解説・主張 SHIZUOKA=赴任者に支度金 御前崎総合病院、運用へ-医師確保 地道な姿勢で(武田愛一郎/御前崎支局)

2017.12.18

解説・主張 SHIZUOKA=赴任者に支度金 御前崎総合病院、運用へ-医師確保 地道な姿勢で(武田愛一郎/御前崎支局)
2017.12.15 静岡新聞


 御前崎市は、市立御前崎総合病院の医師不足解消を目的に、赴任する医師への支度金として最大800万円を無利子で貸与し、連続で4年勤務すれば返済を免除する制度を設ける。県内では沼津市に続き2例目。県外では奏功した例もあれば、医師確保がままならず病院経営を民間に委ねた事例もある。資金面の支援だけでなく、御前崎総合病院やこの地域で働くことにやりがいを感じてもらえるような取り組みも大切だ。

 同病院は、医師不足のため、外来は多くの診療科で非常勤の医師が対応している。泌尿器科は休診中。夜間の救急も受け入れを制限している。医師確保への思いは切実で、開会中の市議会12月定例会で関係条例案が可決されれば、新制度が運用される。具体的には、当初500万円を貸与し、2年勤務すれば返済が免除になる。さらに300万円の貸与が受けられ、引き続き2年勤務すると返済義務がなくなる。

 和歌山県では橋本市民病院が「貸与額200万円、勤務期間3年」で募り、2009年度に1人を採用。現在も勤務している。貸与の対象となる医師は複数いたが、この医師以外に申請は見られなかったという。同病院は「勤務年数の縛りがネック」とみている。

 滋賀県の守山市民病院は「貸与額500万円、勤務3年」が条件で、09年以降、10人の医師が利用した。赴任を希望した後に制度を知り、利用したケースもある。だが、同病院は医師不足が解消できないことや経営難を理由に、17年度末で市直営の運営を終了し、18年度から済生会滋賀県病院に移行する。支度金制度は廃止される。

 支度金制度を導入する価値はあるかもしれないが、“万能薬”ではない。浜松医科大(浜松市東区)地域医療学講座の山岡泰治特任教授は「医療者は病気を治したい、人を健康にしたいという思いが強い。健康づくりに熱心な地域に医療者も興味を持つ」と言う。

 医師を呼び込むだけでなく、住民の健康への関心を高める活動も不可欠。県によると、御前崎市の16年度の特定健診受診率は44・9%で県平均より7・3ポイント高い。一方、男女とも県平均と比べ、がんによる死亡が多かった。地域の状況も踏まえ、病院や行政、地域医療を育む会などの市民が連携し、健康づくりや病気の予防を進める必要がある。地道だが、こうした息の長い取り組み姿勢こそが、医療者確保につながるのではないか。