医療による地域活性化: 仮説構築に向けたケーススタディ

2018.08.29

 
医療による地域活性化: 仮説構築に向けたケーススタディ
坂口 一樹、森 宏一郎

概要

  • 医療は積極的に地域活性化に貢献し、地方創生の中心的な担い手になることができるか。この問いへの回答の仮説構築を目的として、インタビュー調査を通じて3件のケーススタディを実施した。対象としたのは、【事例1】志村フロイデグループ (まちづくりを担う病院) 、【事例2】南医療生協 (地域コミュニティがつ【事例3】高松丸亀町商店街振興組合 (医商連携) である。考察されたくる病院) 、要点は以下の3点である。
  • 第一に、医療が地域活性化に貢献するためには、医療機関の経営戦略と地域特性との間の親和性が必要である。【事例1】が示すように、人口減少とともに活気を喪失する傾向がある「地域そのものをリハビリテーションする」という理念のもとで、医療機関および関連施設が運営される。その文脈で地域活性化のための様々な取り組みがグループの経営目標と有機的に結びついている。
  • 第二に、医療機関が地域のコミュニティ形成の核となる人材や場所の提供を行うことによって、地域活性化を牽引できる可能性が高いことである。【事例1】では、従業員らの自発的組織がグループ運営のコミュニティカフェを活用し、地域活性化に向けて内外のさまざまなリソースを動員するハブ機能を果たしていた。【事例2】では、医療生協という地域コミュニティ自体が病院の移転新築に伴う設計段階からその運営の意思決定において大きな役割を担う。結果、病院と関連施設の造りやテナントが町並みに溶け込み、医療機関には患者だけでなく健康な人も集まり、地域コミュニティが形成されている。
  • 第三に、医療機関は、地方郊外のクルマ社会に適応できなくなった高齢者層に対する社会的な解決策を提示できる可能性を秘めている。地方郊外の生活は、高齢になり自動車に乗れなくなった途端、破たんしかねない。【事例3】では、そのような高齢者にターゲットを絞り込んで「医・食・住」とのコンセプトを掲げ、高齢者の健康ニーズに合わせた大規模診療所を商店街再生の目玉とし、ターゲットの暮らしのニーズにあわせた各種機能をまちなかに整備している。そうして生活者の数を増やすことで商店街の需要となる人口を増やし、地方の中心市街地再生を図った。
  • 以上3点を踏まえると、医療にも地域経済の牽引役となり得る十分なポテンシャルがあると言える。医療は平時の安全保障としての必要インフラであるが、実はこのベースとしての機能を超えるパワーを持っているのではないか。