第26回DPCマネジメント研究会学術大会~診療報酬改定の影響と今後~

2018.09.19


第26回DPCマネジメント研究会学術大会~診療報酬改定の影響と今後~完成形を迎えたDPC/PDPS―診療提供体制の考え方―
 2018.09.17 The Doctor



東邦大学医学部医療政策・渉外部門特任教授 小山信彌氏
■DPC制度は「完成形」に
 DPC制度は、平成30年度改定において調整係数の機能評価係数IIへの置き換えが完了した。これにより、小山氏は「(DPC制度は)完成形を迎えた」と述べ、「なんとかうまく着地できた」とコメントした。
 DPC制度(DPC/PDPS)は平成15年に導入された。DPC制度導入により「何が起きたか」について、小山氏は、まず「病名が14桁のコードに統一された」ことを挙げた。診断群分類(DPC)コード14桁の上6桁は傷病名を指すが、最初の2桁は主要診断群(MDC)、次の4桁は傷病名の細分類となっている。小山氏は「最初の2桁を見るだけで病院の特徴がわかるようになった」と述べ、「うちの病院は何が得意なのか。あるいは専門病院という部類に入るのかというところも見ることができる」と説明した。また「様式1」にさまざまな情報が組み込まれており、例えば郵便番号での抽出により「その地域でこの疾患が何人いて、そのうちの何パーセントがどこの病院に行っているというところまでわかる」と述べた。
 こうしたDPCデータにより、病院間におけるベンチマークができるようになり、小山氏は「地域での病院の立ち位置が見えてくるし、医療の透明化ができる。この辺が大きなところだ」と評価した。また、医療費を効率的に使用するため、各病院でコスト削減の努力が行われるようになったことも評価した。そして、最も大きな成果として「標準治療の確立」を挙げた。小山氏は、例としてDPC制度導入後の在院日数の変化を提示。大学病院における肺がん手術症例の平均在院日数が、平成15年度は29.55日であったが、平成28年度は11.36日に短縮。また、狭心症経皮的冠動脈形成術症例の平均在院日数においても、平成15年度の12.60日から平成28年度は5.19日に短縮したことを示した。なお、小山氏は「全国平均が見えても、そこに倣えということでは決してない。各病院に適した医療の提供体制を考えてほしい」と強調した。
■後発医薬品の入院・外来「使い分け」にメス
 また、小山氏は平成30年度診療報酬改定におけるDPC制度見直しの概要について説明した。基礎係数(医療機関群)については、「合理性があるため維持する」一方で、医療機関群の名称はI群を「大学病院本院群」、II群を「DPC特定病院群」、III群を「DPC標準病院群」に変更した。この名称変更は、医療機関群は病院の機能で分類したものであることを明確化することに加え、小山氏は「病院経営ではII群が有利」という“II群神話”を払拭することが「大きな要点ではなかったか」との考えを示した。なお、基礎係数に関しては、行き過ぎたコスト削減、平均在院日数の削減は「点数の引き下げ」「病院の裁量権の減少」につながるとし、自制を促した。小山氏は「入院期間IIIはいけないと考えるのではなく、それだけ重症の患者をみているということ。入院期間IIIが30~40%あるのは妥当」との認識を示した。
 機能評価係数IIに関しては「保険診療係数」「効率性係数」「複雑性係数」「カバー率係数」「救急医療係数」「地域医療係数」の6係数を基本的評価軸とし、「後発医薬品係数」「重症度係数」は整理・廃止となった。また、機能評価係数IIの重み付けは「行わない」、指数の分散処理は「行わない」こととされた。小山氏は「この影響はどこにくるかというと、専門病院にとってちょっと不利なのかなという感じがする」との考えを示した。
 後発医薬品係数は、機能評価係数Iに移行となった。小山氏は「機能評価係数IIのときは過去の実績が評価された」とし、「今まで一生懸命やったところを評価していた」と説明。今後は、機能評価係数Iへの移行により「3カ月の実績で届け出れば翌月から評価される」こととなり、「(評価が)リアルタイムになった」とコメントした。
 また、小山氏は、後発医薬品係数の対象が「外来」まで広がったことを注意点として挙げた。DPC対象病院における入院・外来別のジェネリック医薬品使用状況において、平成28年度DPCデータでは、「入院」82%に対し「外来」は48%にとどまった。入院ではジェネリック医薬品を採用するが、外来では先発医薬品を採用する「使い分け」を行っている病院があり、小山氏は「これに対してメスが入った」と指摘した。後発医薬品係数が機能評価係数Iに移行したことで、外来を含め病院で使用した全ての医薬品が対象とされた。その結果、小山氏は「3割近い大学病院が(後発医薬品係数が)0になった」ことを問題視。くわえて「一生懸命に啓蒙しているが、なかなかうまくいかない」との現状を漏らした。平成30年度診療報酬改定では、後発医薬品の数量シェアが著しく低い薬局に対して、調剤基本料の減算規定が設けられた。小山氏は「今回は薬局だったが、次の改定では(後発医薬品係数が)0の病院に対しては減点がつく可能性がある」と注意を促した。
 また、機能評価係数Iに関しては「努力して取る」ことを勧めた。とくに「医師事務作業補助体制加算」「急性期看護補助体制加算」「看護職員夜間配置加算」「病棟薬剤業務実施加算」「診療録管理体制加算」の5項目については、「増員すれば取れる」ほか、「医師や看護師の負担軽減につながる」として強く推奨した。
 なお、病棟薬剤師の配置状況については「問題がある」と指摘。アンケート調査では、病棟薬剤業務を実施することにより、「看護職員の業務負担が軽減した」68.9%、「医師の業務負担が軽減した」61.7%と「非常に評判がよかった」ものの、病棟に薬剤師を配置している病院は63.3%にとどまっていた。小山氏は「約4割の病院がまだ病棟配置していない」と述べ、「医療安全や感染症対策を考えた場合、病棟薬剤師の役割は非常に重要だ。病棟配置を進める必要がある」とうったえた。
■激変緩和対象病院は「退出」も
 DPC制度は、調整係数の機能評価係数IIへの置き換えが完了し「完成形」を迎えたが、小山氏は残された問題として「激変緩和係数」を挙げた。平成30年度改定では、改定により診療報酬変動が大きい医療機関に対して激変緩和措置を行うため、改定年度に限り「激変緩和係数」を設定している。具体的には、収益が2%を超えて少なくなった医療機関45施設、2%を超えて多くなった医療機関50施設が、激変緩和の対象とされた。
 この激変緩和係数の問題点として、小山氏は「診療密度や平均在院日数が大きく外れる医療機関があること」を指摘した。平成28年度DPCデータによると、平均在院日数が平均+2SDを超える医療機関が47施設、診療密度が平均-2SDを下回る医療機関が20施設あった。小山氏は「平均在院日数がやたらと長い病院、診療密度が低く粗診粗療の懸念がある病院、これらの医療機関のデータも全部平均値に組み込まれてしまう」と述べ、そのような医療機関については「退出」の可能性もあると示唆した。DPC制度では、平均的な診療実態から大きく外れてしまっている医療機関のデータも組み込まれてしまうことから、厚生労働省は「診断群分類点数表が実態と異なるものとなる懸念がある」と問題視し、これらの医療機関については「退出等の対応を今後検討する」としている。小山氏は、激変緩和係数の対象となっている医療機関の3分の2を100床未満の小規模病院が占めていると述べ、外れ値にある小規模病院については「出来高に戻すことを考えないといけないような改定が、平成32年度改定で行われるかもしれない」と注意を促した。


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