(比べてみると)公立病院 「地域医療の拠点」岐路に /愛知県

2018.06.26


(比べてみると)公立病院 「地域医療の拠点」岐路に /愛知県
2018.06.23 



 地域医療を支える公立病院が、県内で減っている。経営難や医師不足の問題が背景にあり、各地の自治体は統合や民間譲渡などで存続を図ろうとしている。


 ■経営難や医師不足、統合探る 交渉続く西尾・碧南

 西尾市は今年1月、碧南市に市民病院の統合を持ちかけた。

 両市民病院とも15年以上赤字が続くが、その性質は異なる。2016年度決算によると、短期的な支払い能力を示す「当座比率」は碧南の125・4%に対し、西尾は20・8%。100%以上が望ましいとされ、西尾市の方が厳しい。「財政的に困り始めている。早く手を打ちたいのだろうと感じた」と碧南市の禰宜田政信市長は話す。

 だが碧南市も単独で市民病院を存続させるのは容易ではない。医師不足が深刻で、3月下旬から消化器内科の診療を制限し、4月には小児外科を診療科目から外した。市の調査でも、現場の医師の悲痛な声が相次いだ。「当直医が少なく、50歳を過ぎても当直をしている」「若い人は辞めていく。今後の医療をどうするか」

 碧南市側は「碧南市内への新病院設置を前提とするなら、統合協議に応じる」と条件を付けている。医師を確保できるなどの利点は認めながら統合に慎重なのは、人口が約2・4倍の西尾市に新病院を「奪われる」ことを心配しているからだ。両市の間には矢作川があり、災害時に渡れなくなる懸念もある。

 県がんセンター愛知病院(岡崎市)は来年4月、岡崎市に経営移管され、岡崎市民病院と機能を再編することになった。両病院とも赤字が続いてきたため、市は統合による経営効率化を見込む。だが市の担当者が気をもむのが、20年4月に市南部に開業する藤田保健衛生大学の新病院の影響だ。診療科は22科、一般病床400床の予定で、「患者を奪われかねず、さらなる経営悪化につながる恐れがある」と心配する。(小西正人、大野晴香)


 ■統合で医師確保、赤字は続く 「先進事例」の西知多総合

 病院統合の先進事例とされるのが、15年に東海、知多両市の市民病院が統合した西知多総合病院(東海市)だ。総務省が3月にまとめた「地方公営企業の抜本的な改革等に係る先進・優良事例」に挙げられた。

 統合のきっかけはやはり医師不足で、岡田光史事務局長は「大きな病院にしたことで医師が集まりやすくなった」と説明する。常勤医師は旧2病院の合計65人(14年度末)から77人(17年度末)に。入院患者も1日平均263人から327人に増えた。医師は、医療設備が整っていて指導医が多い病院に集まる傾向があるという。入院患者が多いほど症例も増え、医師の育成にもつながる。

 ただ経営はなお厳しい。16年度決算では9億8千万円の純損失で、17年度決算はさらに増える見通しだという。経費削減のため、専門のコンサルタントを入れて月1億円程度の薬品の仕入れ価格の交渉を始めた。17年度は前年度に比べて約3千万円の節減ができたという。岡田事務局長は「(統合で)市民に質の高い医療を提供できるようになった。入院や手術を充実させて経営を改善したいが、効果が出るには時間が必要」と話す。(豊平森)


 ■目立つ民間への譲渡

 県によると、県内の市町村立病院(一部事務組合などを含む)は08年度に32あったが、現在は26。病床数も08年の1万1507床から昨年は1万580床と、9年間で1割近く減った。

 「医師不足で運営できなくなった」(一宮市の担当者)という旧尾西市民病院など、民間に譲渡される事例が目立つ。現在も半田市と常滑市が病院の経営統合も視野に入れた協議をしており、今後も減少が続く可能性がある。

 県の地域医療構想(16年)によると、民間も含めた人口10万人当たりの県内の病院数は4・4で、全国の6・7より少ない。10万人当たりの病床数も全国の74%にとどまっている。

 地域医療に詳しい内海真・県地域医療支援センター長は「公立病院の多くは医師不足が深刻で、解決策の一つに統合があるのは間違いない。ただ効率的な運営が求められる民間病院の方が患者へのサービスが良くなる場合もあり、公立病院が減ることが一概に悪いとは言えない」と指摘。「今後は私立の大学病院などを含め、地域事情に合わせた病院間の連携を深める必要がある」と話している。(北上田剛)


 ■県内の市町村立病院数の推移

        <病院数> <廃止、民間譲渡された病院>

 2008年10月 32

  09年    30   尾西市民病院(一宮市)、高浜市立病院

  11年    29   城西病院(名古屋市)

  12年    28   東海市民病院分院

  13年    27   守山市民病院(名古屋市)

  15年    26   東海市民病院、知多市民病院(統合して西知多総合病院に)

 (県まとめ。一部事務組合立などを含む)



朝日新聞社