神栖市の課題・市長選を前に(下) 2病院再編統合

2017.11.09


神栖市の課題・市長選を前に(下) 2病院再編統合
2017.11.08 茨城新聞



■地域医療の再生急務

医師不足などを背景に県内でも広がる病院の再編統合。神栖市では、2次救急を担う市内2病院の再編統合に向けた動きが進行中だ。今年4月、慢性的な医師不足で厳しい経営が続いていた鹿島労災病院(同市土合本町)と神栖済生会病院(同市知手中央)を再編統合する基本構想が決定。8月には両病院を運営する2団体と県、市の4者が2018年度をめどに統合を目指す基本合意書を締結した。長年の懸案だった医師不足を含む市の医療問題。2病院の再編統合を成功させ、地域医療再生の実現が急務となっている。

県内の人口10万人当たりの医師数(14年)は177.7人で全国ワースト2位。神栖市を含む鹿行地域は90.7人で最も少ない。

鹿島労災病院の常勤医師数は09年の40人から13年は10人に大幅減少、16年は14人となり、神栖済生会病院は、09年が10人、13年が16人、16年が20人とわずかに増えたが、深刻な医師不足は続く。病床稼働率は、神栖済生会が44.7%、鹿島労災が15.1%(ともに14年)で、全国平均の74.8%を大幅に下回り、経営状況は逼迫(ひっぱく)していた。医師不足が影響し、神栖市を管轄する鹿島地方事務組合消防本部の救急搬送時間は県平均より10分近く長い50分(14年)で、県内で最も長い。医療関係者は「助かる命も助からない」と嘆く。

2病院の統合案が浮上したのは昨年6月。関係者や有識者でつくる両病院の「今後の在り方検討委員会」が、統合によって経営基盤を強化し、大学などから医師派遣を受けやすい新病院の整備が必要とする報告書を橋本昌前知事に提出した。再編統合に向け発足した協議会は統合後の新病院について、神栖済生会を増築して本院とし鹿島労災跡には、有床診療所を分院として新築する基本構想を決定。18年度をめどに統合し、将来的に医師数50~80人、350床の2次救急病院を目指すとし、統合へ準備が進む。

市は医師確保や運営補助費など医療支援事業費として、08年から16年度までに約29億円を投じてきた。医師確保事業では常勤医56人を確保し、大学寄付講座では11人を確保した。だが、大学への引き揚げなどで医師不足の解消には至らなかった。研修先を選択できる「新医師臨床研修制度」による影響など医師の定着が課題となった。県内の医師や医学部生は「充実した研修ができる環境が重要」「(子どもの)教育や交通環境の改善が必要」などと指摘する。地域医療再生に向け、医師が勤務したい新病院の構築や、修学支援なども含む定着策の強化、住環境整備などが求められる。(この連載は鹿嶋支社・関口沙弥加が担当しました)