[解く追う]北宇和病院 鬼北町の負担金増加 利用患者数 想定下回る 地域医療の在り方模索

2018.05.29


[解く追う]北宇和病院 鬼北町の負担金増加 利用患者数 想定下回る 地域医療の在り方模索
2018.05.27 

 地元住民の要望から戦後に誕生し、経営母体が変わりながらも約70年、鬼北地域の医療を支えてきた鬼北町立北宇和病院(同町近永)。今年3月、町は支援のため補正予算で病院負担金として6千万円を追加計上し、本年度の当初予算でも前年度比約6400万円増の1億5508万円の負担金を盛り込んだ。過疎高齢化の進む地域の医療体制維持に向け、病院や町は利用者減に拍車がかかる状況に苦慮している。

 北宇和病院は1948年9月、鬼北地域旧4町村(広見町、三間町、松野町、日吉村)の組合立病院として発足した。内科、外科、産婦人科、小児科の4科で運営していたが赤字が累積したため62年に県に運営を移管。さらに累積赤字が増えたことなどから県は2003年に廃止を打ち出した。

 地域住民による存続、拡充の要望運動などを受けて鬼北町への移譲が決定。町に病院経営のノウハウがないこともあり、国立療養所南愛媛病院(同町永野市)継承の実績を持つ社会福祉法人「旭川荘」(岡山市北区)を指定管理者とし、公設民営の「町立北宇和病院」が06年4月に開院、13年目を迎えた。

▼資金不足

 公設民営となって以降は10、11年度と単年度黒字だったものの、赤字の年が多い状況が続いていた。町は県からの移譲の際、運営費や増改築費などとして支援を受けた計4億4200万円を運転資金として取り崩してきたが、年換算で4千万円程度減少。ここ数年は町一般会計から1億円前後を繰り入れていた。

 そんな中、町は同病院の資金不足が深刻化しているとして18年度当初予算に従来の約6割増となる負担金を計上、17年度予算でも追加補正した。町の新たな病院改革プラン(17年3月作成)では17年度から4年間、年平均で約1億300万円を繰り入れる見通しだったが、計画初年で大幅に追加せざるを得なくなった形だ。

 背景には利用者の減少がある。同病院の外来患者数は16年度までの8年間、1日平均199~164人で推移。同プランでは人口減を考慮し、外来患者数の漸減を見込んではいたが17年度、168人の想定のところ実績は155人。入院患者数も同様に当初の見込みを下回っている。

 同病院(一般病床55床、療養病床45床)は現在、内科、整形外科、リウマチ科、泌尿器科などを設けるほか、宇和島圏域の2次救急を担う。本年度からは愛治診療所に医師を派遣するなど町内四つの国保診療所とも連携をとり、地域医療体制の中核となっている。

 経営状況に関し町保健介護課は「救急外来や病床利用の減少など、複合的要素があったと(病院側から)聞いている」とする。同病院では患者の満足度を高めようと院内アンケートなどを実施しているが、利用減の原因はつかみ切れていない。一方で訪問看護の利用は年々増え、17年度は前年度比844人増の4506人となった。同病院は「地域のニーズに応じた結果。収益増にはつながりにくい部分」と明かす。

▼存続維持

 同町は約1万人の人口に比して個人病院を含む医療機関が多く、町中心部在住の50代主婦は「近隣の人の行きつけはまちまち。状況に応じ町外の病院を利用することもある」と話す。住民の選択肢として通常は身近な病院にかかり、解決しない場合は宇和島市など町外の大規模病院へ出向く傾向がありそうだ。

 ただ周辺部の三島地区で暮らす同町小松の80代の夫婦は、普段は近くの診療所への通院で済むことが大半だが「何かあったときに町内に大きい医療機関があるのは心強い」と、北宇和病院の存在が安心につながっていると話す。

 兵頭誠亀町長は18年度の施政方針として同病院の存続維持を掲げた。指定管理者との連携を密にし、町内の医療体制再構築を目指すとしている。「南海トラフ地震などの大災害時、町が町民を守るために必要な医療機関の側面もある」と存在意義を強調する一方、「繰り出しが増額となり悩むところはあるが、さらなる経営努力をお願いしたい」と期待を述べる。(宇和上翼)

愛媛新聞社