特集・帯広厚生病院

2018.11.08

特集・帯広厚生病院
2018.11.05 建設通信新聞


【11月5日グランドオープン/地域に信頼され選ばれる病院”を実現/十勝・道東医療の核、総合病院誕生/完結型医療の発展と最先端医療提供/設計・監理=久米設計/施工=大成・伊藤・宮坂・萩原・川田・市川建設工事共同企業体】

 北海道帯広市中心部に位置する北海道厚生農業協同組合連合会帯広厚生病院が、地域医療に貢献する高度急性期病院として5日に開院する。高品質な医療、医療人の育成、環境への配慮を柱に据え、特に手術室や放射線治療装置の最新化、病棟セキュリティーの強化など高度な専門性と総合性を兼ね備えた高品質な医療・優しい医療を提供する施設が誕生した。今後は、帯広市のみならず十勝・道東地区の利用が進み、さらなる地域医療の充実が期待される。設計・監理は久米設計、施工を大成・伊藤・宮坂・萩原・川田・市川JVが担当した。高い技術力と入念な工程管理で建物を造り込み、高品質に仕上げて関係者の期待に応えた。【北海道厚生農業協同組合連合会代表理事会長/西 一司/生きがいある地域づくり】

 このたびJA北海道厚生連帯広厚生病院は50年以上親しまれた土地から帯広市西13条南9丁目に移転し、11月5日にグランドオープンいたします。

 2016年3月着工以来、新たな一歩を踏み出すことができますことは、これまで新築事業に関わっていただいた関係各位の多大なるご尽力・ご支援の賜物であり、改めまして心より御礼申し上げます。

 当院は十勝圏内の基幹病院として、昭和20年に開設以降、十勝管内3次医療圏の地方・地域センター病院をはじめ救命救急センター、災害拠点病院、地域がん診療連携拠点病院等の指定を受けており、十勝における完結医療への貢献と専門性の高い医療の提供に努めてまいりました。

 しかしながら、既存施設の老朽化に加えて、内部構造が複雑化・非効率化してきたことから、一層の地域医療に貢献するために、全面的な施設整備を実施することといたしました。

 新病院の特徴として、施設面では、BCPにも対応すべくエネルギー棟を設けたこと。病室個室化率を約50%、駐車台数を1.4倍の887台に増加したこと。医療機能面では、患者支援センター、緩和ケア病棟の設置やPET装置、ハイブリッド手術室や最新鋭の放射線治療装置の新規導入、職員や十勝圏全体の医療レベルを向上させるために、人体模型やシミュレーターを配備したスキルラボの設置などがあげられます。

 今後とも、公的医療機関としての責務の重大さを認識し、組合員ならびに地域住民の皆様の生命と健康を守り、生きがいのある地域づくりに貢献することを目標に「地域の皆様方から最も信頼され選ばれる病院」を目指して、役職員一同さらなる努力を続けてまいる所存でありますので、今後ともご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。 

【帯広厚生病院病院長/菊池 英明/さらなる信頼を目指して】

 当院は1945(昭和20)年に開設され、55(昭和30)年には前病院敷地に移転し、この地で増改築を繰り返して来ましたが、この間一貫して十勝住民の方々の健康を支え“信頼され選ばれる病院”を目指して地域に必要とされる診療機能の充実を図って参りました。

 2018年11月5日にオープンする新病院は「高品質な医療」「医療人の育成」「環境への配慮」を3本の柱に据えて設計、機器整備ならびに診療手順の見直しを行いました。

 高度急性期病院として広く道東の皆さまの期待にお応えできる病院として、先進的な医療、安全な医療、快適な療養環境を提供するため検討を重ねた結果、種々の検査機器の更新や増設、手術室や放射線治療装置の最新化、病床の個室化、病棟セキュリティーの強化、スタッフ研修のための施設(スキルラボ)開設、来院される方々のさまざまな相談に1カ所で対応するワンストップ相談窓口の創設などを行っております。

