大町・課題を点検(下)=赤字続く市立大町総合病院 医療と経営、両立課題

2018.06.01


大町・課題を点検(下)=赤字続く市立大町総合病院 医療と経営、両立課題
2018.05.31 信濃毎日新聞



 大町市立大町総合病院の産婦人科には平日、出産を目前にした女性など約30人の患者が診察に訪れる。大北地域では唯一、分娩(ぶんべん)が可能な医療機関。今年2月に産科医が着任し、現在は常勤2人態勢だ。

 同病院は産科医不足で2015年3月から9月まで、分娩の取り扱いを中止した。2人いた常勤の産科医の1人が病気療養し、残る1人では分娩に対応できないためだ。その後、新しい常勤医が着任したものの、17年10月からは再び常勤は1人に。非常勤医師の支援を受けるなどし、2月まで1人で分娩に対応してきた。

 産婦人科など各診療科の医師不足などを背景に、病院事業会計は12年度から純損失を計上している。16年度は4億9100万円余に上り、県によると、県内の公立病院の中では、6億4400万円の諏訪中央病院(茅野市)に次ぐ損失額だった。

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 「職員給与費の割合の高さが要因の一つ」。大町総合病院の勝野健一事務長は赤字経営が続く理由をそう説明する。

 認可病床は278床。診療科目は内科や外科など14科で、常勤医師18人。16年度の診療報酬などによる医業収益は38億9400万円余。これに対し、人件費に当たる職員給与費は27億5300万円余で70・7%を占めている。県内の17公立病院では、東御市民病院(東御市)の72・8%に次ぎ、信越病院(上水内郡信濃町)と並ぶ高い水準だ。公益社団法人「全国自治体病院協議会」(東京)によると、大町総合病院と同規模(200~300床)の全国の公立病院で、職員給与費が占める割合は平均で59・8%(16年度)。

 大町総合病院は11年から医療の質の向上を目的に、毎年看護師や事務などの職員を増やした。一方で、10年度は20人だった医師が13年度には15人に減った。中でも患者数が多い内科の医師は11年度に7人だったが、13~15年度は3人。職員数が増えて給与費が膨らむ一方、医師が減ったため診察する患者数は増えず、医業収益は頭打ちとなった=グラフ。

 医療マネジメントが専門の兵庫県立大の小山秀夫名誉教授は、病院は収益が少ないと人件費の割合が高くなると指摘。「患者数が増えることで改善されるが、人口が減少して患者も減る中で改善はそう簡単ではない」と話す。

 高度な医療機器の導入などもあり、18年度の市の一般会計から病院事業会計への繰り出しは9億3千万円。半額程度は国の地方交付税で賄われるが、市財政の負担は大きい。

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 病院は17年、改革プランをまとめた。20年度の黒字化を目指し、17年度に410人だった職員を20年度までに386人に削減する目標を掲げる。また、医師の確保と定着化も成果が見え始めている。

 5月16日には、空いた病床が目立っていることから病床を199床に削減する方針を明らかにした。削減によって、外来中心で緊急時の対応や在宅医療の担い手となる「在宅療養支援病院」を目指す方針で、診療報酬が加算されるという。

 一方、周産期医療や救急医療などは患者が少ない「不採算部門」だが、維持する。勝野事務長は「大町市では人口減少が進む。医療レベルと経営の維持を両立することは簡単ではない」とする。

 大北地域の拠点病院でもあり、16年度の外来患者のうち、北安曇郡4町村からが17・2%を占めた。大北医師会長の横沢伸医師(白馬村)は、同じ郡内にある県厚生連北アルプス医療センターあづみ病院(池田町)と診療科をすみ分けることを提案する。「経営母体が違い、協議は難しいかもしれない。しかし、互いに経費の削減になる面があるのではないか」とする。

 地域医療の最後のとりでとして、医療水準を維持、高めていくには多様な立場からの議論が必要だ。