フォローアップ 大月市「起債許可団体」に転落 公社負債肩代わりが重荷 施設整備、健全化どう両立

2018.11.29

◇フォローアップ 大月市「起債許可団体」に転落 公社負債肩代わりが重荷 施設整備、健全化どう両立
2018.11.22 山梨日日新聞 


 大月市の財政が悪化して地方債発行に知事の許可を必要とする「起債許可団体」に転落したことに対して、市民から「財政破綻した夕張市のようにならないか」と不安の声が上がっている。

市は悪化の理由として市土地開発公社の負債約22億円を肩代わりしたことなどを挙げ、2020年度決算で健全化するとの見通しを示す。

一方で、JR大月駅周辺への公共施設の集約など今後も多額の費用を伴うインフラ事業が予定されていて、市民生活に必要な事業の展開と財政健全化との両立が課題となる。

〈市川和貴〉


 「大月市が夕張市のようになってしまうのではないかと思っている人が大勢いる」「市民に負担を押し付けるのではなく、身を切る施策、覚悟はないのか」

 9月定例市議会の一般質問。市議からは財政状況に関する質問が相次いだ。
石井由己雄市長は「指数の改善を図るとともに市民から預かった大切な税金を最も有効に市民に還元できるよう計画的な行財政運営に努める」などと答弁し、理解を求めた。

 

◎赤字が拡大

 同市で問題となっているのは「実質公債費比率」。財政の健全度を示す指標で、18%以上になると地方債の発行に知事の許可が必要となる。同市は2017年度決算で18・3%に上昇し、県内唯一の「起債許可団体」になった。

 同市が悪化の理由として挙げるのが、14年度に解散した土地開発公社の負債21億9500万円の肩代わり。
高度経済成長期の1973年に設立された公社は公共事業計画用地の先行取得が主な役割だったが、バブル崩壊以降は公共事業の縮小や地価下落を背景に負債が拡大。2001年には公社が建設した住宅団地で欠陥が見つかり、補修のため赤字はさらに膨らんだ。

 市は「解散時期を先送りにするほど負担は重くなる」(市企画財政課)として解散を決定。国が利子の一部を負担する「第三セクター等改革推進債」(三セク債)を活用して返済することを決めた。市の実質公債費比率は三セク債の返済が始まった13年度から上昇を始め、大月東中の校舎整備が重なったことなどによってさらに悪化した。

 

◎市民も我慢

 17年度の返済金のうち三セク債は約1割を占める。同課は「市学校給食センター利用に関係する返済が終わるので、20年度には18%を下回る見込み」と説明する。

 一方、市は以前から学校統廃合など行政のスリム化を進めてきた。06年に策定した学校適正配置実施計画に基づいて、小中学校20校を7校に統合。同市猿橋町猿橋の会社員男性(33)は「市民も我慢しているのに財政が悪化している状況を思うと、先行きに希望を持てない。学校がなくなった地域には若い人も引っ越そうとは思わず、どんどん廃れていくのではないかと心配になる」と話す。

 市は昨年度、「立地適正化計画」を策定。大月駅周辺に駅前広場などを整備するほか、猿橋駅の周囲には子育て支援施設を新設する方針を示している。また、約10億円を見込む防災行政無線のデジタル化も控えている。石井市長は事業と財政健全化の両立について「市内の発展のためには、立地適正化計画は必要なプロジェクト。計画の着実な遂行によって市外から人を呼び込んで収入増につなげ、財政健全化に努めたい」と話している。


■山学大・片田興教授(財政学)に聞く

市民に説明し理解を

 実質公債費比率が18%を超えた大月市の財政の現状や県内の自治体の課題を、財政学に詳しい山梨学院大法学部の片田興教授に聞いた。

 -大月市の実質公債費比率が18%を超えた要因をどうみる。

 土地開発公社解散に伴う返済が直接の原因だが、市の実質公債費比率は公社解散の前から比較的高かった。大きな要因として考えられるのは三つ。市立中央病院の事業、大月と上野原両市でつくる東部地域広域水道企業団の上水道事業、市の下水道事業と簡易水道事業だ。いずれも市の繰り出し金がなければ事業は成り立たず、市の財政に重くのしかかっている。

 -病院と水道事業の改善策は。

 公立病院は人件費が一般の病院に比べると高い傾向にある。
ただ、市立中央病院は来年4月には地方独立行政法人に移行する予定で、市の財政負担も軽減されるのではないか。
一方で、水道事業の負担軽減は困難だ。大月市は山間部が多く、土地の高低差も大きい。標高の高いところに水を供給するには、平地と異なり大型のポンプなどの施設が必要となり、事業費も高くなってしまう。水道料金を値上げすれば、市民からの反発もあるだろう。

 -市が取り組むべきことは何か。

 市の財政状況を市民に分かりやすく説明して、理解してもらうことだ。水道料金で言えば、他市町村と比べて高い理由や事業を継続するためには応分の負担が必要になることを丁寧に説明する必要がある。水道の原価と供給の金額の差を情報公開してもいいと思う。

 -財政問題を抱えるのは大月市だけではない。

 高度経済成長期やバブル期などとは異なり、経済的に右肩上がりの時代ではない。人口減も進んでいて、これまでと同様の行政サービスを維持することは困難になりつつある。財政状況を公開するのはもちろん、市民に理解してもらう努力をすることが、どの自治体にとっても重要だ。財政問題をきっかけに、市民と共に街の将来を考えてほしい。


 かたた・こうさん 山梨学院大法学部教授。高知県出身。早稲田大大学院法学研究科・慶応大大学院商学研究科・立教大大学院経済学研究科修了、法政大大学院社会科学研究科博士後期課程退学。財政学、地方財政論が専門。甲府市。57歳。


ズーム

起債許可団体 

 地方債を発行するに当たり、国や都道府県の許可が必要な地方公共団体(自治体)。収入に対する負債返済の割合を示す「実質公債費比率」が18%を上回った場合に起債許可団体となる。25%以上では地方債の発行が制限される。起債許可団体になると、比率を低下させる「公債費負担適正化計画」の策定を前提に起債が認められる。


実質公債費比率が18%を超えた大月市。財政健全化への対応が求められている