東千葉MC全面開院先延ばし 東金・山武市長選の課題 /千葉県

2018.04.16

東千葉MC全面開院先延ばし 東金・山武市長選の課題 /千葉県
2018.04.13 朝日新聞
 

山武市の60代の男性は、自宅で風呂上がりに缶ビールを飲み始めた時、気分が悪くなり意識を失った。3年ほど前のことだ。

 妻が119番通報し、受け入れ先を探すのに時間がかかった末、約1時間後に隣の東金市にある東千葉メディカルセンター(MC)に搬送された。くも膜下出血との診断。だが「対応できない」と言われ、約30キロ離れた千葉市の県救急医療センターへ移された。治療を受け、幸い後遺症もなく、今は自営の工事の仕事に復帰している。それでも――。

 「妻は一時、私が助からないと覚悟した。地域で頼れる救急医療体制にしてほしい」と思う。

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 東千葉MCは2014年4月に開院。高度救命医療を担う3次救急医療機関で、山武地域(東金、山武、大網白里各市と九十九里、芝山、横芝光各町)のほか、茂原市など長生地域、いすみ市など夷隅地域も加えた広い地域をカバーすることになっている。1年間に受け入れる救急患者は約5千人で、約7割は山武地域の住民だ。

 開院時は16診療科だったが、その後、4診療科を段階的に開設。当初は17年3月までに全23診療科を開設する計画だった。しかし、看護師や医師を十分に確保できず、眼科や耳鼻咽喉(いんこう)科、泌尿器科は今も開設できていない。

 救急の常勤医はある程度そろっているが、脳神経外科や麻酔科の医師は増員に取り組んでいる最中で、他の地域の病院に患者の受け入れを頼まざるを得ないケースもあるという。東千葉MC事務部の担当者は「手術に欠かせない麻酔科をチームで動かせる体制は4月に整ったばかり」と話す。

 財務面でも当初の収支見通しが大きく崩れ、昨年度末の累積赤字見込みは57億3千万円に膨らんだ。

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 「開院前のシミュレーションと現状との乖離(かいり)は大きい」「関係機関の速やかな支援が必要」――。

 東千葉MCの設立団体である東金市と九十九里町のほか、県、千葉大学病院などでつくる病院運営検討会議は今年1月、そんな結論をまとめた。その上で、経営管理面の強化のため、県からの人的支援▽コンサルティングの導入▽千葉大病院の医師派遣のさらなる協力▽救命救急センター運営の財政支援について、県や設立団体が近隣市町村に働きかけることなどが必要だと提言した。

 県はこれまで、東千葉MCの整備費として計85億6千万円を財政支援した。今年度、さらに追加支援に踏み切る考えだ。地方独立行政法人である東千葉MCへの異例のてこ入れの背景には、県立東金病院(14年3月廃止)の機能を引き継いで、高度救命医療や災害医療を担ってもらう狙いがある。新医療センターは当初、多くの周辺自治体が運営に参加する計画だったが、まとまらなかった。

 周辺自治体の首長や公的病院の関係者からは、「設立に関わった県の責任は重大。しがらみも多く、メディカルセンターではなく『ポリティカル(政治的)センター』だ」「民間病院なら既につぶれているのでは」との声もあがる。

 東千葉MCは2月に次の中期計画を策定。全面開院の時期を25年度に延期する一方、「病床314、医師63人、看護師297人」との目標は当初の水準を維持した。県の派遣で4月に着任した宇野誠一・東千葉MC事務部長は「少子高齢化で患者のニーズも変わり、先が100%読めるわけではないが、目標達成に向けて努力する」と話す。

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 東金、山武両市の市長選は15日に投開票される。ともに現職が引退を表明し、それぞれ新顔2人が立候補している。地域医療など暮らしに密着した課題をめぐり、各候補者が具体的な将来像を示せるかどうかも有権者の関心を集めている。(熊井洋美)