションを中心とし、その両側にユニットを据えることで見守りがしやすくサービス動線が短い平面計画となっている。

 8階には眺望を生かしたリハビリ室と大浴場を配置することで、入所者の生活に潤いをもたらしている。(1)社会医療法人弘道会(2)大阪府門真市(3)RC造8階建て延べ約8000〓(5)100床+ショートステイ20床(6)未定(7)2021年3月