連載企画/みやざき平成を問う/6月のテーマ/縮む時代/3/偏在する医師/地域医療育む環境を/県外流出 歯止め必要

2018.06.19


連載企画/みやざき平成を問う/6月のテーマ/縮む時代/3/偏在する医師/地域医療育む環境を/県外流出 歯止め必要
2018.06.17 宮崎日日新聞 


 梅雨の晴れ間が広がった今月12日、串間市市木の舳(へた)港から出た小舟は、約500メートル沖の築島(つきしま)へ向かった。島民9人が暮らすこの島では4週間に1回、串間市民病院総合診療科の医師松田俊太郎さん(46)と看護師らが訪れ、市木小の旧築島分校で巡回診療を行っている。

 松田さんは都城市出身で自治医科大(栃木県)を卒業後、外科の専門医として県内各地の中山間地の医療機関に勤めた。現場を重ねるうちに、「患者との距離の近さや、生活環境などを含めて複合的に診断する地域医療に心を奪われた」。

 そして、地域医療を総合的にカバーする総合診療の道に入った。予防から急性・慢性の疾患、時には原因不明の病気まで受け持ち、守備範囲は広い。生活背景まで丸ごと診ることから、「地域を診る医師」とも評される。

 患者が「膝が痛い」と訴えると、松田さんは「頑張っちょるね」「いまは海の仕事はないとね」と一人一人に声を掛け、注射を打ち、虫さされ薬も処方する。受診した築島真知子さん(64)は「病気だけでなく心も診てくれるんです」と安心した表情を見せる。

 高齢化や人口減少で、地域医療が細る中、厚生労働省は2017年、「地域医療のリーダー」となる総合診療医を新たに設置した。松田さんには県内の先駆者として期待が寄せられている。

 県内の医師の数は、1990(平成2)年の1902人から2016(同28)年は2754人へと増えた。だが、このうち55・8%の1539人は宮崎・東諸県に集中する。延岡・西臼杵は262人、西諸は129人と、人口と同様に周辺部に行くほど極端に少なくなり、偏在は顕著だ。

 同様に深刻なのが、将来の県内の医療を支える若い医師の減少だ。1996(同8)年に275人いた20代の医師は2016(同28)年には161人まで落ち込んでいる。

 県医療薬務課は、04(同16)年度に導入された新臨床研修制度を要因の一つに挙げる。同制度により、研修医は自由に研修先を選ぶことができるようになった。宮崎大医学部6年の学生は「都市部の病院ではさまざまな症例に挑戦する機会がたくさんある。キャリアアップのため流出している」と実態を明かす。

 流出対策として県は06(同18)年度から、医師修学資金貸与制度を導入した。月10万円を貸し付け、県内の山間部などに一定期間勤務すれば返還が免除される仕組みだ。これまで163人が利用したが、現在県内で勤務する医師は23人のみ。

 さらに、今年4月に県内で2年間の初期臨床研修を終えた研修医44人のうち、県内で「専攻医」として採用されたのは県外で研修した医師も含め37人にとどまり、全国でも最下位となったことが明らかになった。

 医師確保を目指す県の政策が大きく揺らぐ事態に、同課は「大変厳しい結果。要因を探るため、研修医へのヒアリングなどを行うなど対策を講じる」と受け止める。

 松田さんは8年前に開設された同大学医学部の「地域医療・総合診療医学講座」の講師も務め、研修医の県外流出も目の当たりにしてきた。

 「最先端の医療現場だけではなく、学生のうちから地域医療を現場で体験し、自らその重要性や意義に気付かなければいけない」と問題点を指摘する。同時に「研修を受けられるような施設や環境整備に投資すべきだ。地域に必要な医師は地域で育てなければいけない」とこれからの対策の在り方を訴えた。