黒潮=榛南地域の患者広域搬送-県と地元意思疎通密に

2018.09.13

黒潮=榛南地域の患者広域搬送-県と地元意思疎通密に(佐藤章弘/榛原支局)
2018.09.12

 県の総合防災訓練の一環で、大規模災害発生直後の重症患者を広域搬送するための臨時医療施設(SCU)を開設・運営する訓練が静岡空港であった。県の計画によると患者は、災害拠点病院や救護病院などからSCUに運び込まれる。ただ、搬送体制図上は災害拠点病院を経る形で描かれている。拠点病院がない牧之原市では「本当に救護病院からSCUへ運べるのか」との不安が強い。

 牧之原市の榛原総合病院は救護病院。藤枝市立総合病院と島田市立島田市民病院、焼津市立総合病院が近隣の災害拠点病院で、いずれも大井川を挟んでいる。一刻を争う中、いったん川を越え、再び静岡空港へ戻るとなると「助かる命も助からなくなる事態が起こり得る」(牧之原市の近藤恒史防災監)と懸念する。

 県は計画で、SCUには「原則として災害拠点病院または救護病院などの最寄りのヘリポートからヘリコプターで搬送する」と明記。一方、計画の体制図では、患者の流れは救護病院↓災害拠点病院↓SCUと読み取れる。県西部の欄に救護病院のヘリポート↓SCUともあるが、中・東部には線が引かれていない。

 県地域医療課は「スペースの都合上、中・東部は省略しているだけで、状況次第で救護病院からも搬送できる」と釈明する。丁寧に描けば正確さは増すが、見づらくなりがち。概念図のため見やすさを重視したという。

 牧之原市の関係者は、心配事を以前から県の担当者も出席する会合で訴えてきた。とはいえ市の不安が県に、県の説明が市に、それぞれ届いていないのが実情のよう。情報交換や連携の不足が浮き彫りのように思える。

 救護病院からの直接搬送が排除されていないことは文章を読めば分かるし、図の見やすさを優先した県の考え方も理解できる。地域の実情に明るい災害医療コーディネーターが差配すれば、問題はないのかもしれない。しかし「混乱した災害現場で、図に固執して救護病院からの搬送が拒まれはしないか」との市の心配もまた、もっともだ。

 SCUでは県外から集まる災害派遣医療チームの活動が想定される。誰もが共通理解できるよう体制図を改善することは簡単だろう。榛原総合病院からSCUへの搬送も訓練に組み込んでみてはどうか。県と市の意思疎通にこそ不安を覚えた。

 (榛原支局・佐藤章弘)

静岡新聞社