慢性痛、チーム診療で効果 日常の活動性上げ、悪循環脱却

2018.06.29


慢性痛、チーム診療で効果 日常の活動性上げ、悪循環脱却
2018.06.27 朝日新聞


 腰や肩などの痛みが長い間続く慢性痛は、原因がわからないことが多い。そうした痛みに、整形外科や精神科など複数の診療科の医師や理学療法士などチームで診療する動きが広がっている。悪循環から脱して生活の質を改善するのがねらいだ。


 岐阜県恵那市の会社役員渡辺良二さん(67)は8年前から腰と尻の痛みに悩んでいた。自宅近くの診療所でX線検査をしたが、股関節に異常はなかった。昨年痛みが悪化して近くの病院を受診。だが、そこでも原因はわからず、愛知医科大病院痛みセンター(愛知県長久手市)を受診した。

 センターでも関節や骨に異常はないと診断された。ただ、筋力が低下していることがわかった。慢性痛患者向けの外来プログラムに参加することにした。

 慢性痛は、関節や神経に傷を負った後、組織の修復に必要な期間を超えても痛みが続いている状態だ。3~6カ月以上続く痛みを指す。厚生労働省研究班の2010年の調査では、18歳以上の15%に慢性の痛みがあり、5~10年続く人が最も多かった。

 腰痛や関節痛、脊髄(せきずい)損傷や帯状疱疹(ほうしん)後に現れる神経障害による痛みなど原因は様々だ。ただ、原因がわからないことも多い。痛みにとらわれ、不安や恐怖感から活動性が落ちて身体機能が低下、気分が落ち込んで悪循環に陥りやすい。

 渡辺さんが参加したプログラムは、週1回約3時間計9回からなる。整形外科、麻酔科、精神科の医師らから痛みのしくみについて講義を受ける。また、どんな時に痛いと感じ、その時どうしたかを記録し、自分の状態や考え方を整理する認知行動療法を応用した痛みの対処法を学ぶ。ストレッチや筋力トレーニングなども組み込まれている。

 牛田享宏教授は「痛みがあっても動ける考え方や体作りで活動性を上げ、悪循環から脱却することを目指している」と話す。

 渡辺さんは体幹の筋力は最大で20%上がった。会社の朝礼で5分も立っていられなかったが、毎朝30分の散歩が日課になった。渡辺さんは「痛いからやめようと考えてしまっていたが、やろうという意欲が出てきた」と話す。


 ■継続治療へ地域医療と連携

 厚労省研究班の別の調査では、慢性痛患者は6割以上が治療に満足せず医療機関を切り替えていた。うち18%が4回以上医療機関を変えていた。整形外科や麻酔科など複数の診療科を受診し、民間療法も含めて様々な治療法を試していた。

 愛知医科大病院では、慢性痛の治療について、整形外科、精神科、麻酔科や内科の医師、歯科医師、理学療法士や看護師、臨床心理士らが週2回集まり、患者の治療方針を話し合う。

 牛田教授は「痛みは様々な要因が複雑に絡み合っている。家族との関係や就労の状況なども影響する。複数の専門家が治療に関わる必要がある」と指摘する。

 こうした「集学的治療」はここ10年で、身体機能の改善に効果があることが欧米の研究で明らかになってきた。今年3月、日本運動器疼痛(とうつう)学会など7学会が初めて作った「慢性疼痛治療ガイドライン」でも、集学的治療が患者の生活の質を改善するのに有効だとして、強く推奨している。

 だが、集学的治療をする医療機関は全国21カ所にとどまる。通院が難しい地域もある。15年に慢性疼痛センターを開設した星総合病院(福島県郡山市)では、岩手から大阪まで広く患者が集まる。昨年度までに受診した101人のうち、遠方を理由に治療が中断したり、他院に移ったりした患者が少なくとも5人いた。

 こうしたことから、同病院は今年度、仙台の病院や診療所など3カ所と連携を始めた。遠方から通う患者が地元で治療を続けられる体制づくりを目指す。

 矢吹省司センター長は「痛みを管理できる方法を学んでも、身近に助言をしてくれたり、一緒に取り組んでくれたりする医療者がいないと続かない」と話す。(月舘彩子)