<社説>地方の医師不足 1県では解消策に限界

2018.04.02


<社説>地方の医師不足 1県では解消策に限界
2018.03.30 



 「いま、岩手の、そして日本の地域医療は崩壊の危機にさらされています」。こんな内容の岩手県の意見広告が今月、週刊誌などに掲載された。医師不足と医師偏在の解消が急務とし、地域医療基本法(仮称)の制定を提言している。

 医師不足は岩手にとどまらず地方共通の課題で、各県が懸命に医師確保に取り組んでいる。本県なら医学生向けの奨学金を設け、医師として県内に一定期間勤務することで返還を免除するといった対策を講じている。

 岩手県医療政策室は「医師不足に対応するのに、1県の取り組みでは限界がある。国と地方が協力し、国全体の問題として考える必要がある」と指摘する。同県が策定した基本法草案は、医師の計画的養成や偏りのない配置を実現するため、国や地方公共団体の責務を定めた。

 人口10万人当たりの医師数(2016年)を見ると、岩手県は207・5人で全国平均251・7人を大きく下回る。特に東日本大震災で被災した沿岸部で医師不足が深刻という。医師数は1位の京都府が334・9人、2位徳島県が333・3人など西高東低で、都道府県間で大きな差が生じている。

 本県は236・0人で岩手より多いが、全国平均には届かない。さらに、県内八つの2次医療圏(主に郡市単位)別に見ると、秋田周辺が311・2人と突出する一方、北秋田は106・0人、湯沢雄勝124・9人、大館鹿角156・5人と地域による偏りが大きい。医師不足には、県全体の医師の不足と、県内地域間の偏り(偏在)という二つの問題がある。

 新卒医師が幅広い診療技術を学ぶため国が04年度に導入した臨床研修制度が、地方の医師不足に拍車をかけた。研修先が都市部の病院などに集中し、県内に残る新人医師が減少。秋田大学の医局が担う医師派遣機能も大きく低下した。その後、同大医学部の入学定員増や、知事が指定する医療機関など一定期間の県内勤務を義務付ける「地域枠」が設定されるなどした。

 まだ時間はかかるが、知事が指定する施設に勤務する医師は4、5年後に100人規模になる見込みという。県医師確保対策室は「医師不足が深刻な地域で、対策の成果をある程度実感してもらえると思う」と話す。

 だが、4月にスタートする専門医養成制度が新たな懸念材料になっている。医師の希望する研修先が大都市に集中しており、地方の医師確保の努力を打ち消しかねないためだ。医療の質の向上は重要で制度の意義は理解できるが、そこに地方に配慮した仕組みを組み込むことが求められる。

 国全体の制度との兼ね合いで1県にできる対策には限りがある。県は岩手県などと連携し、地方の言い分をしっかり主張してほしい。国と地方が同じ方向を向き、より強力に医師不足の解消を目指す必要がある。

秋田魁新報社