地方から未来へ)第5部・地域医療の現場から:5 病院で「サービス会議」 島根・西ノ島町〈下〉/広島県

2018.07.06

地方から未来へ)第5部・地域医療の現場から:5 病院で「サービス会議」 島根・西ノ島町〈下〉/広島県
2018.07.05 



 ■島ぐるみ、介護者と連携


 島根県沖に浮かぶ隠岐諸島の一つ、約2900人が暮らす西ノ島(西ノ島町)。人口はピーク時の1950年から6割減り、2人に1人が65歳以上と高齢化も顕著だが、お年寄りの表情は明るい。隠岐島前(どうぜん)病院(同町)を中心に築き上げた島ぐるみの医療・介護の連携があるからだ。

 6月中旬。「腰の痛みはどうですか」。病院の医師、黒谷一志さん(39)が自宅でベッドに寝ている男性(87)に声をかけ、丁寧に診察した。

 男性は入退院を繰り返している。看護師は1人で介護する妻(80)に「頑張り過ぎないで。ヘルパーを入れたら」と助言し、妻は居合わせたケアマネジャーにその希望を伝えた。妻は取材に「病院と社会福祉協議会、町との連携がとてもよく、在宅療養の態勢もすぐにできた。本当に助かる」と笑顔を見せた。

 スムーズな連携ができる背景には、病院の医師や看護師、リハビリ担当、ケアマネ、ヘルパーら島内の医療・介護関係者が一堂に会す「サービス調整会議」の存在がある。お互いに「顔の見える関係」を築いてきた。

 会議は月2回、病院で開かれる。かつては退院後に病状が悪化する患者が目立ったため、白石吉彦院長(51)が介護側との連携を高め、島ぐるみで患者を支えたいと1998年6月から始めた。

 患者ごとに在宅介護の状況をまとめたパソコン画面をスクリーンに示しながら、自宅や介護施設での様子、病状の変化を報告し合い、その場で対応方針を決める。医師にとっては薬の飲み忘れなど自宅での様子がわかり、介護者にとっては受診時の状況などを気軽に医師に確認できる。

 医師も全員出席し、パソコンで電子カルテを見ながら真剣なやりとりをする。参加者同士が分け隔てなく、率直に話し合うのが特長だ。白石院長は「職種が違っても尊重し合い、患者のために仕事をする。そんなチーム医療を心がけている」と話す。

 島の医療を支えるのは、こうした姿勢にひかれて自らやってきた医師たちだ。松江市出身の黒谷さんは埼玉県内の病院で働いていたが、自治医科大を卒業後に3年間勤務した島前病院での経験が忘れ難く、埼玉の自宅に妻子を残して舞い戻った。「患者を幅広く診る島の医療が自分に合っている」という。

 島根県出雲市出身の福田聡司さん(36)は研修医のとき病院で1カ月間勤務し、離島医療の魅力を知った。「ここで働きたい」と白石院長に相談すると「まだ早い。内視鏡検査などを身につけてきた方がいい」と諭され、同市の県立中央病院で3年間修業。5年前に念願をかなえた。同郷で医師の妻瑶子さん(33)も昨年赴任し、今年1月には長男が生まれた。これからも故郷・島根の地域医療を支え続ける覚悟だ。「島にずっといるつもり。チーム医療を支えていきたい」(清水康志)