■ 室蘭3総合病院のあり方検討会が市長に提言書を提出

2018.06.04

■ 室蘭3総合病院のあり方検討会が市長に提言書を提出
【2018年5月30日(水)室蘭民報


青山市長に提言書を提出する地域医療あり方検討会の石井会長(右)
 室蘭市内の将来の医療提供体制などを議論していた「地域医療あり方検討会」(会長・石井吉春北大公共政策大学院特任教授)は29日、結論として提言書を青山剛市長に提出した。安定した医師確保などを前提に、診療機能統合や病院数縮小に向けた再編の重要性をまとめた。受け取った青山市長は「速やかに提言内容の検討に入る」との考えを示した。 



 「強いリーダーシップを発揮いただき具体化に向け取り組みを進めてほしい」。同日市役所で石井会長がこう述べ、青山市長に書面を手渡した。

 検討会は道内の医育大学関係者ら有識者、室蘭市医師会、市内3総合病院のトップら委員10人で構成。今年3月までに4回会議(非公開)を開き、▽提言が目指すもの▽3病院の経営形態▽病院数および各病院の基本的医療機能▽今後の検討会の進め方―の4項目に分け意見を示した。

 「目指すもの」として、疾病予防から入院治療まで地域住民の医療ニーズをカバーする「2次医療圏」での人口減と高齢化が進んでいることを指摘し「診療機能の再編について早急に検討を進める必要がある」と強調。「3病院を中心とした再編を実現していく必要がある」と指摘した。

 3病院の経営形態では、(1)診療機能再編を優先的に検討すべき(2)地域で健全経営を行っている民間病院の経営手法は重要で、将来的にも堅持すべき―などの委員の考えを掲載。「現時点で方向性を統一することはできない」とした。

 各病院の医療機能の意見では「人口動態を踏まえ、病院数を1とすることが効率的で質の高い医療提供体制の確保につながる」と再編に前向きな発言があった。一方で「前段階として2を目指すのが現実的」「現有3施設を生かす」なども聞かれた。

 具体的な再編には各病院が担ってきた「診療機能の特色や診療ニーズを踏まえ検討する」ことを盛り込んだ。市立室蘭総合病院の経営健全化の取り組みの重要性に着目し、「地方独立行政法人への移行など経営形態の見直しの検討も必要」と言及した。

 石井会長は「人口が減るから、地域医療を見直す視点だけではないプラスの側面の位置付けが重要で、機能の維持、効率化する要素をきちんと議論することが市民の共感を得る大きなポイントになる」と今後の見通しを語った。

 青山市長は「これまで一歩が進まなかった反省がある。将来の市民の安心を確かなものにするために着実に進めていきたい」と応じた。
(松岡秀宜、粟田純樹)


◆―― 玉虫色決着やむなし

 【解説】「地域医療あり方検討会」の提言書。「当面の間は現有の3施設を生かしながら、診療機能の統合や縮小に向けて再編を検討する」としたが、議論の中で3病院の経営形態については「方向性の統一」が困難な現状も浮き彫りとなった。「将来の地域医療を守る」との共通の思いを抱えながら、考え方がばらばらでは玉虫色での決着は仕方ない。今後はさらに踏み込んだ議論も必要だ。

 同検討会は、西胆振医療圏(3市3町)で効率的な医療体制の提供を目指すため、道が定めた「西胆振区域地域医療構想」で、2025年までの病床数目標が「15年度比27%減」とされたことで設けた諮問機関だ。

 地域医療の再構築を目指して議論する―とされた方向性。しかし、非公開で行われた会合は「3病院の統合を含んだ再編」や「地方独立行政法人を設け、各病院はその傘下に」などとする方向性に「議論の中心が、いつの間にか移っていった」(委員の一人)という。

 西胆振医療圏の中核を担う3病院の骨格を(行政が)決めた上で、地域医療構想の(西胆振での)話し合いで調整を図りたい―とする思惑。「これ以外の考え方はあるのか」(石井吉春会長)ともする病床数削減への「統合ありき」の方針は、社会医療法人サイドをはじめ一部の委員の反発を招いた。

 このため「3病院を中心とした再編等を実現していく必要がある」「地域医療の維持・確保を最重点とし、検討結果を踏まえて議論を深めることが肝要」などと、時期や手法までは表現しない結論となった。

 ただ、市立室蘭総合病院については地方独立行政法人への移行や指定管理者制度導入など「経営形態の見直しの検討も必要」と明記。「市立病院が、再編全体の中心的な役割を担う必要がある」(石井会長)とする中で、現状の運営には苦言を呈す内容。今後の議論では、病院開設者でもある市長の決断と強烈なリーダーシップも不可欠だ。
(松岡秀宜)


◆―― 3病院の考え相違

 行政、病院、医育大学などが顔を合わせて議論した地域医療あり方検討会。「診療機能の統合・再編や病院数の縮小に向けて再編等を検討する」との考えを提言書に明記するなど「一定の方向性を示すことができた」(石井吉春会長)とする。今後は、対象3病院と同市などによる新たな会議を設置。「地域医療の維持・確保」を最重点とし議論を進める方針だが、3病院の考えはさまざまだ。

 日鋼記念病院の柳谷晶仁院長は「各病院にはこれまで培ってきた背景もあるが、市民生活の重要なインフラである医療を将来に向けて最も良い形でバトンを渡せるよう再構築を目指す必要がある」とした上で「さらなる議論の継続、具体的方策の検討など、継続的に医療を提供するために、引き続き協力したい」と語る。

 市立室蘭総合病院の金戸宏行病院事業管理者兼院長は「経営形態の見直しの検討も必要」と記された点に「(開設者の)市長が考えられること」としたが、感染症や結核病棟などの不採算部門、脳神経系の病気もある精神科入院患者への対応―など、公立病院が担う役割の重要性も指摘。「医療難民を出さない、との立場で引き続き運営したい」と話す。

 一方、社会医療法人製鉄記念室蘭病院の松木高雪理事長は「現時点で、3病院の経営形態や病院数を減らす前提での話し合いに、全く必要性を感じない」と強調。「西胆振医療圏全体を考慮し、3病院の診療機能の再編を優先的に検討すべき。住民サービス継続の観点から、現有3病院を生かすことが地域住民のためではないのか」とする。

 室蘭市医師会の稲川昭会長は「西胆振医療圏の中で、市内3病院が果たしている役割と使命は大きい」とする一方で、この地域の医療を守る―という観点から「将来に向けてどのような体制を整えるのか。スピード感を持って進めてもらえれば」と話す。