◇論説 赤字続く市立甲府病院 医療の信頼健全経営でこそ・・・

2018.05.08

◇論説 赤字続く市立甲府病院 医療の信頼健全経営でこそ・・・ 市立甲府の経営形態を巡り、経営協が09年に「経営の自立性が高まる」と非公務員型の独立行政法人移行を迫ったが、市が受け入れなかった・・・
2017.05.18 山梨日日新聞


 200億円かけて甲府市増坪町に移転新設した翌2000年度から16年連続で赤字が続く市立甲府病院。一般会計から計260億円超の市税を補てんした一方、累積赤字は約114億円に膨れ上がった。自治体病院の使命として救命救急など不採算医療を担うとはいえ、抜本的な経営改革を急がなければ一層、市民がしわ寄せを受ける。

 山梨県内の市町村などが運営する13公立病院は、15年度決算で医業の経常損失が合計約17億5千万円と、15年連続赤字の厳しい経営が続く。都留、韮崎など9病院が赤字を計上し、中でも市立甲府は約5億8千万円と3分の1を占め、ひときわ厳しいと言える。

 総務省は09年に続き、全公立病院に新しい経営改善計画策定を求めた。旧計画実行後、半数が赤字だからだ。市立甲府は3年前に独自に掲げた16年度の黒字化も達成できず、約3億6千万円の赤字が見込まれる。先月末に20年度に黒字化する新改革プランを打ち出したが、計画倒れを繰り返せば、市民から病院としての信頼を失いかねない。次こそ確実に黒字化すべきだ。

 新改革プランでは、402病床の利用率を16年度の75・5%から20年度に78・5%、開業医からの紹介率を53・3%から59・9%に上げるなど目標を掲げた。達成すれば収入増が期待されるが、「黒字化ありきの目標で実現性は低い」(甲府市議)と厳しい目が向くのも事実。県立中央、山梨大など競合病院が多い中北地域にあって、相当な“営業努力”を迫られよう。

 市立甲府は地域の開業医へ要請を始め、紹介率、病床利用率とも上昇傾向にある。患者確保でより効果を上げるため、患者の5割が笛吹、中央両市など市外であることから、例えば、近隣市町村の協力を得て市外の開業医と関係を強めてはどうか。

 将来的な役割として市立甲府は、回復期医療機能強化や救急医療充実などを掲げ、今後不足する回復期病床52床を持つ「地域包括ケア病棟」を開設した方向性は妥当と言える。拡充整備するリハビリ庭園を有効活用すれば、回復期医療を売りに他病院と差別化を図れるだろう。

 小児、周産期医療を含む不採算部門を担うため経済効率だけを求めるわけにいかず、税の繰り入れはやむを得ない面はあるが、年約15億円の補てんを減らすに越したことはない。他の診療で黒字を生んで経営基盤を強化しなければ、質の高い医療を提供し続けることもできまい。

 市立甲府は本年度、専任の経営企画課新設に加え、医師や看護師、薬剤師ら医療従事者と事務局でつくる院長直轄の経営改善対策部を設け、経営改革に本腰を入れ始めた。内向きな組織とせず、外部有識者による経営協議会や市民への情報提供をこまめに行い、経営的な視点を取り入れることが不可欠だろう。

 市立甲府の経営形態を巡り、経営協が09年に「経営の自立性が高まる」と非公務員型の独立行政法人移行を迫ったが、市が受け入れなかった。結果として赤字体質から脱していない現実を市は重く受け止めるべきだ。

 経営協会長の今井久山梨学院大教授が「トップが権限と責任を持ち経営改善に当たる必要があり、できないなら経営形態を変えるべきだ」と指摘するのは、もっともだ。院長とともに、樋口雄一市長には強いリーダーシップで踏み込んだ改革を断行するよう求めたい。〈小林康治〉


2017.5.18

山梨日日新聞社