〔「国民健康保険」「介護保険」〕これは許せん! "大改悪"が家計を破壊する!

2018.01.22

  
  
〔「国民健康保険」「介護保険」〕これは許せん! “大改悪”が家計を破壊する!
2018.01.28 サンデー毎日


 2018年は「惑星直列の年」と呼ばれる。惑星が一列に並ぶように、社会保障の制度改正が重なるためだ。医療や介護などの「負担増」「給付減」の波が、ますます家計を圧迫する。安心して医療や介護を受けるために何を知り、備えておくべきなのか。


「2018年は、2年に1度の診療報酬と3年に1度の介護報酬の“ダブル改定”が実施されるほか、4月からは地域の医療機関の病床再編が本格化する『地域医療構想』がスタートします。同じく4月からは国民健康保険(国保)の財政運営が市町村から都道府県に移管されるなど、重要な改革が目白押しです。これだけ大規模な制度改正が一斉に行われるのは珍しく、私たちの暮らしや家計に大きな影響を与えます」

 そう話すのは、三原岳・ニッセイ基礎研究所准主任研究員だ。

 これらの改革は、団塊の世代のすべてが75歳以上の後期高齢者になる25年に向け、膨らみ続ける社会保障費を抑制するために行われる改正だ。何がどう変わるのかみていこう。


 ◇国保の都道府県化で保険料がさらに高騰


「家賃5万円を払い、子どもに食べさせるお米や野菜を買えば手元に残るお金はほとんどありません。これ以上何を削ればいいのか……。とても保険料に回せるお金はありません」(東京都足立区・38歳自営業女性)

「勤めを辞めて会社の健康保険から国保に移ったら、1カ月に3万円もの保険料になり、高いことにビックリした」(横浜市・66歳男性)

 定年退職した人や自営業者らが加入する市町村の国保は、年々保険料(税※)が高騰し、「高すぎて払えない」との悲鳴が上がっている。

 たとえば、所得が年250万円の3人家族(30歳代の夫婦と子ども1人)の場合、国保料は東京23区で35万2800円、大阪市34万7100円、福岡市35万2100円など、所得の1割を大きく上回っている。1カ月の給与が吹き飛んでしまうほどの高負担は限界だろう。

 高騰を招いている要因は、加入世帯の低所得化と国の予算削減だ。国民健康保険制度に詳しい立教大コミュニティ福祉学部の芝田英昭教授はこう話す。

「かつての国保加入者は、農林水産業や自営業者が多かったのですが、現在は年金生活などの無職者や非正規雇用者が約8割となり、所得なし世帯が約3割、所得100万円未満の世帯が半分を占めています。所得に占める1人あたりの保険料負担は会社員らが加入する組合健保の約2倍で、最も所得の低い層が最も重い負担を強いられている状況です」

 被用者保険の保険料は会社と折半なので自己負担は半分で済むが、国保は全額自己負担だ。また、給与によって保険料が決められている被用者保険は扶養家族が何人いても保険料は同じだが、国保は家族が多いほど保険料が比例して高くなる、という構造的問題もある。

「加えて、1984年には約45%だった国庫補助が、2015年度には20・3%にまで削減され、その結果、高すぎる保険料を払えなくなる人が続出しているのです」(芝田教授)

 16年度の滞納世帯は312・5万世帯と全加入世帯(1968万世帯)の約16%が滞納しているのだ。

 財政難にあえぐ自治体は、未納者や滞納者を「差し押さえ」などの処分で締め上げる。国保料を払えずに差し押さえられた世帯数は、06年の9・5万件から29・8万件とこの10年で3倍にも増えている。

 こうした赤字財政の国保を立て直すため、今年4月から、国保は市町村と都道府県の共同運営に変わる。1961年の制度開始以来の大改革だ。

 都道府県化して規模を大きくすれば財政基盤が安定し、移管に伴い国から財政支援(2018年度約1700億円)も受けることができる、というのが国の説明だ。保険料の払い方は変わるのだろうか。

