[追う]鞍手汚職 前町長 暴走の果て 際立つ 業者との癒着

2018.11.12


[追う]鞍手汚職 前町長 暴走の果て 際立つ 業者との癒着
2018.10.28 西部朝刊 



 ◆役場で孤立 行政ゆがめる

 福岡県鞍手町を巡る官製談合・汚職事件では、前町長の徳島真次被告(59)(加重収賄罪などで起訴)が4度にわたって逮捕された。県警の捜査で際立ったのは、業者との「癒着」ぶり。トップダウン型の強引な手法で役場内で孤立する中、行政をゆがめていく構図が浮かび上がっている。(釈迦堂章太)

 ■自称「営業マン」

 「特別養護老人ホームをつくりたい。いい町有地はないか」。2014年春頃。徳島被告は役場の応接室に町職員を呼び出して聞いた。被告のそばにいたのは、社会福祉法人元理事長(46)。この約1年後、被告は町外の料亭で、元理事長と会社役員(61)から1000万円を受け取った疑いが持たれている(贈賄側は公訴時効が成立)。

 被告は鞍手高を卒業後、家業の酒販店を継いだ。コンビニ経営や不動産業などにも手を広げ、実業家として町では知られる存在になった。政治家も志し、35歳で町議に。13年1月の町長選で初当選を果たした。

 自らを「鞍手の営業マン」と称し、廃校をコスプレイベント会場として開放して人気を集めるなど手腕も見せた。ただ、トップダウン型の町政運営で、職員と意見が食い違うことも多かった。「(前)町長は役場内では孤立していた」と町関係者は振り返る。

 一方、元理事長らは、初当選した年の秋頃から被告に接近。接待を繰り返しながら関係を深めたとみられる。職員を通さず直接、町長室に出入りする姿も頻繁に目撃されていた。

 ■再選で強引さ加速

 15年7月に行われた下水道設計事業に関する3件の入札。被告はこれまでなかった最低制限価格(非公表)を特例で設けた。町幹部らが価格の漏えいを懸念し反対したところ、被告は「あなたたちは漏らすかもしれないが、私は漏らさない」と言い放ったという。

 だが、被告はこの3件の入札で最低制限価格を測量業者や設計業者に漏らしたとされ、うち1件では賄賂の授受もあったとして逮捕された。元理事長らは設計業者から依頼を受け、価格の漏えいを被告に働きかけるなどしたとされる。

 強引な手法は、昨年1月の町長選で無投票再選して加速する。特段経営に問題はなかった地方独立行政法人「くらて病院」に対し、人事権がないにもかかわらず、「経営のプロだ」として元理事長らを法人理事にすることなどを求めた。病院への人事介入は約半年間にわたったが、猛反発を受け要求は通らなかった。

 被告は、はばかることなく元理事長らを周囲にこう紹介していた。「私の右腕と左腕。全幅の信頼を置いている」

 ■町への謝罪なし

 有識者らでつくる日本創成会議が14年に「消滅可能性都市」として県内ワーストに挙げた同町。被告は人口減少対策に取り組む姿勢も見せていた。しかし、自身が住んでいたのは福岡市中央区薬院のマンション。自宅と役場間は、町職員が運転する公用車で行き来し、町議会で指摘される今年3月まで続いた。「公用車の私的利用」などの批判を受けても、町幹部らには「すべては鞍手のためにやっていること。一点の曇りもない」と語っていた。

 その後、官製談合防止法違反や受託収賄などの容疑で逮捕された被告。県警の調べに、「間違いありません」といずれの容疑も認めている。ただ、町への謝罪は今のところないという