連載/2025年超寿社会 第1部 ポスト平成の病院改革 4/消耗戦脱却 共存探る

2018.04.25


連載/2025年超寿社会 第1部 ポスト平成の病院改革 4/消耗戦脱却 共存探る
2018.04.19 


 「国の政策に振り回されず、地域の実情に応じた医療や介護の提供体制を主体的につくれないか」。4月1日、山形県酒田市の栗谷義樹(71)ら地元の医師たちが主導して「日本海ヘルスケアネット」が産声を上げた。

 同市内の9法人が参加。重症患者対応の急性期を担う「日本海総合病院」を核に地元医師会、介護事業者も名を連ねる。

 人口減と高齢化が進む地域では、病院単体で運営していては効率化が望めず収益を上げにくい。酒田市を含む庄内地域の人口は約27万人だが、2025年には15年比で3万人も減り、高齢化率は40%に近づくという。

 「この状況で何もしないって120パーセントあり得ない」。ネット設立に奔走した栗谷が言う。日本海総合病院を運営する地方独立行政法人の理事長だ。

 日本海ネットは「地域医療連携推進法人」という枠組みで、17年度にできた新制度に基づく。合併するわけではないが、病院間での入院用ベッドの機能分担や、医師や看護師の人事交流も可能になる。医療機関同士の連携がスムーズになり、地域住民にとっては急性期から回復期、慢性期と、症状に応じて受診しやすくなる利点がある。

 ただ、18年度に入っても連携推進法人の設立は全国で1桁にとどまる。「大病院の独り勝ちになるのでは」と疑心もうずまき、関係者の調整が難航しがちなためだ。

 日本海ネットには前史がある。「原点は県立病院と市立病院の統合再編だ」と、かつて酒田地区医師会で会長を務めた本間清和(70)。

 「このままでは病院は破綻し、自治体財政に深刻な影響が出ます」。本間は13年前、当時の県知事と面会し、市内の公立2病院を統合するよう直訴した。半径2キロ内に両病院が併存。重複する診療科も多く、県立病院の経営は赤字続きだった。

 08年に2病院の統合再編が実現、現在の日本海総合病院が誕生。急性期機能を集約してベッドを減らし、経営は改善した。だが周辺の他の病院では、医師の高齢化もあり「宿直回数が多く体力的に厳しい」といった声が上がる。人材を確保して地域医療を守るには病院間の連携が不可欠。収益を競う“消耗戦”から脱却し、共存の道を探ろうと栗谷らは説き続け、ネット設立にこぎ着けた。

 栗谷は「病院の『突然死』を防いだだけで、これは時間稼ぎ。うちの病院も何年持つか。期間限定のビジネスモデルだ」と話し、さらに先を見る。過疎化が進んで医療需要が縮めば、次の一手が必要になる。どこの地方も直面する課題だ。

(敬称略)

東奥日報社