厚労省ーー都道府県担当者は「県立病院改革」から逃げてはいけない

2018.06.07

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厚労省ーー都道府県担当者は「県立病院改革」から逃げてはいけない
 地域医療構想の実現に向けて、都道府県担当は「県立病院等の機能明確化、再編・統合」などから逃げてはいけない。そこで公平なジャッジが行われるかを、公的病院や民間病院は見ている。また、地域医療構想調整会議の議長等と、都道府県(本庁)の担当者との間で「ざっくばらんに議論できる」関係を構築できるかが、地域医療構想の実現に向けた重要な要素となる―。

県立病院等の再編から逃げるな、他の公的・民間病院との「公平性」確保が重要
 地域医療構想は全都道府県で策定され、その達成に向けて「如何に、地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で実のある議論を進めるか」というフェーズに入っています。厚労省は定期的に調整会議の開催状況などをチェック(4半期に一度)しており、そこからは都道府県によって調整会議の進捗状況等に非常に大きなバラつきがあることが分かっています。

 会議冒頭、厚労省医政局地域医療計画課の佐々木健課長は、「地域医療構想の業務は、地域の医療提供体制を守る大きな仕事である。これに携わることは宿命・運命であると捉え、真剣に取り組んでいただきたい。現在、国会で医療法・医師法の改正法案を提出し、医療政策に関する業務を都道府県に担っていただくことが増える。この点、厚労省も『都道府県が医療政策を担える』と考えており、そのための研修会でもある」と檄を飛ばしました。

さらに佐々木地域医療計画課長は、想調整会議では、まず公立・公的病院の機能について「公立・公的病院でなければ担えない機能」に重点化・明確化していく点に触れ、「自治体病院を抱える都道府県もあると思うが、その取扱いを他病院はしっかり見ている。逃げずに、公平なジャッジをお願いする」と強く要請しました。自治体病院については、後述するように「首長の選挙公約マター」になっているケースもあり、ベッド数の削減や再編・統合に向けて都道府県が物を言いにくいこともあるようです。しかし、ここから逃げてしまうと、他の公的病院や民間病院から信頼を失い(身内に甘いと見られてしまいかねない)、地域医療構想調整会議の議論が進まなくなってしまうのです。佐々木地域医療計画課長は「覚悟をもって取り組んでほしい」と強調しています。

公立病院等の再編・統合、住民への丁寧な「メリット」の説明が重要
 都道府県医療政策研修会では、主に地域医療構想の実現に向けて、厚労省から都道府県や地区医師会の担当者等に対し「地域医療構想ワーキンググループ」や「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(いずれも「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織)における議論の最新動向や、データ活用のためのスキルなどが伝授されるとともに、先進的な取り組みを行う都道府県からの事例報告と意見交換などが行われます。

前者の地域医療構想ワーキングでは、▼公立・公的病院の機能分化▼公立・公的病院の再編・統合▼都道府県単位の「調整会議」の設置と開催▼調整会議のアドバイザー育成―などが議題となりました」

このうち「公立・公的病院の再編・統合」については、参加者の関心も高く、活発な意見交換が行われています。

例えば奈良県では、3つの公立病院を▼1つの救急病院(急性期機能)▼2つの地域医療センター(回復期・慢性期)―に機能分化。急性期機能を担う病院(南奈良総合医療センター)に医師配置を重点化したところ、急性期機能や医師派遣機能の向上、若手医師への魅力向上などの効果が出ているといいます。この点について厚労省担当者は「再編・統合のメリットを地域住民に丁寧に説明した」ところが大きいと分析。特に公立病院では、開設者である首長(県知事や市町村長)が、選挙の際に「公立病院の維持、さらには新規開設や増床」などを公約で打ち出すケースがあります。その中で、「病院の再編・統合」を病院側が単独で唱えれば、住民から猛反発を受けることもあります。そこで、例えば県知事が大所高所に立ち「現在のベッド数を維持することのデメリット」「再編・統合し、病床削減などすることのメリット」「再編・統合後の医療機関へのアクセス保障」などを丁寧に説明し、理解を得ることで、地域医療構想の実現に向けた大きく動きだせると考えられます。