「新制度になっても、国保料の額を決め、住民から保険料を徴収するのは引き続き市町村の仕事です」(芝田教授)

 では都道府県はどのような仕事をするのか。

「これまでは、市町村が医療費の推計や保険料の決定、徴収を行っていましたが、今後は、都道府県が医療医の推計を行い、市町村に『納付金』を割り当てます」(同)

 次のような流れになる。


(1)都道府県が市町村に対して「納付金」の金額を提示する

(2)「納付金」の提示を受け、市町村は「納付金」がまかなえる保険料率を決める

(3)加入者から保険料を徴収する

(4)市町村は、都道府県に「納付金」を納める


「納付金は100%完納が義務づけられ、減額は認められません。そうなると市町村は住民から集める国保料の徴収を強化するしかありません。納付金とあわせて、都道府県は各市町村の『標準保険料率』も公表することになっていて、この標準保険料率を参考に市区町村が実際の保険料を決めるのです」(同)

 標準保険料率はあくまで“参考”であって市町村は従う義務はない、とされている。しかし、芝田教授はこう話す。

「建前はそうなのですが、県から提示された“あるべき保険料”の提示が、市町村への圧力となって働きます」

 さらに保険料アップに影響を及ぼすのが、保険料を抑制するために、一般会計から国保会計に投入している「法定外繰入金」だ。

「政府・厚労省は繰り入れを『計画的に解消していくべきだ』という方針で、その“指導役”の役割を都道府県に果たさせようとしているのです」(同)

 税金の補てんがなくなれば急激な保険料上昇を招いてしまう。

 今でも多くの市町村は、国保料の収納率を上げるために正規の保険証を取り上げたり、預金や財産を差し押さえするなど強権的な手法をとっている。具合が悪くても病院を受診できず、治療が手遅れになって命を落とすケースも相次いでいる。

「国保が抱える構造的問題を放置したまま、市町村に徴収強化を促すような都道府県化を導入すれば、加入者はますます貧困に追い込まれ、医療を受けられない人たちも増えるでしょう」(同)

 市町村でバラバラの保険料を統一すべきかどうかは、都道府県によって対応が分かれている。現状通り、財源不足分を一般会計から補てんし続ける予定の自治体もある。自分が住む自治体の保険料がどうなるのか、注視していきたい。


 ◇病床削減で医療難民が出る!?


 国保の都道府県化に限らず、今後はあらゆる医療行政において「都道府県の役割」が強まっていく、と先の三原さんは言う。

「一律の財源対策が難しくなってきた国は、病床を削減したり、保険料上昇を抑えるために都道府県の役割と責任を強化しようとしています。都道府県によって異なる診療報酬(医療の公定価格)が導入される可能性もあります。後で振り返ると18年は医療行政の都道府県化が進んだ元年と言われるかもしれません」(三原さん)

 昨年末までに、47都道府県は、医療提供体制の将来像(ビジョン)を示す「地域医療構想」を策定した。それによると、現状約127万4500床の全国の病院のベッド(病床)数は25年に約119万床に減る見通しだ。

 特に、重い病気で入院している患者向けの「急性期病床」が削減される。

「急性期病床は病院にとって採算性の高い部門なので、政府はこれが医療費増大の原因とみて、減らそうとしているのです。急性期病棟には現在、患者7人に対して看護師1人が配置されていて、最も報酬が高いのですが、政府はこの算定方法を見直して報酬を引き下げ、再編を促そうとしているのです」(全国保険医団体連合会の寺尾正之さん)

 介護施設や在宅介護ができる態勢が整っていなければ、病院から追い出されて行き場をなくす“医療難民”や“介護難民”が出かねない。

「在宅に戻されても、生活援助の利用が制限されるなど介護保険サービスも十分に使えなくなっている現状です。途切れない医療介護体制を国の責任でつくるべきです」(寺尾さん)

