厚労省 フォーミュラリ導入を提案 降圧薬などで標準的な薬物選択を推進

2018.06.25

厚労省 フォーミュラリ導入を提案 降圧薬などで標準的な薬物選択を推進


厚生労働省は11月1日、中医協総会に生活習慣病治療薬について、降圧薬などで標準的な薬剤選択の推進を進める方策として、医薬品の推奨リストである“フォーミュラリ”の導入を提案した。国内の降圧薬市場は、ARBの処方率が高い。過去にはマス市場であるARBの処方獲得をめぐり、ディオバンの臨床研究不正も起き、製薬企業からの情報提供が処方に影響を与えてきたことも指摘されてきた。厚労省保険局医療課の迫井正深課長は、「医師を中心に適正な情報が必要であることは続いてく。

適切な情報をいかに得ていくかが非常に重要だ」と述べた。薬剤師が中心となって作成するフォーミュラリの導入により、医師に適切な情報を提供し、処方の適正化を推進する考えだ。

フォーミュラリをめぐっては、政府が策定する骨太方針に2015年、16年、17年と3年連続で生活習慣病の処方の在り方を検討することが盛り込まれた。
10月26日の経済財政諮問会議でも、民間議員が後発医薬品使用促進策として、病院ごとに策定することを提案している。

この日、厚労省は聖マリアンナ医科大学の事例を日本のフォーミュラリとして紹介した。フォーミュラリ策定に際しては、薬剤師が医薬品の有効性、安全性、経済性などを総合的に評価することがポイントとなっている。原則として後発医薬品を中心に2剤までを採用。有効性や安全性に差が認められなければ新薬の採用は認めない。

諮問会議の民間議員も聖マリアンナのフォーミュラリを資料として提出している。

それによると、ACE阻害薬とARBが属すRASでは第一選択薬をACE阻害薬(後発品)、ロサルタン(後発品)、カンデサルタン(後発品)など、後発品を基準品に据える。

「新規導入には後発品を優先する」などのルールも院内で周知し、処方の適正化を進めた。

これにより、1つの医療機関、かつ院内の入院患者であるにもかかわらず、600万円を超える医療費削減効果があったという。


◎ディオバン問題を提示 薬剤師から医師への情報提供で処方の適正化推進


日本の降圧薬処方の実状として、健康保険組合連合会の調査結果を紹介した。高血圧以外の傷病名が記載されておらず、降圧剤1剤のみが処方されている場合、ARBの処方率は約4割、金額ベースでは約6割を占めた。

一方、同様に第一選択薬とされるACE阻害薬の処方率は1.7%、金額ベースでも1.1%にとどまる。ARB Ca拮抗薬、ACE阻害薬、ARBにわけ、薬価をグルーピングした資料も提示し、ARBが有意に高薬価であることも資料では示した。ARBの使用については施設間に偏りがあり、降圧薬1剤のみが処方された場合、10%の医療機関ですべての患者に処方されている一方、約24%の患者では1回も処方されていない実態もあった。

さらに、厚労省は、ARB・ディオバンの臨床研究不正を紹介。京都府立医科大学、東京慈恵医科大学、千葉大学、滋賀医科大学、名古屋大学など大学病院で、データ操作や製薬企業と医師との相反があったことを示した。迫井医療課長は、この資料を提示した理由について、「医学的な判断、臨床的な要素を含めて医薬品が選択される。その前提として適切な情報が必要だ」と説明。社会問題化したディオバン問題を引き合いに、「新しい薬が上市されると、医師を中心に適正な情報が必要であることは続いてく。適切な情報をいかに得ていくのかということが非常に重要ではないか。フォーミュラリもそうだが、適切な処方に結び付けていく取り組みは何なのか検討する」考えを示した。

◎支払側・幸野委員「国が主導してガイドライン策定を」

支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、WHOやNICEを引き合いに「国が主導して高血圧、費用対効果を踏まえた使用優先順位を決めていただきたい」と述べた。健保連では、ARBとCa拮抗薬投与による入院率の差も検討し、有意な相関は認められなかったことや、ARBをCa拮抗薬に置き換えると、推定医療費削減額は最大で年間830億円削減できることを紹介。「フォーミュラリにより医薬品の選択順位を定めることを推進していく」ことを求めた。

これに対し、診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は、「降圧薬はそれぞれの特徴がある。現場の医師の裁量で選択していることをご理解いただきたい」と述べた。薬剤選択については、「一時ARBにポジティブな情報提供がなされて、血糖値や脳梗塞、心筋梗塞によいということで、複数の薬剤をARB1剤の処方に変えていたことがあった」と述べ、製薬企業のMRによる情報提供が処方に影響を与えている実態も口にした。