 新病院では 従来以上に高度な専門性とチームとしての総合性を 兼ね備えた高品質な医療、優しい医療を提供できるよう取り組んで参ります。 

【設計コンセプト/使い勝手の良い空間構成/十勝帯広の大地イメージ】

 新しく生まれ変わる帯広厚生病院は、東北海道の完結型医療の発展と最先端医療提供のため、さらに災害発生時にも 医療がスムーズに継続できるLCB (Life Continuity Building:事業継続計画)病院として機能強化を図りました。免震構造の採用や屋上ヘリポート設置、エネルギーの多重化、井水利用など 常時利用の機能性向上と環境配慮を行い、省エネルギーに配慮した計画としています。

 「外来棟」「病棟・診療棟」「エネルギー棟」の3つのゾーンを東から西に配置させ、明快な機能分離、動線分離を行っています。各棟に最適な柱間隔を採用することで、使い勝手の良い空間構成を実現しました。また南北に沿って設けた主軸動線(ホスピタルモール)に面し、関連部門が連携するわかりやいゾーニング計画としています。

 病棟、外来ともに利用する中央診療部は、自力歩行が主体となる外来患者からは水平につながり、自力歩行が困難な病棟からは垂直移動でつながる計画としています。また救命救急センターから、手術・ICU、感染病床、そしてヘリポートまで、専用エレベーターによって直結してつながる計画とし、救急医療の機能性を損なわない、迅速で安全な患者搬送を可能としました。

 外観デザインと内外の色彩計画、サインシステムとアート、さらに照明デザインを融合させ、一貫して「十勝帯広の大地」をイメージしたデザインを心掛けました。

 今回の設計の特徴としては、実施設計段階から施工者を選定したECI(Early Contractor Involvement)方式により、施主(厚生連、病院)、設計者、施工者が1つのチームとなって、早期の施工者のさまざまな技術的ノウハウを設計に反映させ、約7万〓という大規模病院を細部にわたるきめ細やかな配慮で実現することができました。これも厚生連、病院をはじめとし、さまざまな場面で関係する皆さま方のおかげであり、設計者としてこのプロジェクトにかかわらせていただきましたことを深く感謝いたします。 

【施工のポイント/意思統一とつながりを重視/女性技術者も貴重な戦力に】

 現場の特徴は、四季を通じて環境の変化がある十勝地方の特性に配慮して、作業員がスムーズにかつ安全に作業が行えるよう、現場環境の整備に取り組んだことがあげられる。

 建物は自家発電により3日間は運営対応が可能だ。9月の地震の際にも安全性は確認されている。断熱性能は、樹脂サッシやLow-E複合ガラスを採用し、帯広市特有のマイナス20度からプラス30度まで幅のある温度差でも結露しない構造となっている。

 また、コンクリートの品質管理の面で大臣認定を受けるため、地元プラントと本社技術センターの協力を得ることで、認定を取得することができた。工程管理においては、職長会が自主的に細かなチェックを繰り返し、効率よく作業を進めることを追求した。仕上げの最盛期には1日450人、なかでも躯体は200人の作業員が入場し作業に当たった。

 このほか、施工管理を担う女性技術者の活躍を推進し、最盛期には5人の女性が貴重な戦力として現場を盛り立て、明るくしてもらった。この取り組みが、日建連に評価され、けんせつ小町活躍推進「優秀賞」も受賞できた。

 安全面に対する配慮として、職長会による安全パトロールを実施し、作業員目線での問題点の抽出や、安全意識の向上を図った。指摘事項の改善を行い安全意識を徹底したこと、また、職長会との懇親会などを通して、日ごろから意思統一を図り、人とのつながりや良好なコミュニケーションをとれたことが現場の大きな力となった。

 帯広厚生病院は、総合病院としても全国的に高い評価を得ていたこともあり、それに応えるためにも十勝・道東医療の核となる建築物が求められたが、地震や度重なる台風などの自然環境の変化を乗り越えて、市民にとって使いやすく、喜んでいただける北海道一の総合病院をつくることができたと自負しており、発注者さまはもとより、設計事務所さま、携わってくれた社員、作業員を含めた関係者の皆さまにこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。