<旭川はいま>第5部 考・市政課題*4*市立病院再建*大病院競合 赤字に拍車

2018.11.01



 <旭川はいま>第5部 考・市政課題*4*市立病院再建*大病院競合 赤字に拍車
2018.10.26 北海道新聞 


 市立旭川病院の糖尿病外来病棟。ここで働く看護部外来看護師長の増田千絵さん(50)の給与は、11月から月額1・8%カットされる。年2回支給の勤勉手当も0・3カ月分ずつ削減。増田さんは「生活は厳しくなる。でも、病院の赤字脱却のためには仕方がない」と淡々と言った。

*人件費を圧縮

 深刻な赤字を抱える市立旭川病院。2016年度、貯金にあたる資金残高が底をついた。資金不足は17年度決算で約6億円。医師や看護師ら約400人を対象とする給与削減は、病院経営立て直しのため、旭川市が11月から2年間限定で実施し、年間1億3千万円の人件費圧縮を見込む。

 自治体病院の経営難は旭川に限った話ではない。だが道北の医療拠点が集中する旭川の場合、病院同士が患者獲得で競合する地域性が市立病院の赤字を膨らます要因の一つともされる。

 市内には病床数300を超える主要な大規模病院だけ数えても旭川医大(602床)、旭川厚生(539床)、旭川赤十字(520床)、旭川医療センター(310床)が林立。市立病院は478床を備える。

 人口10万人当たりの病院数(16年10月、厚生労働省調べ)は全国の6・7に対し、旭川は11・4。道(10・5)や札幌市(10・4)より多く、各病院がしのぎを削る実情を示す。

 加えて医師不足の影響を受け、市立病院は09年度から整形外科の常勤医が不在。整形外科の入院病床(41床)は休止が続き、赤字に拍車をかけてきた。

 そんな中、道内他都市では将来の人口減を見据え、競争相手の病院同士が連携し、地域医療を維持しようとする動きがある。

 人口約8万4千人の室蘭市。昨年11月、市立室蘭総合と日鋼記念、製鉄記念室蘭の3総合病院の再編論議が始まった。室蘭市が病院再編の検討を始めたのは、道が16年に策定した「地域医療構想」で25年の西胆振の病床を15年比27%減の2826床と定めたのがきっかけ。道内の先駆けとなる議論が進む背景を「行政がリーダーシップをとり、地域一丸で医療を守る危機意識を共有しているからだ」と同市の成田栄一保健福祉部長は強調した。

*再編論議なく

 一方、旭川では再編論議はまだ緒にすら就いていない。地域医療構想によると、上川中部圏域(旭川市、周辺8町、幌加内町)で25年に必要な病床数は5625床。15年比で979床減らす必要がある。病院関係者の間にも「団塊の世代が80歳となる2030年以降の人口減を考えると、現在の病床数維持は難しい」(旭川赤十字病院の牧野憲一院長)との認識がある。

 ただ、市立旭川病院の子野日政昭院長は「旭川の人口減少はまだ緩やか。今すぐ議論が必要だとは思わない」。旭医大病院の古川博之院長は「旭医大は日によって病床稼働率が9割超。病床数減は難しい」。医療センターの西村英夫院長も「病床減は、配置される看護師を解雇することにもつながる」と慎重だ。

 市立病院の経営改善について、市長選に立候補予定の新人今津寛介氏(41)、現職西川将人氏(49)はともに「病床稼働率の改善」を掲げる。しかし、病院間連携や将来的な統合議論への目に見えた言及はない。

 道内トップクラスの医療集積地の旭川。ある医療関係者は「このままでは病院が共倒れする」と危惧した。その解決の道筋について、旭川赤十字病院の牧野院長はこう言った。「病院再編の議論が必ず必要になる。そしてそれは、行政のトップが主導して進めるべきだ」(前田健太)

                  ◇

 旭川市長選告示まであと9日

*立候補を予定する両氏の「市立旭川病院の経営改善」に関する主な考え

今津寛介氏

・旭川医大と協力し、適正な病床数と職員数で病床稼働率9割を目指す

西川将人氏

・病床稼働率の向上や経費抑制、医師の確保などを進める