 一方、前出のニッセイ基礎研究所の三原さんは、こう話す。

「地域医療構想は病床削減目標だけでなく、地域の医療提供体制と、その理念を描くことを求められています。都道府県が発表した地域医療構想を子細にみていくと、地域特性を生かした独自の医療体制を構築しようとしている自治体も見受けられます」

 つまり、都道府県の“やる気”“意欲”によって、医療体制の格差が広がる可能性が出てくるということだ。

「高齢者が増えていくなか、『治す医療』だけでなく『生活を支える医療』の重要性が増していきます。住民もいきなり大病院に行くのではなく、身近に相談できる医師を探したり、そうした医師の情報を提供している医療機関や自治体の情報を収集したりして、自ら能動的に考え動いていくことが大事になります」(同)


 ◇介護保険からの「自立」「卒業」という非道


「年金から高い保険料を天引きされながら、いざ介護サービスが必要になると、『要支援の人の調理や掃除はヘルパーじゃなくボランティアにやってもらえ』なんておかしいですよ」

 要支援2で週1回の訪問介護サービスを利用している75歳の男性は憤る。

 膨張する介護給付費に歯止めをかけるために、サービスを使いにくくしたり、利用者負担を重くする施策がここ数年、次から次へと繰り出されてきた。

 (1)要支援1、2のホームヘルプ(訪問介護)、デイサービス(通所介護)は保険からはずされ市町村の事業に(2)特別養護老人ホームへの入居は原則要介護3以上の人に(3)所得にかかわらず1割だった自己負担は一定所得以上の人は2割に(4)非課税世帯でも預貯金が一定額あれば、介護保険施設の食費や部屋代の補助(補足給付)は打ち切り――。

 そして今、盛んに言われているのが介護保険利用者の「自立支援」だ。介護保険サービスの利用が必要なくなった状態を「自立」と呼び、介護保険から「卒業」させる動きが全国の自治体で広がっている。

 身体機能を高めて要介護度を改善した市町村には、財政的に優遇する「インセンティブ」(動機づけ)の制度が改正介護保険法に盛り込まれた。

「ヨボヨボになっているのにリハビリを一生懸命やって自立しよう、なんてハッパをかけられるのは拷問に近い」と76歳男性(要介護1)は憤る。

 リハビリなどを行った高齢者が「元気」になることは喜ばしいことに違いないし、多くの人の要介護度が下がれば介護給付費も抑えられて一石二鳥ともいえるが、「大きな危険性をはらんでいる」と前出・三原さんは指摘する。

「すべての高齢者が、リハビリなどによって要介護度を下げられたり、介護保険を卒業できるわけではありません。そもそも介護保険制度は、高齢者のニーズに応じて自らサービスを選択し、その人らしく暮らすことを支援する、という理念だったはずです。次々行われる見直しをみていると、利用者の選択権を奪い、行政が使うサービスを決めていた介護保険導入前の『措置』制度に戻りつつある気がします」

 ヘルパーが料理や掃除などを手助けする「生活援助」についても、使いすぎないように利用を制限する仕組みが今年10月から始まる。生活援助を行うヘルパーの資格を短い研修でも可とする基準緩和が4月の介護報酬改定で盛り込まれた。いずれも“軽度者”を介護保険から切り捨てる意図が透けてみえる。

「介護保険は保険である以上、保険料を払った人には反対給付を伴う必要があります。要支援や要介護状態の人に介護サービスの利用を制限したり取り上げたりするのは、約束違反であるし、詐欺のようなものです。国保も同じですが、財源が厳しいとか、保険料を払える、払えないとは関係なく受給権を保障するのが社会保障です」(芝田教授)

 健康で文化的な最低限度の生活を営む権利「生存権」が脅かされつつあることに私たちはもっと声を上げていかなければいけない。