医師偏在 地域差鮮明に 国、重点対策へ新指標 京都府は「多数」も「丹後」は「少数区域」

2019.02.20

 医師偏在 地域差鮮明に 国、重点対策へ新指標 京都府は「多数」も「丹後」は「少数区域」
2019.02.19   


 医師が都市部に集中する偏在問題で、厚生労働省は18日、宮城を除く東北各県など16県が、人口や診療需要に対して適正な医師数を確保できていない「医師少数県」となっていることを明らかにした。医師の総数は31万9千人と過去最高を更新している一方、都市部と地方の格差が鮮明となった。同省は、卒業後の一定期間地元で働く大学医学部の「地域枠」を重点配分するなどして、2036年度までに問題を解消したい考えだ。


 厚労省は今回、医師の充足状況を判断する目安として使われてきた「人口10万人当たりの医師数」に代わり、より実態に即した「医師偏在指標」を策定した。

 新たな指標をベースに都道府県や地域別の充足状況を数値化し、医師が十分充足されている上位16都府県を「医師多数都府県」、下位16県を少数県に位置付けた。最も医師が充足している東京は「329・0」で、最も不足している岩手は「169・3」だった。京都は「314・9」で2位、滋賀は「243・5」で16位だった。

 さらに都道府県内の複数の市区町村がまとめて指定される「2次医療圏」に関しても、全国335カ所のうち、上位の3分の1の112カ所を「多数区域」、下位の3分の1の112カ所を「少数区域」とした。

 2次医療圏で最も充足しているのは東京都の千代田区などで構成される「区中央部」(759・7)。最も不足しているのは秋田県の北秋田市などで構成される「北秋田」(69・6)で、全国平均は都道府県、2次医療圏ともに「238・3」だった。京都は宮津・京丹後市など2市2町からなる「丹後」(135・6)、滋賀は甲賀・湖南両市で構成される「甲賀」(136・1)が少数区域となった。

 新指標は、住民の年齢や性別から導き出される受診率、医師の年齢などから推定される労働量、患者の流出入状況などのデータを基に算出。医師の供給状況を反映させるため、今後3年ごとに見直す。

 厚労省は、36年時点での各都道府県で必要となる医師数も推計し、確保が進んだ場合でも12道県で計約5千人の不足が生じるとしている。ただ、東京などでは多くの余剰人員が出ることが予想され、不足地域に配分する施策が求められている。


切り札「地域枠」は機能不全 問われる実効性


 厚生労働省は18日、医師不足が深刻な地域を新たな指標に基づき発表した。問題は医師の偏在を今後いかに解消していくかだ。国はこれまで効果的な対策を打ち出せておらず、地方からは現状を嘆く声が上がる。識者は「小手先の対策ではなく、根本的な手だてをすぐに打たなければならない」と強調する。

 厚労省によると、全国で最も医師が足りないとされるのは、秋田県の「北秋田地域」。北秋田市と上小阿仁(かみこあに)村で、一つの2次医療圏に指定されている。

 「市だけでは、とても確保できない」。市の担当者はため息をついた。県北部に位置する北秋田地域は山間部にあり、限界集落も多い。過疎化が進み、65歳以上が約4割を占め、高齢化が急速に進んできた。

 医師確保は困難を極め、三つの医療機関を再編して2010年に北秋田市民病院が開設された。だが医師不足は続いたままで、市民病院以外の地域の診療所では、赴任した医師の短期間での退職が相次いだという。

 高齢化のため脳卒中や心疾患を発症する住民が多いが、症状の重い急性期の患者を受け入れる医療機関がなく、秋田市などに搬送するしかなく、1時間半以上かかることもある。担当者は「今後も医師確保は難しい。民間の医師派遣会社を利用する予算的な余裕はない」と漏らした。

 地方の医師不足の切り札として注目を集めたのが、大学の医学部生に対し、自治体が奨学金を貸与し、代わりに地域での一定期間の勤務を課す「地域枠」だ。しかし、18年度に制度を導入していた大学の3分の1で、2割を超える欠員がでていることが明らかになるなど、十分に機能しているとは言い難い。

 各自治体への医師の配置に一定のルールを定めるべきだとの声もあるが、厚労省幹部は「憲法が定める職業選択の自由もある。医師が根付くためには嫌々来てもらうのではなく、自分の意志で判断してもらう必要がある」と話す。

 国を頼らずに、独自の取り組みを始めた自治体も。人口10万人当たりの医師数が全国最少の埼玉県は13年に「県総合医局機構」を創設し、医師会や県主導で、医師の紹介・派遣に乗り出した。また、県内で働きながら先端医療に触れたり、スキルアップを図れたりする場として、17年に「地域医療教育センター」をオープンした。

 労働組合「全国医師ユニオン」の植山直人代表は「厚労省は偏在解消への効果的な対策を打ち出せておらず、早急な改革が迫られている」と指摘。「無理やり地方に配置するのではなく、家族も含めた生活環境をケアする必要がある。地方勤務が自身のキャリア形成に不利になるのではないかという不安を解消できる具体的な方策も国は示すべきだ」と訴えた。(共同)



京都新聞社