医師不足病院・時間外労働緩和案 背景に深刻な医師不足も 医師の偏在拡大懸念

2019.01.17

医師不足病院・時間外労働緩和案 背景に深刻な医師不足も 医師の偏在拡大懸念
2019.01.11 NHKニュース 



 医師の長時間労働の上限を例外で大幅に緩和する背景には、地域医療への影響を食い止めたいという考えがあります。

 山口県宇部市(うべ)にある山口大学医学部附属病院は、脳の血管が破れたり詰まったりする「脳卒中」の治療を行う拠点病院で、脳神経外科には、県内の全域から患者が搬送されてきます。

 この病院の石原秀行(いしはら・ひでゆき)医師は、「血管内治療」という高度な治療を手がける専門医です。

 カテーテルという細い管を脳の血管に入れて詰まりを取ったり、動脈りゅうを治療したりして、死亡や重い後遺症を防ぐ重要な治療ですが、担当する専門医は、石原さんを含めて2人しかいません。

 脳卒中は、発症して時間がたつほど脳のダメージが深刻になるため、患者が搬送されると即座に治療に当たる必要があります。

 先月、NHKが取材した日、石原さんは朝に入院患者を診察したあと、午後1時すぎからおよそ6時間に渡り、連続して4件の血管内治療などを行っていました。

 さらに、午後11時すぎには、下関市(しものせき)にある病院から緊急手術の要請が入り、急きょ、現地の病院に向かっていました。

 石原医師が手術を終えて帰宅したのは、次の日の午前5時で、その3時間後には、患者の診察のため、大学病院に出勤していました。

 石原医師は「長時間労働が当たり前になっていて、それをしないと患者の命は救えない。働き方改革といっても自分たちには関係ない話だと思ってしまう」と話していました。

 今、若い医師などが東京などの都市部に集中する医師の偏在が起きていて、山口県では20代と30代の医師が、この10年で22%も減少しています。

 地方の病院では、医師の長時間勤務によって地域の医療を支えているところもあり、厳しい上限規制を設けると患者に大きな影響が出るおそれがあります。

 しかし、現場の医師の負担は年々大きくなっていて、長時間労働が是正されなければ、医師の偏在は、ますます進むという懸念もあります。

 病院側は、例外を設けて終わりではなく、長時間労働の原因となっている医師の偏在を解消することが不可欠だと指摘します。

 山口大学大学院医学系研究科の鈴木倫保(すずき・みちやす)教授は、「働き方改革は、医師の配置や充足度と密接にリンクしてくる問題だ。この非常に大きな議論が隠れていることを、一度、立ち止まって整理する必要がある」と話していました。