(今さら聞けない+)専門医制度 認定、各学会から第三者機関へ

2018.04.02


(今さら聞けない+)専門医制度 認定、各学会から第三者機関へ
2018.03.31朝日新聞



 電車の中などに張り出されている医療機関の広告に、医師の名前とともに、「○○○専門医」と書かれているのを目にすることがあります。専門医であれば患者は安心して受診できるのでしょうか。

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 医師になるには6年制の大学医学部を卒業して医師国家試験に合格することが必要です。2004年度からは、医師免許取得後2年以上の臨床研修が必修化されました。基礎的な診療能力を身につけてもらうのが目的です。この研修は医師法に基づくもので、修了しないと病院や診療所の管理者になることができません。

 その後は各診療領域の専門医を目指すのが一般的ですが、専門医制度は法律に基づくものではありません。研修施設の要件を定めたり、専門医を認定したりする業務は各学会が行ってきました。

 日本学術会議は1999年、専門医制度を必要とする診療分野の設定や研修病院の審査・指定などを担う第三者機関の設置を提言しました。しかし、提言がすぐに取り上げられることはなく、逆に規制緩和の流れの中で、学会認定の専門医資格がお墨付きを得るようになります。厚生労働省が02年度から、「学術団体として法人格がある」など、一定要件を満たした学会の専門医の広告を認めたのです。その結果、広告可能な専門医は56に達しました。

 もともと、厚生労働大臣の許可が必要な麻酔科を除き、医師は自由に診療科を名乗ることができました。この「自由標榜(ひょうぼう)制」に加えて専門医広告も認められた後、専門医の質のばらつきや乱立が問題となりました。

 厚労省の検討会は13年にまとめた報告書で、専門医の認定と養成プログラムの評価・認定を統一的に行う中立的第三者機関の設立を求めました。それを受け、翌14年に設立されたのが一般社団法人・日本専門医機構です。日本医師会や日本医学会連合、病院団体などが参加する同機構は、専門医を次のように定義しています。

 「それぞれの診療領域における適切な教育を受けて、十分な知識・経験を持ち、患者から信頼される標準的な医療を提供できるとともに、先端的な医療を理解し情報を提供できる医師」

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 新制度による研修は当初、17年度から始まる予定でした。ところが、専門医を目指す「専攻医」の都市部集中などによる地域医療への打撃を心配する声が出て、1年間延期されました。専攻医はまず、内科、外科、小児科など計19の基本領域で3~5年の研修を受け、認定試験を受験します。資格の有効期間は原則5年で、更新を認めてもらうためには、一定の診療実績を残すなど、基準を満たす必要があります。

 この4月から始まる基本領域での研修に進む専攻医は約8400人で、内科が約2600人、外科が約800人になる見込みです。基本領域の上には、細分化されたサブスペシャルティー領域が設けられることになっています。

 厚労省検討会は、複数の病気を抱える高齢者の増加を背景に、特定の臓器や疾患に限定することなく幅広い視野で患者を診る専門医の導入を提言しました。それを受け、「総合診療」が基本領域の一つとなりましたが、研修志望者は約180人にとどまっています。特定の診療分野の専門医が開業して地域医療の一翼を担う際の再教育が課題となりそうです。

 専門医機構は昨年、地域医療への配慮を理由に、専門医制度の基本的な仕組みを定めた指針を改めました。更新要件の緩和で、連続3回更新を認められた専門医は診療実績の提出が不要になりました。手術実績がない外科系の医師も更新を認められることを意味しますので、「質の担保」という観点で見れば、後退は否めません。


 ■記者のひとこと

 事故を繰り返す医師が野放しにされ、それを国民が知るすべがないのはおかしい――。出産時の事故で妻を亡くした男性の悲痛な声が耳に残っています。医師が自由に名乗れる診療科に代わり、質が保証された専門医資格が医師選びの手がかりとなる日が早く来ることを願わずにはいられません。(出河雅彦)