<フォーカス>ふるさと納税 開始10年*返礼品ブームで急拡大だけど...*問われる「地域応援」*熊本「貴重な復興財源」

2018.05.07

<フォーカス>ふるさと納税 開始10年*返礼品ブームで急拡大だけど…*問われる「地域応援」*熊本「貴重な復興財源」
2018.05.02 北海道新聞 


 自治体に寄付すると、税負担が軽くなるふるさと納税が2008年度に始まってから10年。17年度の寄付総額は過去最多を更新する見込みで、自治体の財源確保や地域活性化に一役買っている。ただ、特産品をもらえる「返礼品ブーム」が支えている面もあり、地域を応援する当初の理念は色あせている。

 ふるさと納税は07年、当時の菅義偉総務相が打ち出した。地方で生まれ育ち、都会で就職した人が地元に恩返しできるようにする狙いだ。08年度の寄付総額は81億円だったが、16年度は2844億円に拡大した。寄付のお礼に肉や海産物を贈る自治体が増え、お得な制度として浸透。仲介サイトの参入で手続きが簡単になった効果もある。

 災害に遭った自治体の寄付急増も目立つ。熊本市では、熊本地震があった16年度は前年度の1億円から37億円に増え「復興財源として貴重。ありがたい」と歓迎する。

 最近はお礼の方法が多様化。管理が難しくなった空き家の見回り(秋田県男鹿市)、墓地清掃(愛媛県新居浜市)などのサービスもある。

 ただ、返礼品競争の激化につれ「豪華な特産品目当てになっている」との批判が噴出。総務省は昨年4月の通知で、寄付額の3割を超える品、家電などの自粛を求めた。

 頭を痛めているのは税収が流出する大都市だ。東京都(市区町村を含む)は17年度の住民税が466億円の減収に対し、受け取った寄付はわずか。「行政サービスに影響が出かねない」(杉並区)と危機感を募らせている。

*根室市の使途明示好評*昨年度は「春国岱の木道復旧」

 【根室】ふるさと納税で2016年度、全道1位(全国10位)の33億743万円の寄付金を集めた根室市は今、使い道を明確に示した上で寄付を募る手法を強化している。

 「ハクチョウだ」。アカエゾマツなどの林に延びる真新しい木道に、子どもたちの声が響いた。

 根室半島の付け根にあるラムサール条約登録湿地春国岱(しゅんくにたい)の自然散策路。14年冬の暴風や高潮で全長1220メートルの木道の大半が損壊し、使えなくなっていた。

 市は17年11月、「修理の残る330メートル分の復旧費に充てる」と使い道を明示し、インターネットで資金を募る「クラウドファンディング」型のふるさと納税で支援を呼び掛けた。23日間で全国6317人から目標の1億円を集め、今年3月、3年ぶりの全面開通にこぎ着けた。

 予想を上回る反応に、市は「使い道を分かりやすく示したことで、寄付者の共感を得た」(総合政策部)と分析。開通式で市民ガイドを務めた船山岩雄さん(72)は「春国岱の魅力をさらに広め、寄付者に恩返ししたい」と感慨深そうだ。

 根室市のふるさと納税は15年6月、返礼品に花咲ガニなどを加えると急増。17年度も39億7334万円と好調が続く。これまでは子育て支援や防潮堤建設、ふるさと応援基金の積み立てなどに割り振ってきた。

 だが、市民からは「根室の将来につながる使い方を」との声が増し、寄付者の関心も「返礼品の魅力から、寄付の使い道に移っている」(総合政策部)として、使い道を明示する方法に重心を移しつつある。

 1月には、子育て支援や地域医療安定化、漁業資源増大対策など使途別に寄付金を管理する7基金を新設。18年度は「JR花咲線PRムービー作成」や「根室のジャズ文化の拠点となってきた老舗喫茶店の継承」といった使い道への募集も行う予定だ。長谷川俊輔市長は「ふるさと納税のおかげで攻めに転じることができている」と話す。

 水産加工品を中心とする返礼品の経済効果が、不漁にあえぐ根室の水産業界の救いになっている側面もある。120種の返礼品を扱う市内の鮮魚小売店は「ふるさと納税で売り上げが2割増えた」といい、「ふるさと納税がなければ根室の水産業界はもっと苦しい」とみる関係者もいる。

 ふるさと納税は今や市税(18年度当初予算案は29億円の見込み)を上回り、地方交付税に次ぐ「第2の収入」となった。市の財政担当者は「恒久財源とみているわけではないが、今年もふるさと納税に助けられた」と打ち明ける。ふるさと納税に依存しすぎない財政運営も課題となっている。(犬飼裕一)

◇ふるさと納税◇

 都道府県や市区町村に寄付すると、寄付額のうち2千円を超える分が地方税の住民税、国税の所得税から軽減される仕組み。減税額は上限があり、所得や世帯構成で変わる。返礼品の有無や選定に関する法令の規定はなく、自治体が判断する。寄付から返礼品の調達費などを除いた金額が自治体の収入になり、地域の政策に充てる。寄付に伴って住民税が目減りした自治体は国が地方交付税で穴埋めするが、交付税を受け取っていない東京都などはそのまま減収になる。

*ふるさと納税を巡る経過

2007年5月 菅義偉総務相(当時)が研究会発足を表明

  08年4月 改正地方税法が成立、制度スタート

  15年4月 確定申告不要の「ワンストップ特例」導入

  16年4月 総務省が商品券や家電などの品目を明示して返礼品自粛を要請

  17年3月 東京都の特別区長会が国に見直し要請

     4月 総務省が新通知。返礼品は寄付額の3割以下とする目安を設定

     7月 16年度の寄付総額は前年度比1.7倍の2844億円に増えたと総務省発表

     9月 寄付の使い道を工夫するよう求め、野田聖子総務相が自治体に書簡