患者塾:医療の疑問にやさしく答える 「おひとりさま」が病気になったら/上 /福岡

2018.03.02

患者塾:医療の疑問にやさしく答える 「おひとりさま」が病気になったら/上 /福岡
2018.02.27 毎日新聞
 
■今回のテーマ 「おひとりさま」が病気になったら

 第218回患者塾が1月27日、福岡県水巻町の遠賀中間医師会館で開かれた。「『おひとりさま』が病気になったら」をテーマに、入院時の保証人や退院後の自宅療養などについて医師や弁護士らがアドバイスした。【まとめ・長谷川容子】

 ◆福岡県鞍手町の男性(75)

 「入院するには家族が保証人にならないといけない」と聞きました。独り者は無理ですか。あらかじめ準備できることはありますか。

 ◇各地の社協に尋ねて

 矢田さん 病院は、治療しなければいけない患者を放り出すことはしません。とりあえず入院してもらい、手術など承諾書が必要な状況になったら、本人から聞いた親族に連絡をとります。天涯孤独の方の場合は、行政に相談します。支払いが難しければ、生活保護の申請など病院の地域連携室や事務の担当者が手続きをします。

 松村さん 診療に従事する医師は、正当事由がなければ診療の求めを拒んではならないと医師法で定められています。そして厚生省(当時)の通達によれば、保証人がいないことは正当事由に該当しない可能性が大です。ただ、病院としては、入院治療の報酬・費用の支払いが遅滞するのは困るので、患者さんの支援者を求めようとするのも理解できます。各地の社会福祉協議会の中には、預貯金の払い戻しの代行、その他の日常的な金銭管理に関する事業や、預託を受けた金銭の範囲内で保証人となる事業を行っているところもあるので、お尋ねになると良いと思います。

 ◆鹿児島市の女性(72)

 卵巣がんが見つかり、早期ではないと言われました。手術や抗がん剤治療を受けますが退院後、自宅療養は可能ですか。身寄りがなく、葬式も心配です。

 ◇使える社会資源の活用を

 山内さん まず病院の地域連携室に相談してください。使える社会資源を紹介します。社会資源とは、公的制度でいうと高額療養費制度、医療費の助成に関する制度、後見人制度などです。病を患ったため生活が変わらざるをえない時には、身体障害者手帳の交付など受けられるサービスに結びつけます。

 桐田さん 家族がいなくても、介護保険と医療保険をうまく利用すれば在宅療養は可能だと思います。訪問看護の看護師は主治医の指示で点滴や痛みのコントロールをします。末期がんなど症状の重い場合は、医療保険も使って毎日3回まで、深夜も看護師の訪問が可能です。24時間対応の緊急連絡体制もあり、主治医も訪問診療で往診できます。

 下川さん 医師に治療の将来像を聞き、自分の考えを伝えてください。可能ならば積極治療をして元気になろうというのは正しい選択ですが、緩和ケアを主体に考えることが重要な場合もあり得ます。

 安藤さん 1人で病気に耐えるのは大変なことです。近くの地域包括支援センターに相談してください。地域の医師会と連携した訪問看護などを受けることができます。最初は途方に暮れても、訪問看護の人と話すことでだんだん考えもまとまっていくのではないでしょうか。どう身の回りを片付けるか、弁護士や司法書士に相談するのもいいと思います。

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 ◆記者のひと言

 ◇モノは言いよう

 「早期ではないと言われて、この医者とは話したくないと思いました」。今回の患者塾で、がん患者の女性のこんな言葉を小野村先生が紹介した。

 医者は事実を告げただけだろう、わがままだ、と切って捨ててはならない。こういう細部にこそ真実は宿っている。

 これは誰の話か忘れたが、ある若い医者は「あなたはがんです」とにこにこ笑みを浮かべて告知するという。他人の人生の大事を告げることに自己陶酔しているらしい。バカではなかろうか。

 モノは言いようである。冒頭の女性はどんな口調と表情で告知されたのだろうか。一方、モノは聞きよう、でもある。礼を尽くした患者と医者のコミュニケーションは、薬と同様、いやそれ以上に病気に効くはずだ。【山下誠吾】

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 ◇出席された皆さん

 平田敬治さん=産業医大第1外科教授(北九州市)▽伊藤重彦さん=北九州市立八幡病院副院長(外科)▽矢田親一朗さん=遠賀中間医師会おんが病院院長(福岡県遠賀町、消化器内科)▽辛島則子さん=同地域医療連携室課長(看護師、ケアマネジャー)▽山内絵美子さん=同地域医療連携室(社会福祉士)▽下川浩さん=真田産婦人科麻酔科クリニック医師(福岡市、産婦人科)▽安藤由起子さん=安藤ゆきこレディースクリニック院長(北九州市、産科・婦人科)▽津田文史朗さん=遠賀中間医師会会長(水巻町、小児科・アレルギー科)▽桐田可奈会さん=同医師会訪問看護ステーション管理者(水巻町)▽松村龍彦さん=安原・松村・安孫子法律事務所弁護士(福岡市)▽戸高正郁さん=小宮山王斎場社長(北九州市)

 ▼司会 小野村健太郎さん=北九州市立大大学院特任教授、おのむら医院院長(福岡県芦屋町、内科)