[四季録]緩和ケアに関わる 

2018.05.01

[四季録]緩和ケアに関わる その3 谷水正人
2018.04.26  


 天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず。

 私が緩和ケアに関わろうと決心したのは1998年である。まずは治らなくなった患者さんが安心して自宅で療養できるための地域作りが重要だ。ちょうど同じ年に松山市医師会(当時は久野梧郎会長、現愛媛県医師会長)で病院と診療所の連携を検討する委員会と、在宅医療を推進する委員会を相次いで発足させることになった。私はそのことを知ってお願いし、その二つに入れてもらった。

 医師会の委員会に入ってみて驚いた。委員の先生方のボランティア精神と行動力が凄い。その日一日の診療を終えた医師たちが休む間もなく午後7時頃から医師会に集まってくる、そして毎夜遅くまで地域医療に関わる真剣な議論が交わされる。救急医療、各種健診、災害救護活動など市民に不可欠な医療活動が医師会員の献身的な働きに支えられていることを知った。

 医師会長の号令一下、委員会発足後一年を待たず「病診連携ガイド」の発刊が成った。「病診連携ガイド」とは在宅医療や麻薬など、緩和ケアに必要な医療にかかりつけ医がどこまで対応できるかをまとめた医療機関情報マップである。今も更新され松山市医師会のホームページから検索できる。

 二つの委員会を契機として、在宅医療・緩和ケアの勉強会が次々立ち上がった。それらは現在、在宅医療連絡会、在宅医療を考える医師の会、多職種(看護師・薬剤師・社会福祉士・介護支援専門員など)が参加する在宅医療懇話会などに発展している。昨年7月の市民公開講座は市民参加が800名を超えたと聞く。2015年からは「松山市在宅医療支援センター」が立ち上がり、在宅機器の貸出や副主治医と他科医の依頼体制、市民への相談窓口も整えられた。在宅医療を担うかかりつけ医も徐々に増え、連携する医師の理解も深まった。この間、訪問看護師や介護支援専門員などの勢いに押された感があるのはうれしい悲鳴である。

 松山市において今では、治らなくなった患者さんがお家に帰りたいと思ったとき、医療の問題で退院をあきらめることは極めて少なくなった。ただし誤解を招かないために言っておくと、最後までお家で過ごせることが必ずしもベストなわけではない、患者さんの気持ちに寄り添える支援が大切だと思う。課題は多い。介護力の不足で退院が叶わぬことは今もしばしばある。

 松山市以外はどうか、それが結構満更でもない。(続く)

(谷水正人・四国がんセンター院長)

愛媛新聞社