また茨城県では、例えば、▼筑西・下妻医療圏において、公立の2つの急性期病院と、1つの民間病院を再編・統合し、「2つの公立病院」(1病院は地方独立行政法人化、1病院は再編に参加した民間病院が指定管理者)とする【公立の県西総合病院、公立の筑西市民病院、民間の山王病院→公立の茨城県西部メディカルセンター、公立のさくらがわ地域医療センター】▼鹿行医療圏において、公的の2つの病院(済生会と労災)を再編・統合し、「本部病院」(350床)と「分院」(10床)として、本部病院に資源・機能を集約する【神栖済生会病院、神栖労災病院→神栖済生会病院の本院と分院】―ことが決まっています。

後者については茨城県の担当者から、「済生会病院が労災病院を引き取る形になったが、給与等の格差が大きく(労災病院の給与>済生会病院の給与)、人員確保のために労災病院については現在の給与保障をせざるをえなかった。再編・統合を進めるために、こういった部分への支援も必要になるのではないか」との提案が改めてなされています。
 ちなみに、「病院が自主的にダウンサイジング(ベッド削減)」を行う場合、不要となる建物や医療機器の処分に係る損失(財務諸表上の特別損失に計上されるものに限り)について、2018年度から地域医療介護総合確保基金の対象事業に含まれています。病院が再編・統合する場合、病床規模を削減するケースも少なくなく、その場合、基金の活用によってハードルが少し低くなると言えそうです。厚労省担当者は「今後も、基金の対象事業について必要な拡大を行っていく」考えを示しています。

 もっとも、後者の統合事例では、現在の「合計378床」から新たに「合計350床」となり、わずかなベッド数削減しか行われません。この点について茨城県サイドは▼筑波大学病院からの医師派遣を受けるために、必要な教育環境を整える必要がある▼圏外の流出患者を圏内で診ることを想定している―と説明しましたが、会場(他の都道府県や医師会等の担当者)からは「合併した場合、医師数が減る可能性が高い。医師確保の見通しを立ててからベッド数を決めるべきではないか」として「再編・統合後の350床は多すぎる」との指摘が数多く出されています。この点、茨城県も「最終的に350床すべてをオープンできるかどうかは不透明である」ともコメントしています。

調整会議議長等と都道府県担当者とで「ざっくばらんに議論できる」関係の構築を
 ところで、大学病院や大規模な公立・公的病院では「高度急性期」機能を持つ病棟を抱えることが多くなります。地域医療構想では、地域(構想区域、主に2次医療圏)ごとに▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期―の必要病床数を定めますが、「高度急性期は都道府県全域の患者の診ることになり、都道府県単位での検討が必要なのではないか」との意見も出ています。

 この点について厚労省担当者は、「地域医療構想を策定する段階で、高度急性期の機能等を織り込んでいるはず」と指摘した上で、「想調整会議で議論を進める中で見えてくる課題もある。そこで、都道府県単位の調整会議を設置し、例えば各調整会議の議長や基幹病院の管理者等が出席し、意見を調整することが期待される」とコメント。例えば、仮に「高度急性期病棟を持つ大学病院が、県全域の高度急性期医療を一手に引き受ける」方針が都道府県単位の調整会議で固まれば、アクセスの問題等は残るものの、各調整会議では「高度急性期を除く、急性期から慢性期に至る医療機能」について議論すればよく、より効率的な議論を円滑に進めることが期待されます。

なお、関連して厚労省担当者は、調整会議の議論を円滑に進めるための重要な要素の1つとして、「調整会議の議長と、都道府県本庁の担当部局等がざっくばらんに議論できる関係の構築」を掲げました。この点からも、都道府県単位の調整会議を設置することで、各調整会議の議長等と、これまで以上に「顔の見える関係」を築けると期待されます。すでに県単位の調整会議を設置している佐賀県では、通常の調整会議以外にも、2年間で50回以上の懇談会、研修会、意見交換会を開催。公立病院の再編論議なども円滑に進んでいるといいます。