論説 「夢は医師」の実現 体験の場が後押しする

2018.03.27

論説 「夢は医師」の実現 体験の場が後押しする
2018.03.24 



 医師を目指す若者が医療現場で実際の手術を見学できれば、志はより高まるだろう。郡山市の総合南東北病院で先ごろ、県内の高校生が手術室に入って外科手術に立ち会う機会が設けられた。夢の実現を後押しする取り組みが、県内医療の担い手育成につながることを期待する。

 高校生の手術見学は県教委の地域医療体験セミナーとして実施された。高校一年生四人が二班に分かれ、手術用のガウンやキャップ、手袋などを着用して胆のう切除とヘルニアの手術を見守った。

 県教委から委託されてセミナーを開催した医療人ネットワーク合同会社(福島市)によると、県内の病院では初めての試み。当初、関係者の間には不安もあったと聞く。高校生が手術を目の当たりにすることでショックを受けないか、患者の同意を得られるか…。実現に向けて数々の課題が横たわっていたはずだ。それらを乗り越え、一歩を踏み出した意義は大きい。

 参加した高校生には新鮮な驚きがあったようだ。スタッフの抜群のチームワーク、緊張感の中でも保たれるいい意味での和やかさなど、現場でしか分からない雰囲気に「手術のイメージが変わった」「患者を思いやる気持ちが伝わった」との声が上がった。それぞれが漠然と描いていた医療現場と医師像が明確になり、夢実現への思いがさらに強くなったに違いない。

 今回のセミナーを契機に現場体験できる高校生を増やしていきたい。単発で終わらせてはもったいない。関係機関が協力して継続、拡大を図り、県内医療への生徒の関心を高め、医師不足解消につなげてほしい。

 県内の医師数は二〇一六(平成二十八)年末時点で三千七百二十人。人口十万人当たり一九五・七人で、全国四十二位にとどまる。一方で県内の多くの子どもたちが医療の世界に憧れている。福島民報社が「かなえよう こどもたちの夢プロジェクト」として昨年、県内の小学生から「将来の夢」を募ったところ、医師や看護師、薬剤師、助産師など医療分野への関心を示した子どもが全体の9・8%を占めた。

 弊社は福島医大の協力を得て、医師の夢を寄せた小学生に同大で胸腔鏡手術シミュレーターの操作などを体験してもらった。児童は医師になる決意を固めたという。

 子どもたちの夢は福島の財産だ。夢のままにしておくのは惜しい。さまざまな形で医療現場体験の場を設け、実現への環境を整えなければならない。   (佐藤 研一)

福島民報社