地域医療守る市立病院とは*シンポで市長や市民が意見交換*病院側*内科医減で収益悪化

2019.01.28

地域医療守る市立病院とは*シンポで市長や市民が意見交換*病院側*内科医減で収益悪化
2019.01.23 北海道新聞


 【江別】江別市立病院シンポジウム「今後の江別市の地域医療を守るために市立病院は何をしていくか」(市主催)が21日夜、同病院で開かれ、市民129人が参加した。市立病院は内科医不足や、収支不足などの経営問題に直面しており、病院のあり方を市民と共に考える狙い。2部構成で、第1部は三好昇市長ら4氏が持論を述べ、第2部で来場者と意見交換した。(山本哲朗)

 シンポジウムでは、市立病院側が病院の状況や経営について説明した。

 17の診療科目がある市立病院は、市内6病院で最大。渓和会江別病院は13科目、江別谷藤病院は7科目あるが、産婦人科、小児科の両方があるのは市立病院だけで、救急医療も担う。

 一方、市立病院の医師数は大幅に減っている=表参照=。2016年4月は内科医27人を含め55人いたが、19年1月は内科医9人の計38人に落ち込んだ。来院患者の多くは内科系を受診している。「稼ぎ頭」の内科の医師不足は患者減を招き、収入は落ち込む。

 病院の収入にあたる「病院事業収益」は17年度決算で前年度比5・9%減の65億1966万円=グラフ参照=。入院患者が同1万156人減の8万213人、外来患者が同6242人減の16万4483人になったことが響いた。一方、支出にあたる「病院事業費用」では、救急医療や産科、小児科を維持する費用が大きいという。

 病院の財務状況は「単年度資金収支」に現れる。年間の損益から、減価償却など現金以外の要素を取り除いて資金の余裕度を見る額で、2013年度は1億5千万円の黒字だったが、17年度決算は5億6千万円の赤字となった。

 市立病院はここ数年、一般会計から14億円規模の繰入金を受けている。繰入金は返済の必要がないが、15年度はこの繰入金に加え、一般会計から7億5千万円を借り入れたことで、単年度資金収支は4億5千万円の黒字となった。

 繰入金、そして返す必要のある借入金と、市立病院は一般会計の支援なしには回らなくなっている。

*検討委の設置考える

 ■三好昇市長 市立病院は内科医減などで厳しい経営が続いている。市民に不安を抱かせ、おわびしたい。市立病院が救急、産婦人科、小児科など採算が取りにくい分野を提供していることを評価する声も多い。病院経営の在り方を検討してきたが、すぐに経営が好転するモデルはなく、簡単に答えは出ない。何より市民の健康を守る役割がある。今回のシンポを手始めに市民の意見を聞いていきたい。意見を経営に反映させるため、検討委員会設置など含めて考えたい。

*市民の健康守りたい

 ■富山光広・江別市立病院長 これからの10年、団塊世代が後期高齢者に突入し、病院・在宅ともに医療需要が高まって地域医療はかつてない局面に入る。救急受け入れは隣接する札幌も余裕があるかどうか。江別市立病院がどのような役割を担い、市民の健康を守るのか。市民との意見交換で方向性を探りたい。喫緊の課題である内科医確保は各方面にお願いしている。内科医以外の科目は少しずつ充実、手術対応も進んでいることを報告する。

*公立の性格も理解を

 ■江別市立病院経営健全化評価委員長 西沢寛俊氏(全日本病院協会常任理事)

 医師の世界にも働き方改革が求められ、従来以上に医師の数が必要になる。また公立病院は、黒字を追求する民間と異なり、市民が必要な医療を提供する役割がある。経営的に厳しいのは当然だ。経営の評価委員長として病院側には黒字化を要請しているが、公立病院の性格も理解する必要がある。

*「地域完結型」が重要

 ■江別市立病院経営健全化評価委員 樋口春美氏(北海道看護協会一般理事) これからの医療は病院で完治を目指すより、普段の生活で病気と共存する「地域完結型」が重要。時々病院に入院し、在宅に戻る。看護師の役割は大きい。市立病院には認定看護師などの資格を持つスペシャリストが11人もおり、約300床の病院としては充実している。市立病院は、こうした人材を核に高齢者医療を提供することになる。

*一般市民や開業医*医師がやめない組織に/地域に寄り添う医療を

 意見交換では、一般市民だけでなく現役の開業医からも発言があった。

 高齢の男性は「医師をどう確保すべきか市民には分からないが、市立を守るのか否か、皆で考えることに賛成。病院の良い面を宣伝するなど市民ができることを考えよう」と述べた。

 「周囲で亡くなる親族が増えた」という79歳女性は「市民の病院を守り、地域に寄り添う医療を。私や家族は家で死にたい。それを支えてほしい。往診を望む高齢者は多い」と話した。

 三番通沿いの開業医の男性は「医師がやめない組織にしてほしい。魅力的な指導医をそろえるべきだ。医師には医師のプライドがある。金ではなく、やりがいがあるなら懸命に働く」と指摘。また「市立病院は脳外科がないことで多くの救急を断っている」とし、脳外科開設を求めた。

 別の男性は「地域医療だけにお金を掛けてもいい訳ではない。福祉や子育ての施策も必要。漠然と地域医療を守るのでなく、市民の声を聞いて判断する態勢を作ってほしい」と述べた